二次創作小説(紙ほか)

Act4:奇天烈の侵略者 ( No.406 )
日時: 2016/10/10 12:47
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

・ノゾム
龍波動空母 エビデゴラス×2
超龍素要塞 エビデシュタイン
真理銃 エビデンス
龍芭扇 ファンパイ
月影機構 ルーン・ツールS
ヴォルグ・サンダー×2

・リンユー
無し



 
 データパネルに映し出された、互いの超次元ゾーンのデータを見ながら、ヒナタは問うた。
 選手の事を色々調べていたのは、やはりホタルで、色々詳しい。

「リンユーって、確か父親が若い頃に名マジシャンとして名を馳せていたんでしたっけ」
「はい。娘はどうやら、デュエマの道に行ったそうですけどね。心理戦とコンボを組み合わせたオーソドックスな水使い……どうなるやら、です。でも、ノゾムさんは絶対に勝ちます!」
「もし相手が侵略ビートならば、革命さえ間に合えば勝ち目はある。そうでなくとも、ノゾムにはドラグハートがある。心配はいらんだろうが……何か引っかかるな」
 
 既に、フィールドでは試合が進行している。
 ホログラムで現れたクリーチャーに目を見張りながら、彼らはゲームの行方を見守るしかない。

「それでは、私のターンですねぇー……」

 先攻3ターン目。
 リンユーとノゾムの場には、《一撃奪取 マイパッド》が出ている。
 彼女は3枚のマナをタップすると、告げた。

「では、3マナで”マジック・コマンド”、《奇天烈 シャッフ》召喚!」
「マジック、コマンド——そいつが、侵略のコマンドクリーチャーか」

 現れたのは、トランプを束ねたディーラーのようなクリーチャーだ。
 その体は、機械でできており、ロボットを思わせる。
 そして、リンユーはにこにこと、微笑むと高らかに宣言する。

「そして、《シャッフ》の登場時効果発動! 世にも奇妙なマジック・コマンドの超魔術をお見せしましょう! 私が指定する数字は——”3”、ターンエンドです!」

リンユー:山札28 手札3 マナ0/3 墓地0

「へっ、何かと思ったら数字を言っただけか? 数字を言うだけなら、赤ん坊でもできるぜ。このまま、一気に手札を増やしてやる!」

 ノゾムのターン。
 そのまま、3枚のマナをタップする。
 
「呪文、3マナで《ストリーミング・シェイパー》! その効果で——」

 と、宣言したところでノゾムは止まった。
 表示されない。
 マナをタップしたところで、呪文が展開されないのだ。
 つまり——この呪文は今、唱えられないということになる。

「ふっふっふ、奇妙奇天烈、《シャッフ》の超魔術! それは、登場時とこのクリーチャーの攻撃時に宣言した数字と同じコストの呪文を相手は唱えられなくするというもの! タネも仕掛けもございません!」
「ざっけんじゃねーぞ、コノヤロー!! それを先に言え、それを!!」

 説明も何もなかったことに憤慨しつつ、彼は考える。この《シャッフ》の能力を。前情報には無かったクリーチャーの1体だ。恐らく、今回初めて実戦投入したのだろうか。
 ——呪文を封じられるのはとてもまずい——! これは結構厳しいかもしれねーな……!
 ここで3マナを使い、何をするかで今後の展開が決まってくると言っても過言ではない。
 此処は——《シャッフ》を、そしてその先にある侵略を封じる意味でも取り敢えずは排除するしかない。

「3マナで、《アクア隠密 アサシングリード》召喚! その効果で、《シャッフ》をバウンスだ!」
「うーん、残念です」
「マジックだの何だの言って、馬鹿にしやがって! ターンエンドだ!」

ノゾム:山札27 手札4 マナ0/3 墓地0

 もやもやが残る中、リンユーにターンが渡る。

「ふっふっふー、でも私のマジックはこれだけでは終わりませんよ! では、お次はこれです! 3マナで、マジック・コマンドの《奇天烈 ベガス》召喚!」

 現れたのは、ルーレットの回転盤を盾のように持ったクリーチャーだ。
 その瞳は欲望に塗れており、機械のような体には鳳の紋章が焼き付けられている。
 紛うことなき、侵略者のクリーチャーであった。

「《ベガス》のマジック発動! さあ、今度はちゃーんと説明してあげますよー、おチビさん。貴方の山札の上のカードを捲り、山札の一番下へ置きます。それがコスト5以上のカードだったならば——私はカードを3枚引ける……スリリングなマジックですねえ」
「このやろ……人の気にしていることをいけしゃあしゃあと……」
「それじゃあ、予知してみせましょう。貴方が次に引くのは——コスト5以上のカードである、と!」

 彼女の挑発に乗っ掛かりそうになるノゾム。
 しかし、同時に思案する。そんな相手任せの確立の絡む能力、そうそう当たってたまるか、という話だ。このデッキならば、確率は2分の1にも満たないはず。
 山札の上を彼女に見せた。

