二次創作小説(紙ほか)
- Act5:貴方の為に ( No.384 )
- 日時: 2016/09/23 01:28
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
***
暗い。
そして——冷たい。
凍えるような感触で、彼女は目を覚ました。
「——!!」
目の前には、銀色の世界が広がっている。
そして——目の前には、自分の手を掴む存在があった。
それは靄のようで、姿かたちこそわからないが、何となく人の体は成していた。
「……あ、貴方は何なんですか——!!」
「——お前は1人——お前の味方はいない——」
ずる、ずる、と引きずり込まれていくような感覚を覚えた。
見れば、地面がどんどん沈んでいく。
まるで、底なし沼のように——
「お前には仲間なんか居ない。お前が誰も信用していないからですわ」
「私が——!?」
「誰かを頼ることでしか生きられない人間に、存在価値があるとでも思ってるの? そんな生き方をして、生きているのが嫌にならないのかしら?」
「あ、う——!」
だんだん、ビジョンが明確になってきた。
その表情こそマスクで見えないものの、美しくも苛烈な、鋼鉄の処女——
「——ドラドルイン——!!」
「フフフ……おほほほほほ!! まだわからないのかしら? お前は私、私はお前——お前に心から信頼し得る仲間など、心から信頼してもらえる仲間など、居ないことはこの私の存在が証明しているのですわ!!」
「は、離せ——!! わ、私は——!!」
「おやおやおやぁぁぁーっ? 現界した私に勝てなかった貴方が、1対1でこの私に勝てるとでも? じゃあ聞かせて頂戴な。今の気分は? 本当に私に勝てるとでも、本気で、本気で勝てると思っているわけ? おほほほほほほ!!」
見てみなさいな、とドラドルインはちらり、と振り向いて見せた。
その視線の先には——ヒナタの姿が、レンの姿が、コトハの姿が、そして——ノゾムの姿があった。
「ヒ、ヒナタ先輩、レン先輩、如月先輩、ノゾムさん——!!」
——手を伸ばそうとする。
しかし、掴まれていて、それどころではない。
次の瞬間——朧げになって、その姿は口々に告げていく。
「お前はそんな奴だったんだな」
「醜悪な奴め」
「貴方には失望したわ」
3人の先輩の言葉が、鮮明に、はっきりと自分の心を抉っていく。
そして——トドメは、
「——もう、近付くんじゃねえよ気持ち悪い」
——ノゾムの言葉だった。
そういって、皆消えていく。まるで、自分を見捨てるように——
「言ったでしょう——? お前が勝手に頼って、勝手に利用していたような連中が、お前に心を開いていたと、本気で、本気で思っていらして? 卑しくて、良い子ぶって、自分勝手なお前に幻滅していたのではないのかしら? それも分からなかったなんて——本当にお前は頭の中が幸せなのねぇぇぇぇーっ!! オーッホッホッホッホッホ!!」
「あ、ああ、う——嫌だ、嫌だ——見捨てないで、私は、私は——!!」
ずぶずぶ、と腰まで体が沈んだ。
ドラドルインは、深淵に彼女をどんどん引きずり込んでいく。
「お前は1人で戦うしかない。でも、1人じゃお前は何も出来ない。だから周りの人間を”利用”した。そうでしょ——? そんなお前の末路は——分かってるわよねえ? 沈め沈め、心の闇に——どんな光も、私の前では、お前の前では、闇に帰すのよ——」
ふふ、と微笑んだドラドルインは突き付けるように言い放つ。
「仲間など最初からいなかった。全部、お 前 の 妄 想 だ っ た」
ザクリ
次の瞬間、ドラドルインの胸は無数の光の剣に貫かれていた。
苦しそうに彼女は呻き、ホタルの手を離す。
「な、何で——このビジョンは——」
パリン、と鋭い音を立てて鋼鉄の処女の像は砕け散った。
そして——目の前には、自分の見慣れたクリーチャーの姿があった。
