二次創作小説(紙ほか)

Act4:奇天烈の侵略者 ( No.407 )
日時: 2016/10/10 00:33
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

「な、何だこいつ——!!」

 フィールドはたちどころに、カジノ街と化し、ネオンで彩られた夜のビルが並ぶ。
 だが、異様なのは、それが次々に変形していくことだった。
 欲望の中枢たる《ベガス》を取り込んだことで、ビルは歪んで巨腕と化し、カジノは盛り上がっていき、やがて頭部となった。
 徐々に、その全貌が明らかになる。
 《超奇天烈 ベガスダラー》は、熱狂と欲望そのものである侵略者だ。カジノの街そのものを取り込み、とうとう顕現したのである。
 その両肩には、鳳のマークがシンボルとして付けられていた。胸には、巨大なルーレットの回転盤が出現する。

「さあびっくりどっきり、世紀の消失マジックの開始です! 貴方の山札の上から1枚を表向きに! さあ、どうぞ!」
「く、またそれか——!」

 山札の上から1枚を捲る。
 そして——ノゾムは戦慄した。今度は《龍覇 M・A・S》。またも、今までノゾムを救ってきた切札だ。
 それが裏目に出るとは——

「ほほーう、今度はコスト6! マジック大成功! フィールドのクリーチャー全てを今から、消してみせましょう!」

 次の瞬間、《ベガスダラー》の回転盤からビームが放たれた。
 それが当たった瞬間、ノゾムの場にあったクリーチャーは全て消し飛ばされる。
 いや、正確に言えば手札に戻されたというべきか。
 だが、一瞬で彼の場を更地に変えたのはさながらマジシャンである。

「や、やべぇ——!! こいつ、本当にオレのクリーチャーを——!! 全部消す、ってオールバウンスってことかよ!! どうなってんだ!!」
「どうなってるかって? それは簡単。この世紀の大魔術師・リンユーがショーの主役を務めているからですよぉー!!」



超奇天烈 ベガスダラー SR 水文明 (7)
進化クリーチャー:マジック・コマンド/侵略者 8000
進化−自分の水のクリーチャー1体の上に置く。
侵略−水のコマンド
W・ブレイカー
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、相手は自身の山札の上から1枚目を見せ、その後山札の一番下に置く。そのカードのコストが5以上なら、バトルゾーンにある相手のクリーチャーをすべて手札に戻す。それ以外なら、カードを2枚引く。



 だが、これだけでは終わらない。
 《ベガスダラー》による、シールドへの攻撃はまだ終わってないのだ。
 そのまま、シールドが2枚、再びビームによって叩き割られる。
 しかし——

「S・トリガー、発動! 《サイバー・I・チョイス》! その効果で、手札から《サーフ・スパイラル》を使用する! その効果で、《ベガスダラー》をバウンスだ! 更にもう1枚、《スパイラル・ゲート》で《シャッフ》をバウンス!」
「うーん、またやられちゃいましたかぁー。残念。でも、大消失マジック、お楽しみいただけたでしょうか?」

 小馬鹿にしたような表情で、リンユーは言った。
 一方、シールド諸共クリーチャーをバウンスされたノゾムの心境は決して気持ちの良いものではなかった。

「ターンエンド!」

リンユー:山札23 手札5 マナ2/5 墓地0

 しかし。
 幾らバウンスされてクリーチャーも居なくなったとはいえ、勝ち目がなくなったわけではない。
 その証拠は、彼の手札にあった。今のオールバウンスが仇になったことを、彼女に思い知らさねばならない。

「オレのターン、ドロー——そして、《アクア隠密 アサシングリード》を召喚! その効果で、《マイパッド》をバウンスするぜ!」
「むぅ、またですかぁ」
「そろそろシールドを削っていくか——《サイバー・I・チョイス》で攻撃!」

 電脳の化身が、リンユーのシールドを打ち破る。
 これにより、彼女のシールドは残り4枚となった。

ノゾム:山札25 手札5 マナ1/5 墓地1 シールド3

 これで、相手の場にクリーチャーはいなくなった。
 相手のマナ的に、即座にまた《ベガスダラー》が出てくる心配はないと思いたい。
 此処まで掻き乱されるとは思わなかったのである。

