二次創作小説(紙ほか)

Act7:武装・天命の騎士 ( No.390 )
日時: 2016/09/29 07:02
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

 場は一瞬、大きな光に包まれた。
 そして——そこには、猛々しい角を携えた、雄大な一角獣の姿があったのである。
 白金の鎧に身を包み、純白の毛皮は触れることすら躊躇するほど美しい。
 周囲には2体の衛星が浮かんでおり、常に彼を守っている。

「……ハーシェル」

 自分の知っている彼よりも、今目の前にいる彼はとても大きく成長していた。
 黄金の鬣を靡かせ、一息つくといつもの口調で彼は呟く。

『やっと、この姿に戻れたか……長かったのう、随分と』

 しかし、そこに何処かあった幼さはもう無い。
 老練とした、頼もしい一角馬がそこにあった。思わず、見惚れてしまう。
 これが、純潔を司る聖なる獣の真の姿だったのだ。
 
「いきますよ。《ハーシェル・シュヴァリエ》の効果で、超次元ゾーンからU・コアを持つクリーチャーを1体、バトルゾーンへ!」

 超次元の門が開いた。
 そして、そこから聖なる乙女が姿を現す。
 白き翼を連ね、銀色のランスを握る戦乙女だ。

「出てきなさい、ステラアームド・クリーチャー、《聖印の翼 アーク・ルミエル》!!」
「っ……だけど、《ハーシェル・ブランデ》の効果で破壊ですわ!」

 ステラアームドを出したものの、《ハーシェル・ブランデ》には、相手がコストを支払わずにクリーチャーをバトルゾーンに出したとき、そのクリーチャーを破壊するという効果が付いている。
 すぐさまそれを見過ごさず、突貫するが——

「《ルミエル》の効果発動です!」

 次の瞬間、《ルミエル》はその姿を晦ませ、《ハーシェル・ブランデ》の一突きを避けきる。
 そして、ホタルは自身のシールドを1枚選んで、手札に加えた。

「こ、これは——!?」
「《ルミエル》は、エスケープ持ちのクリーチャー。破壊される代わりにシールドを1枚、手札に加えます!」
「ッ……小癪な!!」
「ターンエンドです」

 淡々、と彼女はターンの終了を宣言する。
 エスケープ。即ち、それは破壊されるとき、代わりに自分のシールドを手札に加えるという能力だ。
 しかし、いきり立ってドラドルインは叫ぶ。
 
「それがどうしたというんですの!? 私はすでに、武装の条件が整っていてよ!!」

 次の瞬間。ドラドルインの門がガバァッ、と音を立てて開いた。
 そこへ、《ハーシェル・ブランデ》が飛び込み——重い音を立てて、閉じた。

『これで……これで終わりにしてやる……!! ターンの始めに場に、光と闇のカードが5体以上あるとき——この私は星芒武装する!!』

 女体像が崩れ落ち、門は鎧となり、腕が生え、巨大な甲冑が現れる。そして暗黒の騎士としての姿を象っていく——それは、破滅の騎士の光臨を意味していた。



「《串刺しの騎士(レイニーズデイ) ハーシェル・ディストーション》、武装完了!!」



 現れた最悪の根源にして、血の化身は大きく吠えた。
 血みどろのランスを掲げ、自らのシールドを薙ぎ払い、《ハーシェル・ディストーション》と化したドラドルインはその槍に憎悪の力を貯め込んだ。

「《ハーシェル・ディストーション》の武装時効果により、我がシールドを全て墓地に置き——その中のクリーチャーを回収!!」

 回収されたのは——《クイーン・アルカディアス》と《強欲ジェラシー・キャン》だ。
 そして、その数だけ憎悪の槍がホタルのクリーチャーを襲う。

「ッでも、U・コアを持つクリーチャーは《ルミエル》の効果でクリーチャー効果では選ばれませんよ!」
「ならば《ハーシェル・ディストーション》の効果で、《モーギュ》と《ティグヌス》を破壊!!」

 その槍によって、惨殺されていくクリーチャー達。ぐっ、と吐き気をこらえた。
 ——ごめん、《ティグヌス》、《モーギュ》……!!
 しかし惨劇はこれだけでは終わらない。

「《テレジア》の効果で、手札から《ジェラシー・キャン》を召喚! 更に6マナで《クイーン・アルカディアス》に進化——!!」

 これで、多色以外の呪文も封じられる。

「そして、《ディストーション》の効果で、すべてのクリーチャーの攻撃制限は解除され、召喚酔いも解除される!!」

 殺戮体制。
 これに尽きた。
 今、ドラドルインの場には《ハーシェル・ディストーション》と《テレジア》、《ジャンヌ・ダルク》、《パーフェクト・マドンナ》、《クイーン・アルカディアス》の5体が居る。
 対するホタルの場には、《ハーシェル・シュヴァリエ》と《ルミエル》、《ララァ》が居るものの——大打撃を受けるのは間違いないし、ホタルのシールドは残り4枚しかない。
 更に、《ディストーション》と《クイーン・アルカディアス》の効果でS・トリガーや革命0トリガーは実質封じられたようなものなのだ。

