二次創作小説(紙ほか)

Act4:奇天烈の侵略者 ( No.408 )
日時: 2016/10/10 12:08
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

 現れたのは、稲妻の如き結晶の革命軍。
 その効果により、ノゾムの手札に4枚のカードが渡る。
 そしてこれは同時に——《エビデゴラス》の龍解条件を満たしたことも意味していた。

「——弱き者の盾となれ! そして世界を導く礎となれ——龍解!!」

 カッ、と浮遊する要塞に龍の鼓動が宿る。
 そして、咆哮と共に、その機体は変形し、龍の姿を成した——



「——《最終龍理 Q.E.D+》!!」



 その登場により、観客は更に沸き立った。
 ノゾムの切札2枚が一気に揃い踏み、完全に場は整ったと言ってもいいだろう。
 しかも、リンユーはクリーチャー中心の構築故に、余り除去呪文を入れていないように見受けられた(精々、マナに置かれていた《ピタゴラス》くらいか)。
 このまま、一気に押し切ることが出来る。

「そして、《プラズマ》で《ベガスダラー》を攻撃し、破壊!!」

 彼が命じると共に、閃光の結晶龍は、その拳を侵略者へと突き立てた。そして、一気に紫電が迸る。
 バチバチと音が鳴り、侵略者の思考回路は文字通り、焼き焦がされた。
 壮大な爆発音とともに、《ベガスダラー》は成す術なく機能停止していく。
 これにより、リンユーのクリーチャーは全て手札以外の場所に除去されたことになる。
 彼女の手札はかなり多いが。

「そして、《Q.E.D+》でシールドをW・ブレイクだ!!」
「うっ——!!」

 放たれた光線が、シールドを焼き尽くし、0と1の羅列へと還元していく。
 これで、リンユーのシールドは残り1枚となる。
 しかし、彼女のシールドが光り、収束した。

「S・トリガー、《機術士 ゾローメ》! その効果で《M・A・S》をロック、つまり攻撃もブロックもできなくしますよ! まあ、《シャッフ》の効果かかってたんで意味ないですけど!」



機術士 ゾローメ C 水文明 (5)
クリーチャー:マジック・コマンド 3000
S・トリガー
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、相手のクリーチャーを1体選ぶ。次の自分のターンのはじめまで、そのクリーチャーは攻撃もブロックもできない。



 現れたのは、壷振り女の姿をしたロボット型クリーチャー。
 彼女が座っている巨大な筒からサイコロが射出され、《M・A・S》に当たるや否や、その姿を巨大なサイコロに変えてしまう。

「これで、ターンエンドだ! そして、次のターンでお前を倒す!」

 次のターン。ノゾムは完全に勝つ算段が出来ていた。手札には《サイバー・ブック》と《アクア警備員 ラスト》がある。例え、次のターンに2体が除去されたとしても、《サイバー・ブック》で《エビデゴラス》を龍解させて、《ラスト》で最後のシールドを安全に消し飛ばすというものだ。
 ——ヒナタ先輩を倒した手段と全く同じ戦法でやってやるぜ!
 彼の勝利へのシナリオは完璧なものと思われた。
 かなりえぐく、えげつない方法であったが、次のターン、どうあがいても彼女を仕留めることが出来る。
 手札には、《ザ・クロック》こそ無いものの、《ピタゴラス》に《スパイラル・ハリケーン》、《水霊の計》と要塞状態になっており、《プラズマ》の効果で唱えられる。
 つまり。今ここでリンユーはノゾムに追い詰められた形になったのだ。

「——ふふふ」

 しかし。
 彼女から漏れた言葉は、彼の想像を超えていた。

「……可愛い」
「……えっ?」
「最初のうちは、まだ沼からまだ這い上がれるんですよ——でもある一線を越えたら、もう沼からは這い上がれない。ギャンブルも似てるところがあるんですよねえ」
「何言ってんだ、お前……!?」
「年下の子が私を此処まで追い詰めたのはいつ以来でしょうか——勝利を確信し、愉悦に酔い、狂喜しているその童顔——とても私、好きなんですよぉ——見てたら興奮しちゃうくらいに——思わず、轢き殺してしまいそうな程」

 にやり、とリンユーは笑みを浮かべた。その顔には、うっすらと紅が乗っている。

「私普段は、マジシャンとして淑女を演じることが出来るのですがね——貴方のように、私を追い詰めてくれる可愛い子を見ると——興奮しちゃうタチなんですよ」
「ちょ、あ、あのー?」
「さっき苛めてた時に、ムキになって怒ってた顔も良かったですけど——恐怖に怯えてガクガク震えてる顔も、良いですよねえ——最初は淑女を装ってましたが、もう我慢できません——貴方の心を、奪います。私の侵略で!!」