「ほら、どーせ当たるわけが——」
「ふっふっふー、どーでしょうか。お、コスト7、《上弦の玉兎星 クレセント・ニハル》。これが噂に聞いた星のカードですかぁ」
「……何だって!?」

 自分の捲ったカードを見る。
 間違いない。《クレセント》のカードだ。

「どっちにしても、私の予知マジックは大当たりですねぇー。それじゃあ、カードを山札の一番下へ送ってもらいましょうか」
「こ、い、つ……!」
「ついでにおひねりも頂きましょうかねぇー。《ベガス》の効果で3枚ドロー」

 

奇天烈 ベガス R 水文明 (4)
クリーチャー:マジック・コマンド/侵略者 4000
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、相手は自身の山札の上から1枚目を見せ、その後、山札の一番下に置く。そのカードがコスト5以上なら、カードを3枚引く。




 なんにせよ、彼女の言う予知も、マジックも、ものの見事に成功してしまったわけである。
 さっきから、この少女の戯言に振り回されている気がしてならない。

「ターンエンドですよー、さあさあどうしますかぁー? 日本のおチビサムライさん? ねぇー?」

リンユー:山札24 手札6 マナ1/4 墓地0

『ノゾム、ごめん……』
「マジシャンの皮を被ったギャンブラーめ……もしイカサマの1つでもあったら、ジャッジキルだぞコノヤロー……!! 次のターンで挽回だ!!」

 カードを引くノゾム。
 そして、4枚のマナをタップした。

「行くぜ! コスト4、《龍覇 トンプウ》召喚! その効果で、超次元ゾーンから《龍芭扇 ファンパイ》を出して装備だ!」

 ——次のターン、《アドラク》で山札の上を固定して、そっちのマナゾーンにある呪文を奪ってやるぜ! 《ピタゴラス》か《ストリーミング・シェイパー》か……! 《シャッフ》が来ても問題は無いぜ!
 現れたのは、龍脈術を司る軍師。その手には、龍の芭扇が握られており、あらゆる術を操ることが出来る。
 ノゾムの目論見は、次のターンにリンユーのマナにある呪文を手札にある《封魔アドラク》で奪うことだ。《アドラク》の、登場時に互いのマナから1枚を山札の一番上へ置く効果と、《ファンパイ》の装備クリーチャーが攻撃したときに相手の山札を見て、それが呪文ならば踏み倒せるという効果を組み合わせるのである。

「なあ、ノゾムの戦法、最近どんどんえぐくなってねぇか? 相手の呪文を強奪するヒーローっていいのかアレ」
「《強奪者 テラフォーム》って知ってるか? あれのモデルはどっからどう見てもヤッ——」
「いや、そうじゃなくて」

 そんなことを外野で言っている間に、ノゾムは高らかに言い放つ。
 
「こっからが本当の魔術(マジック)だ! イカサマ賭博なんざには負けねえぜ! ターンエンドだ!」

ノゾム:山札26 手札3 マナ0/4 墓地0

「イカサマァ? タネも仕掛けもありませんよぉ。こっちは命綱無しで危険なマジックをやってるようなものなのに、うっうっ、何という言われよう……」
「おい、それもうマジックでもなんでもねぇだろ!!」
「とにかく、ギャンブルもマジックもエンタメに変わりはありません! 人々を沸かせ、熱狂させ、震わせる——ああ、エクスタシー! 最高に興奮すると思いませんかぁー?」

 3枚のマナをタップした彼女は、再び《シャッフ》を召喚する。指定した数字は”5”、バウンスによる除去を封じた形になる。
 しかし、これだけでは終わらないのだ。

「ではいきましょうか——大消失マジック! このターンで、貴方のクリーチャーを全て消して見せましょう!」
「消す? 何言ってんだおめー、そのマナじゃもう全体除去呪文なんざ——」
「ふっふっふー、ここからが本番ですよお。怖くてチビらないでくださいね、”おチビさん”」
「てんめぇ……チビ、チビ、ってさっきから……!」
「おっと失礼。本当のことを言っちゃいましたあ。まあ、気を取り直して《ベガス》で攻撃——」

 嘲笑したリンユーは、そのまま《ベガス》に手を掛ける。刹那。
 遠く遥かから、侵略の風が吹いた——

「するとき、”侵略発動”!」

 侵略。それは、あのコロナも使っていた脅威の踏み倒し能力。
 ノゾムの表情が一気に正気に戻る。
 
「レディースエーン、ジェントルメーン! さあ、世紀の大マジックショー、舞台の主役である彼にご登場願いましょう——《奇天烈 ベガス》進化!」

 彼女の宣言と共に、スポットライトが《ベガス》に当てられた。
 そして、大量のコインが降り注ぎ——あらゆる欲望と狂気を含んだそれが、肥大化し、そして巨大化する。
 観客の熱狂によって、それは更に膨れ上がり——侵略者として顕現した。



「——ショータイム、《超奇天烈 ベガスダラー》!」