「では私のターン、《奇天烈 シャッフ》を召喚! その効果で、選ぶのは4! 更に《マイパッド》も召喚して、ターンエンドです!」

 しかし、所詮バウンスはバウンス。破壊しなければ、《シャッフ》は何度でも手札から戻ってくる。厄介なクリーチャーには変わりない。

「くっ、コスト4の呪文とコスト4のクリーチャーによる攻撃を封じてきたか……!」

リンユー:山札22 手札4 マナ2/6 墓地0 

 つう、とノゾムの額に汗が浮かんだ。
 しかし。このまま負けるわけにはいかないのである。

「オレのターン、ドロー——今度は、《龍覇 M・A・S》召喚! 効果で、コスト4以下の水のドラグハートである《龍波動空母 エビデゴラス》をバトルゾーンへ! そして、《M・A・S》の効果で《シャッフ》をバウンスだ!」
「出てきましたかあ、ドラグハート・フォートレス。でも、どこまでやれますかねえ?」
「へんっ、お前の言うマジックとやら——ロジックによるマジック、超科学が相手になってやるぜ! リキッド・ピープル閃の築き上げた要塞、嘗めるなよ!」

 遂に現れた、ドラグハート・フォートレス。
 不沈の空母、《エビデゴラス》をどかすのは奇天烈の侵略者でも不可能だ。
 
「もう1回、《チョイス》でシールドをブレイクだ!」

 これで、シールドの数はタイになった。
 戦力的にも、除去されにくいフォートレスを立てたノゾムが優勢と言えるかもしれない。
 しかし。決して、油断はできないことは彼にもわかっていた。

「ふーむ。これは仕方ないですねえ」

 再び、リンユーにターンが回ってくる。
 さて、確かに侵略クリーチャーは、指定されたカードが無ければ侵略進化は出来ない。
 しかし。

「忘れないでくださいよぉ? 普通の進化もできるんですからあ——《マイパッド》進化——《奇天烈コイコイ》!」



奇天烈 コイコイ C 水文明 (3)
進化クリーチャー:マジック・コマンド/侵略者 5000
進化−自分の水のクリーチャー1体の上に置く。
侵略−水のクリーチャー



 彼女の甲高い声と共に、《マイパッド》の体に鳳の紋章が焼き付けられ——侵食していく。そして現れたのは、花札を持った侵略者であった。
 更に、彼女のマナはまだ4枚残っていた。

「もう1回、《奇天烈 シャッフ》召喚! 選ぶのは数字の”6”!」

 彼女にとっても、やはり《サーフ・スパイラル》を警戒したかったのだろう。それだけではなく、《M・A・S》の攻撃を止めた形になる。
 更にそれだけではない。今度は《コイコイ》がシールドを目がけて飛び掛かった。

「さあ! さあ! さあ! 本日二度目の登場です! 皆さんご覧あれ! 世紀の大魔術師の登場を——水のコマンドの攻撃をトリガーに、変幻マジック・侵略発動!」

 再び、侵略は発動した。
 スポットライトが当たると同時に、大量のコインが注ぎ込まれる。
 そして、カジノの都を取り込み——奇天烈の侵略者が姿を現した。

「——ショータイム、《超奇天烈 ベガスダラー》!」
「やっぱり来たか——!!」

 最悪、此処で再び大消失マジックと称した全バウンスが起こりかねない。
 この試合、やたらとツキが悪い事はノゾムも分かっていた。
 侵略でなくとも、この効果は当然発動する——

「それでは、山札の上から1枚をオープンしちゃってください!」
「……!」

 カードを表向きにする。
 もしも、此処で全バウンスを食らったら、最早《エビデゴラス》の龍解どころではない。まして、進化元が居ないので革命どころではない。
 ——でも、オレは引く!! 確率だろうが、何だろうが——此処でオレは引かねえといけないんだ!!
 カードを捲った。
 会場が緊張に包まれる。
 そして——ノゾムはそれをリンユーにおずおず、と見せた。
 その表情は——笑っていた。
 そこにあったのは——《アクア少年 ジャバ・キッド》だったのである。

「……チッ、失敗! でも、《ベガスダラー》は効果でカードを2枚引けます! 決着は次のターンに取っておきましょう!」
「まだだ! 逃がさねえぜ! S・トリガー、《龍脈術 水霊の計》! 効果で《シャッフ》を山札の一番下へ!」
「本当に、トリガーが多く積んでるみたいですね……!」
「これで、何とか止めたぜ!!」

 ノゾムは宣言した。
 今の彼のシールドは1枚。
 既に、革命の狼煙は上がっていたのだ。

「——オレのターン、ドロー!」

 カードを引くノゾム。
 その顔は、勝利を確信した笑みだ。
 今までの分を全て返さんとばかりに——彼は《サイバー・I・チョイス》の頂きに叩きつける。

「無限の知識を相乗し、今此処に革命を証明せよ!!」

 その身体は龍素の力を集積し、電撃のように迸っていく。 
 理想と現実のギャップ。それさえも乗り越えて、龍戦士は再び目覚めた。
 青天、霹靂を飛ばす勢いで龍程式の革命軍が今、顕現する。



「稲光のように速く、そして確かな希望となれ!!
《革命龍程式 プラズマ》!!」