二次創作小説(紙ほか)

Act2:ギャンブル・パーティー ( No.401 )
日時: 2016/10/05 17:18
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

 ステージ上に展開されたホログラム・フィールド。
 これにより、臨場感のあるデュエルが繰り広げられることになった。

「2マナで《アクア少年 ジャバ・キッド》召喚」

 先攻2ターン目で、早くもテイシュウの場に現れたのは水のリキッド・ピープル閃。ノゾムも使っていたのが記憶に新しい。
 一方、会場では既に真っ青になっているコトハが、この馬鹿馬鹿しいようで割と洒落にならない賭けデュエルに突っ込んでいた。

「良いの!? お宅らアレで良いの!? こんな賭けデュエルで!!」
「もっといいモン要求すりゃ良かったのによォ、あいつも」
「そういう問題じゃないわよね!?」
「まあ、如月先輩。彼氏が助けてくれたから良いじゃないですかぁ」
「その彼氏がメイド姿になってるところなんて想像したくも無かったんだけど!?」

 と言い返してる間に、隣のノゾムが腕を振り上げて何か叫んでいる。
 どうせヒナタの応援だろう、と最初は思っていたが——どうやらそうではないようであった。

「此処は空気を読んで負けちゃって下さい、先輩!! あんたにオレと同じ苦しみを味わってもらうためとかそういうわけじゃねえけど!! あんたの所為でしばらくノゾミちゃん呼ばわりが定着したのを恨んでるわけじゃねえけど!!」
「で、ノゾム君は何で向こう側応援してんのよ」
「前に女装させられたことがあったからな……思えばその時もメイドだった」
「は、反省です……ノゾムさん結構根に持つんですね……」
「元凶は俺様だがな、HAHAHA」

 笑い飛ばす銀髪の元凶は後でシメておくとして、このデュエルの行き先がコトハは心配だ。
 どっちが勝っても野郎の女装を見ねばならないので、ある意味何のサービスにもならなさそうな……需要あるのかコレ、と頭の中でぐるぐると考えている。

「その効果で、山札の一番上を捲り、それがリキッド・ピープルならば手札に加える。加えるのは、《侵略者 BJ》! ターンエンドネ」
「俺のターン、ドロー!」

 カードを引くヒナタ。
 そのまま、2枚のマナをタップした。
 見れば、彼のマナゾーンには光のカードが落ちている。どうやら、いつものデッキとは本当に違うらしい。
 
「2マナで《聖鐘の翼 ティグヌス》を召喚! ターンエンドだ!」
「ほほう。では、俺のターン——ドロー」

 カードを引くテイシュウ。
 そして、そのまま3枚のマナをタップした。

「続いてお見せするのは——《侵略者 BJ》! 2マナで召喚だネ!」



侵略者 BJ(ビージェイ) C 水文明 (2)
クリーチャー:リキッド・ピープル閃/侵略者 2000
このクリーチャーが攻撃する時、相手のシールドが2つ以下なら、カードを2枚まで引く。




「出たな、侵略者——!!」
「クックックッ、これではまだ終わらない! 見せてやろう、我がマカオの誇る侵略速攻の力を!」

 続いて彼は、《ジャバ・キッド》に手を掛ける。

「《ジャバ・キッド》で攻撃——するとき、侵略発動ッ!!」

 そして、その頂きに1枚のカードを重ねた。
 それこそが、世界を侵食する略奪の力——侵略。
 進化の鼓動と共に、ヒナタへ殴りかかった《ジャバ・キッド》に鳳の紋章が浮かび上がった。

「侵略って——コマンドだけの特権じゃねぇのか!?」
「馬鹿め!! 侵略は既に、あらゆる種族を侵食しつつあるのだ——進化、《侵略者 バロンスペード》!!」



侵略者 バロンスペード UC 水文明 (4)
進化クリーチャー:リキッド・ピープル閃/侵略者 6000
進化−自分の水のクリーチャー1体の上に置く。
侵略−水の侵略者または水のリキッド・ピープル
W・ブレイカー
このクリーチャーは、コマンドにしかブロックされない。



「グッド! さあ、ゲームの始まりだ! 会場の皆さん、ご覧あれ!! これぞ我がジンリュウデュエリスト養成学校の水の侵略!! この《バロンスペード》は、コマンド以外にはブロックされない!!」
「ッ……!!」