「《ジャンヌ・ダルク》でシールドを攻撃!!」
「《ハーシェル・シュヴァリエ》でブロック!!」

 《ハーシェル・シュヴァリエ》のパワーは8000。一方的に《ジャンヌ・ダルク》を突き貫き、破壊することに成功する。
 しかし、これで残るブロッカーは《ルミエル》のみになってしまった。

「《ハーシェル・ディストーション》でシールドをT・ブレイク!!」
「《ルミエル》でブロックします! エスケープで破壊を回避!!」

 突貫する暗黒騎士だったが、再び姿を消した《ルミエル》は槍を回避しつつ彼を翻弄し、その突貫を封じてしまった。
 が——もう、残るブロッカーはもういない。
 《クイーン・アルカディアス》と《パーフェクト・マドンナ》、《テレジア》。打点は十分に足りていた。

「《クイーン・アルカディアス》で攻撃——は、はははははは!! 消え去るが良い!!」

 エスケープによって減ったため、残り2枚のホタルのシールドを狙い——鎧亜の女王が雷撃を放った——はずだった。

「《ハーシェル・シュヴァリエ》の天命(ヘブン)マナ武装5発動——自分のシールドゾーンからカードが離れたとき、このクリーチャーがタップされており、尚且つマナゾーンにエンジェルかジャスティスが5枚以上あれば——このターンだけ、このクリーチャーのパワーを+4000し、アンタップします!!」
「……なっ!?」

 その攻撃は、通らなかった。
 再び、盾の力を糧にして起き上がった《ハーシェル》が受け止めてしまったからだ。
 更にそれだけではない。パワーを下回っていたはずの《クイーン・アルカディアス》を一方的に突き倒してしまったのである。
 


純白の騎光星 ハーシェル・シュヴァリエ 光文明 (7)
クリーチャー:ユニコーン・コマンド・ドラゴン 7500
U・コア
このクリーチャーがバトルゾーンに出たとき、またはシールドゾーンにカードが置かれたとき、自分の場にステラアームド・クリーチャーが無ければ、超次元ゾーンからU・コアを持つステラアームド・クリーチャーをバトルゾーンに出しても良い。
天命ヘブンマナ武装5—自分のシールドゾーンのカードが離れたとき、マナゾーンにエンジェルかジャスティスが5枚以上あり、このクリーチャーがタップしていれば、このターンこのクリーチャーのパワーを+4000し、アンタップする。
W・ブレイカー
ブロッカー
 


 シールドがシールドゾーンから離れるとき。
 それは、シールドがブレイクされたときと——エスケープなどの効果によって離れる時だ。
 最早、この状態のハーシェルを止めることは出来ない。ドラドルインの有する残る攻撃できるクリーチャーは2体。
 たとえ、《ルミエル》を攻撃してもエスケープで防がれるため——ここはもう、シールドに攻撃を通すしかないのだ。

「《テレジア》でシールドをW・ブレイク!!」
「《ハーシェル・シュヴァリエ》の効果が発動し、アンタップしてパワーを+4000します!」
『ワシの堅牢さを甘く見るなよ!!』

 もう、ドラドルインの攻撃は通らない。
 1体で3体の攻撃を食い止めた《ハーシェル》の堅牢さは、まさに強力の一言だ。

「だが、次のターン——!! 再び攻め込めば——」
「やれるものなら、やってみてください」

 ホタルは言い放つ。

「《ルミエル》の武装条件は、ターンのはじめに私のシールドの枚数が貴方と同じか、少なければ——私のシールドの枚数は1枚、貴方は1枚——これで、武装条件達成です!!」
『さあ、そろそろ行こうかのう!!』



聖印の翼 アーク・ルミエル 光文明 (5)
ステラアームド・クリーチャー:ジャスティス・ウィング 5500
U・コア
相手のクリーチャーの効果によって、自分のU・コアを持つクリーチャーは選ばれない。
相手の光以外の呪文を唱えるコストは1大きくなる。
星芒武装—ターンの初めに自分のシールドが相手と同じか少なければ、このクリーチャーを裏返し、「ハーシェル」とあるクリーチャーの上に重ねる。
ブロッカー



 天空の戦乙女は、光輝くオーブとなって一角獣の体に埋め込まれる。
 その体は、鋭く、そして美しく——白金の鎧を身に纏い、真なる騎士として戦場に降り立った。
 誰よりも自分が嫌いだった。
 だが——自分を嘆くだけでは何も変わらない。
 全ての道を指し示す者として——彼は翼を広げる。

「天に導かれし命よ、今こそ聖なる先導を受け、暗闇を切り裂け——星芒武装!!」

 解き放たれた。
 その真の姿が露わとなる。
 ホタルは——目の前のドラドルインを、いや、自分の片割れを見据え——告げた。
 



「——それは華麗なる旋律、《天命騎龍王ジークパラディン ハーシェル・リダクション》!!」