 その瞳は、最早歯止めの効かない暴走機関となっていた。
 彼女は、マナゾーンの4枚を手に掛ける。

「あはっ……♪ エクスタシー、何て素晴らしい響き——心臓が高鳴る、脳が快楽でズブズブに濡れるような心地!! さあ、最高のマジックを今!! 2体目の《奇天烈 シャッフ》召喚!!」
「げっ——またかよ!?」

 ——だけど、俺の手札には幾らでも呪文がある! 止められる!
 彼女が宣言したのは——

「指定する数字は”4”!! これで、《スパイラル・ハリケーン》は唱えられない——!」
「? どういう意味だ!? オレの手札にはまだ呪文が幾らでも——!」
「勝利は残酷な時の運!! さあ、さあ、さあ!! くたばるときの絶望に満ちた表情——早く見せてくださいよ!! 《シャッフ》を進化——」
 
 頂きにカードが重ねられた。
 そして——彼女の声と共に、《シャッフ》がその姿を変える。

「——《奇天烈 コイコイ》!!」
「っ——だけどそれでもうマナは使い切ったはずだ!!」
「甘い!! 甘い甘い甘い甘い甘い!! 実に甘い!! 全部分かった気になってるところがまたキュート!! 《コイコイ》で攻撃——するとき、侵略発動!!」

 《コイコイ》に手を掛け——再び、進化をさせる。
 その天辺に置かれたのは、更なる奇天烈の侵略者。一度敗れても、二度、二度敗れても三度——不屈の意思の下、侵略は発動した。

「さあ、さあ!! 今度は奇跡の生還マジック!! 皆さん、ご照覧あれ!! 本日のマジックショーの大トリを務めますは——《奇天烈 ベルセブン》!!」



奇天烈 ベルセブン R 水文明 (5)
進化クリーチャー:マジック・コマンド/侵略者 9000
進化−自分の水のクリーチャー1体の上に置く。
侵略−水のコマンド
W・ブレイカー
呪文の効果によって、相手がクリーチャーを選ぶ時、相手のシールドが2つ以下なら、相手は自分の水のクリーチャーを選べない。




 現れたのは、スロットを取り込んだ奇天烈の侵略者。
 ぐるぐるぐるぐる、と回り続けたそれは、ピタリ、と止まる。
 それは、ラッキーセブンのぞろ目だ。
 
「7、7、7!! あはははははははは!! ジャックポット!! 大当たり!! ゲームセット!! さあ、そのまま《ベルセブン》でシールドをブレイク!!」

 迫る攻撃。
 その拳が彼のシールドに叩き込まれようとした瞬間——革命は起こる。

「遍く知識の集積よ、遍く異変(エラー)への防壁となれ——革命2発動!!」

 彼の宣言と共に、シールドのさらに奥から、大艦隊の支援砲撃が放たれた。
 《プラズマ》の効果で、唱えられたS・トリガーカードは《幾何学艦隊ピタゴラス》だ。
 
「《ピタゴラス》の効果で《ゾローメ》と《ベルセブン》をバウンスだ!!」
「ふふ、あははははははは!! 残念でした!! ”侵略モード”、発動!!」

 次の瞬間、《ベルセブン》の瞳が光る。
 そして、7の数字が3つ現れ、艦隊の砲撃を弾き返してしまった。
 《ゾローメ》も、《ベルセブン》も無事だ。

「——侵略モード——相手のシールドが2枚以下の時、《ベルセブン》の効果で私の水のクリーチャーは呪文によってえらばれません!! あははははははは!!」
「え、う、嘘だろ!?」
「皆さん、ご覧ください!! あの艦隊の砲撃を受けながら、彼らは見事生還しました! まさに、奇跡!!」

 ——選ばれない——そうか、だから先に《スパイラル・ハリケーン》を潰したのか!!
 この状況で、彼女の懸念となるのはS・トリガークリーチャーと全体除去の《スパイラル・ハリケーン》のみ。
 その片方の可能性は潰え、そしてノゾムが出してこなかった以上——S・トリガークリーチャー、特に《ザ・クロック》の可能性も潰えた。
 最早、彼女の侵略を邪魔するものは無い——革命も虚しく、最後のシールドが割られた。

「ト、トリガーじゃない——!!」
「虚しいですねぇ——貴方の今の顔、とっても可愛いですよ? 敗北を認めた、絶望に満ちた表情——何て愛らしいのかしら」

 そんな声が、耳を吹き抜けていった。
 成す術はもう無い。呪文で選ばれないので、革命0トリガーも意味を成さない。
 侵略の圧倒的力を前に——ノゾムは押し潰されるしかなかった。



「ダイレクトアタック、成立——!」