二次創作小説(紙ほか)

Act2:ギャンブル・パーティー ( No.399 )
日時: 2016/10/02 17:59
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

「——マジかコレ……」

 開口一口、ヒナタの台詞はそれだった。
 学校の視察——かと思って来たら、案内された場所はジンリュウデュエリスト養成学校内のホール。
 そこは、まるで、いやまさにパーティ会場であった。スーツを着た来賓客や、テーブルに盛られた料理の数々。そして、何故かあるダーツやルーレットといったギャンブルの用具。
 何故こうなっているのか、さっぱりわからないまま、アナウンスが聞こえてくる。

『——ご来場の皆さんッッッ!! 今日は我々、ジンリュウ代表の結団パーティに来てくれてありがとうございますッッッ!! サプライズゲストに、我らが対戦相手となる日本代表・鎧龍決闘学院の皆さまをお呼びしましたッッッ!!』

 おおおおお、と会場が盛り上がる。
 マイクを持ったまま、こちらへ歩いてくるのはシルクハットをかぶった少年だ。

「何だ、どうなってんだコレは……」

 呆れたように言うフジに、シルクハットの少年が言う。

「ニーハオ、武闘フジ氏」
「おい、説明しろ。何だコレは?」

 怪訝な顔のフジ。
 用を詳細には説明せず、来てみればこの大盛況っぷりのパーティー会場。
 ヒナタ達はもちろん困惑していたし、何よりも何があったのかさっぱり分からない。
 というわけで説明を求めるのは当然の反応と言えた、が——

「ふふ、驚かせてすまなかったネ……君達は我々マカオ代表の結団パーティーにサプライズで呼ばれていたのだよ」

 ——帰ってきたのは、ある意味予想していた回答であった。

「制服で来い、というのはそういうことだったのか」
「学校の視察に来てほしいってわけじゃなかったんですね」
「じゃないと、こんなもう生徒が帰っているような時間には呼び出すまい」
「いーや、いつもなら我々進学コースのメンツは訓練に励んでいるところだよ……だから遠慮はいらない」

 クックッ、と喉で笑うと、シルクハットの少年は帽子を外し、恭しく頭を下げた。
 そして、ヒナタに向かって歩み寄る。

「おっと失礼。自己紹介が遅れたネ……俺はジンリュウデュエリスト養成学校代表・リーダーの劉 汀洲(リュウ・テイシュウ)だ。よろしく頼むよ」
「テイシュウか……俺は暁ヒナタだ。こっちこそ、よろしく頼む」
「今日は、ホーム戦の対戦相手である君たちを歓迎する意味合いもあるんだ。それに、デュエル・マスターズ発展の地・日本のデュエリスト……我々としても注目してるんだよネ。ゆっくりしていってくれ」

 プログラムの紙を渡されると、ヒナタ達は席に案内される。
 どうやら、日程からすれば今からスクリーンで学校紹介があるらしい。

「そんじゃあ、早速まずは飯でも食いながら、その学校紹介とやらを聞くとするか!!」
「そうっすね、先輩!!」
「……随分とまあ、大掛かりにやりましたね……」
「派手好きなのかもしれんな、あの男」
「……まあ、嫌いじゃないけどね」

 早速料理にがっついているヒナタとノゾムを横目に、この豪勢っぷりにコトハとレン、ホタルの3人は軽く引いていた。
 が、しかし。彼らは気付かなかったのである。
 この時はまだ、テイシュウの思惑に——



「ところで先輩。この、次のプログラムの”レクリエーション”って何なんでしょうか……」



 ***



「——げふー、食った食った……」
「ポルトガル料理とか初めて食いましたよ俺……」
「貴様ら絶対学校紹介微塵も聞いてなかっただろう」

 マカオの料理は、かつての宗主国であるポルトガルと広東省の料理が占めているが、このパーティーではブッフェスタイルのバイキングとなっており、洋食や和食なども散見された。
 
「何か……もう疲れたわ……」
「食べてるだけなのにか?」
「いや、何か雰囲気とか……色々……」

 慣れない空気に酔ってしまったらしいコトハは、既に疲れ切った表情を浮かべていた。
 レンも何かフォローしてやろうかと思ったが、テンションの高いヒナタとノゾムを見ただけで、そんな意欲も失せてしまう。ああ……もうどうでもいいや、と言ったような投げやりな感情だ。



『それでは皆さんッッッ!! いよいよお待ちかね、レクリエーションの時間でございますッッッ!!』



 ざわ……ざわ、と観客がどよめきだした。
 司会の教師の言葉と共に、シルクハットを被った少女が、マイクを持った。
 
「それでは、今回の一大イベント。我がジンリュウ屈指の勝負師リュウ・テイシュウがゲストと”ゲーム”で何かを賭けあってバトルするというものなのでーす! テイシュウ、対戦相手を発表しちゃってくださいねー!」
「クックック……既に誰と戦うかは決めている……」

 芝居がかった彼の振る舞いに、白い目を向けながら「何だそりゃ、誰と何を賭けるってんだ」と言うヒナタであったが——



「——暁ヒナタッッッ!! 俺と”ゲーム”で戦ってもらおう!!」




 えっ、と言う声を出す前に。
 会場は暗転し、スポットライトがヒナタに当たる。
 しばらく沈黙していた彼であるが——マジで? と返した。

「ほら、早よこっちに来るんだ……」
「え、マジで? 俺? 俺なの?」
「はーい、こっちに来てくださいねー!」

 ぐいっ、とシルクハットの少女に腕を掴まれ、無理矢理ステージの上まで連れていかれて、テイシュウと相対することに。

「えーと……これはどういうことだ? 何すりゃ良いんだ?」
「簡単だ。ゲームで僕と勝負をしてもらいたい。ただし、ゲームという物には何か賭ける物が無ければつまらない」
「賭ける物……?」
「ああ」

 笑みを浮かべるテイシュウ。
 白い歯がキラリ、と光に反射した。
 
「要するに、勝ったら相手に言う事を1つ聞いてもらうとか……何か物を渡すとか。先に相手に賭けて貰うものを自分が決めるんだ。まあ、遊びだから明後日の勝負に影響することだとか、貴重な物だとかはナシだがネ」
「へーえ、面白そうじゃねえか。で、そっちは何を賭けるんだよ」
「おっと。”親”である俺から、賭ける物を決めてしまって良いのかい?」
「釣りあいってモンが必要だろ。そっちの賭ける物を聞いてこっちも決めたい」
「フフフ……分かってるよ。さっきも言っただろ? 遊びだと。ワイワイ皆で楽しめるものが良い。明後日の勝負のことは考えず、あくまでも純真な子供のようにレクリエーションにピッタリなものを決めようじゃないか」

 ちらり、と会場の方に目をやると、テイシュウは言い放った。
 再び会場がざわついた。
 一体彼は何を賭けるのか。余興だとあくまでも彼は言っていたが——



「暁ヒナタ——君のチームのメンバーある、如月コトハを賭けて貰おうか!!」