 パリン、と音を立ててヒナタのシールドが叩き割られた。
 余りの速さに、彼がその姿を拝むことが出来たのは、シールドブレイクの直後であった。
 シルクハットに、カードを持ち、杖を得物に掲げた進化リキッド・ピープル閃特有のロボットのような姿。
 その胸には自らの名を体で表しているのか、スペードのマークが刻まれていた。

「ターンエンドだ。光のブロッカーデッキならば、圧倒できるとでも? 速攻すれば問題はないネ」
「へっ、何てこたぁねぇぜ。こっからだ!」

 カードを引いたヒナタは、3枚のマナをタップした。
 確かに、コマンド以外にはブロックされないという《バロンスペード》はかなり厄介なクリーチャーだ。
 しかし。それはあくまでもコマンド以外という話。まだヒナタには勝算があった。
 ——このデッキはタイガー・レジェンド天門!! S・トリガーに《ヘブンズ・ゲート》を仕込めば、エンコマ軍団で返り討ちだ! 

「3マナで《アクア・スーパーエメラル》召喚! その効果で、手札から1枚をシールドに置き、シールドから1枚を回収する——」

 ——ってゲッ……!
 ヒナタは落胆した。思わず表情に出そうになったほどだ。《スーパーエメラル》の効果で回収したのは、《ヘブンズ・ゲート》のシールドだったのである。手札には既に《ヘブンズ・ゲート》を握っていたため、完全に無駄発動になってしまった。
 仕方なく、もう片方の《ヘブンズ・ゲート》をシールドに置き、彼はターンを終える。
 得意げにテイシュウは笑みを浮かべた。

「ほう。牽制かカウンターを狙っているのかは知らないが——守りに入った時点でお前の負けだネ!!」
「何!?」
「俺のターン——ドロー!!」

 カードを引いた彼は——4枚の水のマナをタップする。
 そして——1枚のカードを盤面に叩きつけた。

「《アクア警備員 ラスト》召喚!! コイツの効果で、カードを1枚引く——」
「《アクア警備員 ラスト》だと——!?」

 その名前から想起されるのは、かつてとばっちりでプレミアム殿堂を食らった《アクア・パトロール》だった。
 意外だったのは、その体には革命軍を現す拳のマークがあったことだろうか。

「こいつは革命軍のカードだが——日本からわざわざ取り寄せたんだよ——お前みたいに、守りに入るチキン野郎でも駆逐できるようにネェ——!!」
「何ィ!?」

 思わず、ヒナタはテイシュウを睨むも構わず彼は続けた。まるで自らの持論に酔うかのように。
 だが、それは幾多もの勝負の中で培われた経験であった。

「ギャンブラーというのは、最後こそ天運に賭けるが——必要のない運の要素は求めていない。熱く、そして冷静に”勝負に狂える”最高の舞台——それさえ用意して負けるのならば悔いはない——出来るだけ、運の要素を排除したうえで——天命に賭け、負けるのならば悔いはないんだよネェ!!」

 つまり、勝負に賭けるならば最高の準備をしたうえで、可能ならばできるだけ運の要素を、不利になる要素を排したうえで戦う。
 これが彼の精神だった。
 次の瞬間、ヒナタのシールドの1枚が選択される。

「《ラスト》の効果発動! 相手のシールドを1枚選び、それを山札に加えてシャッフルさせる!!」
「なっ!?」
「当然、選ぶのはさっき《スーパーエメラル》で仕込んだシールドだ!」
「し、しまった——」

 ヒナタのシールドは、同時にこれで2枚。
 《ラスト》の効果で、ターンの終わりにシールドが1枚山札の一番上から戻ってくるが、今この状態では残り2枚であることには変わりない。
 しかも、仕込んだ《ヘブンズ・ゲート》は既に山札の中——

「《侵略者 BJ》で攻撃——するとき、侵略発動!! 進化、2体目の《侵略者 バロンスペード》!!」
「っ……やべぇっ!!」

 この一撃で、ヒナタの残るシールドは全て叩き割られた。《バロンスペード》はコマンド以外にはブロックされないため、ヒナタの場にあるブロッカーでは止めることすらままならない。
 S・トリガーも、革命ゼロトリガーも、何もない。
 そのまま迅速に、そして確実に——侵略者は彼の息の根を止める。



「——《侵略者 バロンスペード》でダイレクトアタック!!」