「ミラクルスター——!!」
こくり、と天翼の化身は頷いた。
幾度も自分と共に戦ったクリーチャーだ。
彼に問いかける間もなく、悪寒を感じる。
振り向けば、そこにはドラドルインが何機も現れ、こちらへ迫ってきていた——が、途端にその動きはピタリ、と止まる。
見れば——そこには、幾つもの刃を携えた輪刀を掲げる騎士の精霊龍が彼女らをひきつけていた。
そして、一瞬で多数の軍勢に切りかかり、そして——薙ぎ倒してしまった。
「ヴァルハラナイツ——!!」
しかし、更に現れる軍勢——止め止めとなく、ドラドルイン達は襲い掛かる。
が、今度は時が止まった。ぴたり、とミラクルスター、そしてヴァルハラナイツを含む全てが、ホタル以外のすべての時間が止まった。
頭上から現れたのは——
「ミラダンテ——!」
いや、それだけではない。《オリオティス》に《ララァ》、《レッドローズ》に《コマンデュオ》、《コッコルア》、《ヴァールハイト》、《カチャルディ》、《ウルフェウス》、《エバーローズ》、《レオザワルド》、《エバーラスト》——まだまだ光の大群が、現れる。
それを見た途端——ホタルは言葉を失った。
同時に、思い出す。
どんな時も、共に戦ってくれた自分のクリーチャー達——
「……そうですよね。私が1人だけで戦えるわけ、なかったんです」
ふっ、と彼女は息を漏らす。
沈んでいく身体が、止まった。
「……貴方達とずっと戦っていたのに、今更私1人で、なんて傲慢が過ぎますよね」
涙が零れる。
今使っているデッキ、以前使っていたデッキ——こんなにも沢山のカード達に自分は支えられていたのか、と。
「だとしたら、今更利用する、だとかそんなこと、馬鹿らしい悩みでした——今日にいたるまで、カードだけじゃない、多くの人にも支えられてきたのに——こんなところで、私が勝手に折れたら、その人達の思いも、この子達の思いも、全部、全部無駄になってしまう——そんな”自分勝手”なことをしたら、今度こそ私は私のことが許せなくなる——!!」
立ち上がる。
そして——目の前を見据えた。
突如現れた純白の後ろ姿——それを見て、つぶやいた。
「——ハーシェル」
***
——そこで、思考は途切れた。
はっ、と辺りを見回す。
見れば——《XANTHUS》が最後のシールドを破って、3つ目の首——すなわち、彼女の本来の首で今にもホタルを食い破ろうとしていたその時。
「革命0トリガー、発動——《革命の防壁》!!」
「革命、0トリガー——!?」
彼女が突き付けたのは、最終防衛ライン。
山札の上を捲る。そこから現れたのは——《聖霊龍王 ミラクルスター》だ。
「よし、第一タスククリア! これで、シールドを1枚追加します!」
「ッ……フフ、燃えてきたわ!! 滾ってきたわ!! それがjapanの最終兵器、革命0トリガーね!! だけど、どのみち貴方のシールドはゼロよ!」
パリン、と最後のシールドが割られた。
しかし——
「このデッキ、白単サザン・ルネッサンスという形の体裁こそとっていますが——なぜ、《ララァ》をあんなに入れていたか、貴方は分かりますか?」
「っ? そんなの、《サザン》を早出し——ッま、まさか!!」
「ええ——やっぱり私はどうも、悪運と、そして仲間たちにだけは恵まれているようです!!」
それは光となって収束する。
そして——新たなる光の革命を生み出した。
「そして、私は何が何でも仲間たちと共に、どんな戦いも勝ち抜く——私は1人だけじゃ何もできない、だけど誰かと一緒なら——どんな大きい困難も乗り越えられる——そう、決意したんです! それが、私の絶対にブレない軸です!!」
龍の印が刻まれた。彼女の思いは、光の龍となって現れ出でる。
「S・トリガー発動、呪文・《ドラゴンズ・サイン》!! 効果で出すのは——《革命聖龍 ウルトラスター》!!」