二次創作小説(紙ほか)

Act3:再燃 ( No.403 )
日時: 2016/10/08 12:22
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

 ——画して次の日である。
 ホテル内の遊技場には、デュエルフィールドもあった。
 そこで、既にカードを展開し、向きあってスパーリングの準備に入っているのは方やヒナタ、方やノゾムだ。
 それを見守るように、レンとコトハ、そしてホタルが試合の開始を待っていた。

「先に対戦するのは、ノゾムか……あたしも、ニャンクスの新しいデッキを早く試したいんだけどなあ」
「仕方あるまい」
「この間、先輩は燻ってたオレの襟元を正してくれた——オレもその恩返しがしたい! 今日は先輩の特訓にとことん付き合いますよ!」
「素晴らしい。昨日、自分の受けた苦しみをこのグラサンにも味わってもらおう、さっさと負けてしまえとか言っていたのが嘘のようだ」
「うわあ、マジかよ」
「そこまで酷くは言ってませんからね!?」

 レンの発言を受けて、取り繕おうとするノゾムだが、当のヒナタはさして気にしていないようであった。あの文化祭での彼の身に起こった悲劇を思えば……である。
 そして、件の元凶は今もへらへらと笑みを浮かべて試合を観戦しようとしていた。
 さて、ヒナタのデッキは恐らく明日の試合でも使う準赤単のドラグハートか赤単のメタビートのどちらか、対するノゾムのデッキはクレセントやドラグハートが超次元に置かれているところを見ても、いつもの水単コントロールだろう。
 今回は互いに全力のスパーリングだ。

「僕が、あの2人の試合を見るのは入学式以来になるな。あの時勝ったのはヒナタだったが——ノゾムも1年にしては、とんでもなく強い」
「そりゃそうよ……入学初日に多くの上級生にまとめて勝負を売って、いずれも圧倒して撃破……入学時点で、プレイング・ビルディング技術は相当高い上にポテンシャルも大きかったわ」
「しかも、デュエルでは互いに、カードの組み合わせを重視する2人——使う文明はまさに正反対ですけど、そういう意味では似ています……!」

 準備が完了したのか、2人はデッキから5枚の手札を引く。

『白陽! あたし達全力で行くよ! まっけないからね!』
『それはこちらも同じだ。私の術で止めてやる』
「行くぜノゾム! 俺らの全力全開だ!」
「はいっ、お願いします!」
 
 そして、2人同時に宣言する。
 この激しい闘いの幕開けを。




「「デュエル、スタート!!」」




 ***




 ——先攻2ターン目。ノゾムは早速、《マイパッド》を召喚していた。一方のヒナタも《トップギア》を召喚して、後続の召喚に繋げる。
 互いに次のターンは、4コストのクリーチャーを召喚できる体制だ。
 しかし。

「3マナで《パクリオ》召喚! その効果で、先輩の手札を見ますよ!」
「っ……やべ」

 展開された4枚の手札の中には、《爆炎シューター マッカラン》、《ネクスト・チャージャー》、《早撃ち人形 マグナム》、《永遠のリュウセイ・カイザー》があった。
 その中から、ノゾムは《マッカラン》を選び、彼のシールドへ封じ込める。

「選ばれたのは《マッカラン》……展開を優先した形だな。ノゾムのデッキは、クリーチャーの踏み倒しを多用するわけではないし、いざという時に邪魔なクリーチャーは軽コストバウンスであしらえば良い。良い判断だ」
「まあ、流石って言ったところかしら」

ノゾム:山札28 手札2 マナ0/3 墓地0 シールド5
ヒナタ:山札27 手札3 マナ0/2 墓地0 シールド6

 回収が難しいシールドへカードを送り込む《パクリオ》は厄介なカードだ。
 今回のヒナタは、若干遅いムーブのデッキであることもノゾムは把握できたため、一気にアドは取れたと言っていいだろう。
 しかし。ヒナタも負けてはいない。こちらも後続に繋げる為に、更なる手段を使ってきたのである。

「俺のターン——んじゃあ、3マナで《ネクスト・チャージャー》だ! 残る手札2枚を山札の下に戻して、カードを2枚ドロー!」
「交換されたか……」
「これで、また俺が何を握ってるかが分かんなくなったな。ターンエンド」

ヒナタ:山札26 手札2 マナ1/4 墓地0 シールド6

 とはいえ、手札の絶対数が増えたわけではないので、このままではジリ貧になりかねないことも分かる。
 ——このまま追い詰めていけば——! 先に火力で焼かれないカードを出して、一気に詰める!

