二次創作小説(紙ほか)

Act5:貴方の為に ( No.380 )
日時: 2016/09/22 14:22
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

「……私は、いつも空回りしてばかりで——皆さんに迷惑ばかりかけて——そのくせ、弱くて——もう、私じゃ——どうにもならないんじゃないんですか」

 顔を伏せたホタルは、か細い声で言った。
 ——そうか、ホタル。アルゴリズムの時のこと、まだ気にして——しかも、今回の敗北。相当、キてたんだろうな——ハーシェルの力が無かったら、あいつは今頃病院行きだった——
 ノゾムは思案する。しかし、それが逃げて良い理由になるのかはまた別問題だ。だが——彼女は昨日、ドラドルインに完膚なきまでに叩きのめされている。気が進まないのも分からなくはなかった。
 しかし——彼女でなければドラドルインは倒せない。

「……オレだって反対だ。今のホタルに、ドラドルインの相手は荷が重すぎる」
「それじゃあ勝負しよう」

 にっ、と笑ってみせながらノゾムに割り込む形で、ノアが言った。
 一瞬戸惑ったような表情を浮かべたホタルだったが——

「なーに、何も賭けない普通の勝負だよ」
「しょ、勝負って」
「勿論」

 ベルトからデッキを取り出すと——ノアは言った。



「——デュエルに決まってるじゃん」



 ***



「——レン、どう思う」
「ドラドルインも長く放置は出来ない以上、彼女に発破をかけにきたと思っていいだろう。奴は、彼女にしか倒せんだろうしな」
「どうなんでしょうね、コレ。あんたの後輩結構スパルタだったのね」
「妙な言い方はやめてくれ……負けたからって討伐に出てくれってわけでもなさそうだしよ……」
「どっちにしたってアメリカ代表チームの1人と、先んじて勝負することになってしまいましたよ」

 外野で見守っている4人は、いきなり始まってしまった勝負に息を呑む。
 本番で彼女が使うデッキがどうかは分からないが、勝負を仕掛けた以上はデッキを此処で晒してしまっても構わないと彼女は判断したのだろう。
 序盤、今回ハーシェルが居ないホタルは、別のデッキを使っているらしいのは分かった。
 《アクロアイト》や《ララァ》を使って後続のクリーチャーのコストを下げていく。
 しかし、対するノアも《オリオティス》が場に出なかったのを好機と見て《ギャロウズ》のコスト軽減に成功する。見せられたのは《超復讐 ギャロウィン》。厄介なカードであることには変わりない。

「私のターン。場には《ギャロウィン》と《ブラッドレイン》の2体——シンパシーと《ブラッドレイン》の効果で合計3コストを軽減し、4マナをタップ!」

 早速、4枚のマナがタップされた。
 それも、コスト軽減されていると思われる。
 そして——冥府の番犬が姿を現したのだった。

「特別大サービス!! 私の切札、特と見せちゃうよ!!」
「切札——!?」

 自信満々にノアが繰り出したのは——



「——開け冥府への道、あの世の秩序を乱す咎人を裁け——《殲獄の三途星 ヘル・ケルス》!!」



 次の瞬間、その場は異様な空間に包まれた。
 空気が歪み、ゆらゆらと陽炎のように場が揺らいでいる。
 ヒナタ達の姿が見えなくなった辺り——決闘空間に巻き込まれたというべきか。
 今まで試合をしていたテーブルは無くなり、まさに決闘空間そのものと言いたいところだが——自然と、その時の張りつめたような感覚が無い。
 突如、虚空から灰色のグレイハウンドが姿を現した。
 その口からは青い炎が漏れており、冥府の獣であることを意味していた。

「あっはは、安心してよ。これは決闘空間、みたいなものって感じ。負けたからってダメージ受けたりとかは無いから。ただ、この子の力——しっかり目の当たりにしてもらわないと」
「っ聞いてませんよ、星のカードを使うなんて」
「まだだよー? この子の効果で、超次元ゾーンからT(ティタン)・コアを持つステラアームド・クリーチャーの《復讐武装 ブラックジード》をバトルゾーンへ!」

 次の瞬間に仮面を被り、鎌を掲げた悪魔が現れる。
 その鎌には血がこびり付いており、凄惨な復讐の化身であることが分かった。

「その効果で、貴方の手札を1枚選び、棄てさせるよ! その手札を選んで捨ててね!」
「っ……まずい、《サザン・ルネッサンス》が」

 今回のホタルのデッキは、《サザン・ルネッサンス》を軸にした白単ルネッサンス。小型の光クリーチャーを並べて《サザン・ルネッサンス》をシンパシーで出し、手札のアドバンテージを得ていくデッキだが——キーカードを落とされたのはかなり痛い。

「そのまま、燃え滾る復讐の侵略、いっくよー!! 《ギャロウズ》で攻撃!」
 
 ガアアアア、と唸り声をあげて復讐の化身が吠えた。
 そして、ノアの手札から侵略が発動する。
 《ギャロウズ》の身体が黒い炎に焼き尽くされ——そこから新たなる侵略の化身が姿を現した。
 
「復讐の炎、燃えて、滾って、そして焼き尽くしちゃって——《超復讐 ギャロウィン》、Sally go!!」

 無数のダガーを従えた侵略者が姿を現した。
 そして次の瞬間——《ブラックジード》が吠えた。

「……そして、私の闇のクリーチャーが進化したとき、《ブラックジード》の武装条件達成!!」
「えっ!? も、もうですか!?」

 次の瞬間、《ブラックジード》の身体が黒い炎となって燃え滾る。
 そして——《ケルス》へ憑依するようにふわり、と覆った。
 
「煉獄の復讐者よ、今こそ冥府より侵略せよ——星芒武装!!」

 ガオオオオオン、と《ケルス》の咆哮が響き渡った。
 そして、その体からチューブのようなものが生えていき、その先端に犬のような顔が現れる。
 彼女の顔面には、スコープのようなレンズが取り付けられ、更に炎が脚から燃え滾った。
 それは、地獄から現れし復讐の化身。
 与えられし彼女の星座は——ケルベロス。冥府の主に忠実な地獄の門番——



「——燃え滾れ、《煉獄復讐ケルベロス XANTHUS(ザンザス)》!!」