「オレのターン、ドロー!」

 カードを引くノゾム。
 そのまま、4枚のマナをタップした。
 そこから唱えるのは呪文だ。まずは、手札を整えて、こちらもいち早く切札を出さねばならない。
 更にマナもこのままでは心許ない。
 故に彼が選んだ答えは——

「呪文、《ブレイン・チャージャー》! その効果でマナを1枚追加して、1枚ドローして、ターンエンドだ!」

ノゾム:山札26 手札2 マナ1/5 墓地0 シールド5

 堅実な動きであった。
 次のターン、彼のマナは6枚になり、《M・A・S》はもちろん、《マイパッド》の効果で《メタルアベンジャーR》等も出せるようになっている。
 もっとも、今の彼の手札にはコスト7の《メタルアベンジャーR》しかなかったわけであるが。

「ターンエンド!」
「……んじゃ、俺のターンだな」

 カードを引くヒナタ。
 そのまま、溜まった5枚のマナをタップする。

「——《トップギア》でコストを1下げ——《新世界 シューマッハ》召喚!」



新世界(ニューワールド) シューマッハ SR 火文明 (6)
クリーチャー:アウトレイジMAX 6000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、各プレイヤーは自身の手札をすべて捨てる。その後、それぞれカードを5枚まで引いてもよい。
W・ブレイカー



「いっ……!?」
「その効果で互いに手札を捨てて、5枚まで引いてもよい。さあ、どうするノゾム。何枚引く? 俺は5枚引くぜ」
「っ……5枚引きます」

 現れたのは、かつてヒナタと行動を共にしたアウトレイジの1体、《シューマッハ》だ。
 以前は、《クロスファイア》と《5000GT》の召喚補助に使われていたが——

「む、なぜヒナタはこのカードを……?」
「少し意図が読みづらいわね。何を考えてるのかしら」
「単なる手札補充じゃないでしょうか。どっちにしたって、キーカードを貯め込んだ時に手札を全て消される可能性が、ノゾムさんには出てきましたよ」
「水単では、捨てられた手札をすぐにリカバリー出来るわけではない。ドローは質より数、がここで足を引っ張ってくるとはな」

 つまり、考えられることは、今回のヒナタは明らかに長期戦を狙っているということだった。

ヒナタ:山札20 手札5 マナ0/5 墓地2 シールド6
ノゾム:山札21 手札5 マナ1/5 墓地2 シールド5
 
「ターンエンドだ」
「っ……!」

 現にそれは当たりであった。
 次のターンに出そうとしていた《メタルアベンジャーR》が墓地に落とされたのは痛い。
 しかし——同時に、手札にカードを貯められたのも事実。その中から、1つ1つ、勝てる手を選んでいく——
 
「……オレのターン、ドロー! 6マナで《龍覇 メタルアベンジャー》召喚! その効果で《エビデゴラス》をバトルゾーンへ!」
「結局出てくるのな、ドラグハートは……」
「へへん、どんなにやられたって不屈の意志で復活するのがヒーローってもんでしょ! ターンエンド!」

ノゾム:山札20 手札5 マナ0/6 墓地2 シールド5

「んじゃあ、俺のターン——ドロー」

 カードを引いたヒナタは——笑みを浮かべてみせた。
 ノゾムが切札のドラグハート・フォートレスを出してしまったのに対し——彼もまた、切札を出そうとしていたのである。
 
「——お前の場には3体のクリーチャー——そして《トップギア》でコストを1軽減し、合計4コストダウン」

 タップされたのは6枚のうち、4枚のマナ。
 そして——彼は叩きつける。
 あらゆるものを焼き尽くす灼熱の革命を。



「燃え盛れ、灼熱の革命!! 絶望に抗い、反撃せよ——《メガ・マグマ・ドラゴン》!!」