二次創作小説(紙ほか)

Act4:奇天烈の侵略者 ( No.409 )
日時: 2016/10/10 19:36
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

 ——革命、敗れる。
 会場に、そして鎧龍チームの間には、衝撃が広がっていた。
 侵略対策の革命が、こうも打ち砕かれるとは。
 圧倒的な力を前にして、放心状態のノゾムはがくり、と膝をつく。負けた。恐ろしい程に強い敵だった。

「すいませんねえ。私のデッキ、これでもまだマジック・コマンドの寄せ集めのようなものなんですよ。我らがリーダー——リュウ・テイシュウはこんなものではない」
「……くっ、完敗だ……!」

 デッキを片づけ、悔しさに顔を歪ませてフィールドを後にするノゾム。
 彼女は言った。テイシュウのデッキはこんなものではない、と。だとすれば——彼がどれほどの実力者なのか、測りえない。
 いや、そもそも彼が出て来るかもわからないのであるが。
 
「くっ、すいません先輩……!」
「大丈夫だ、ノゾム。先発の哨戒役としてはなかなかだったぞ」
「でも、あれで旧型のデッキって——かなり、まずいんじゃないですか?」
「侵略を侮っていたわけじゃねえ……革命もそれなりに強化されている……だが、こいつら相手には革命頼りにするような単調な戦法は通用しねえし、そうじゃなくても——ノゾムのようになる」

 フジの言葉が重々しく響く。
 次で勝たなければ、日本は、鎧龍は敗北となる。
 次の試合は何が何でも負けるわけにはいかないのだ。

「次の試合——誰を出すか」

 全員は黙りこくる。
 残る4人——ヒナタ、レン、コトハ、ホタルの中で、誰を選ぶか。
 かなり重い決断だ。
 しかし、そんな中で進み出たのは——

「——あたしが出ます」

 ——コトハだった。
 全員はざわめく。確かに、このままでは膠着状態であることも確かであるが——

「勝算はあるのか?」
「——策はあります!」

 彼女の発言からは強い意志が感じられた。
 だが、あながち間違ってもいない。彼らのビートダウンに対して、彼女のデッキは非常に鈍重であるが——耐え抜けば、後半戦に全く隙を許さなくなるだろう。
 次の瞬間、アナウンスが鳴り響く。
 既に相手は選手を決めてしまったようだった。

『中堅戦ッ!! ジンリュウデュエリスト養成学校は、この試合に王手をかけていますが——』

 入場してきたのは、瓶ブチ眼鏡をかけ、白衣を纏った少年だった。
 常に無表情で、視線はどこか虚ろだ。
 その名が呼ばれる。



『ジンリュウデュエリスト養成学校、学業成績トップ! 3年生、ハン・グエン選手!!』



 同時に観客は沸き立った。
 3年生。ということはエースクラスの筆頭で間違いないだろう。
 一方、向かい側から進んでくるのは——

『一方、鎧龍決闘学院、もう後が無い! 中堅戦の選手は、如月コトハ選手!!』
「行くわよ、ニャンクス!」
『はいですにゃ!』

 高らかに声を上げた彼女。
 大歓声に包まれる中、グエンは憂鬱げに溜息をついた。

「はぁ。空はこんなに青いのに……わざわざこの僕が君の相手をせねばならないとはね……気分はブルーだ」
「何とでも言いなさい。此処で勝って繋げるわ!」

 昨日のデッキ調整は無駄では無いことを証明するため。
 そして、ノゾムの敗北を無駄にしないため。
 何よりもチームの為、彼女はデッキを手に取った。

「はあ。ブルーだ。あの海が淡く見える程にブルーだ。君は、僕を楽しませてくれるのか?
「さあ? どうかしら。油断してたら、楽しむ間もなく負けちゃうわよ?」
「……始めようか」



『試合、開始!!』



 ***


・コトハ
侵攻する神秘 ニガ=アブシューム
邪帝斧 ボアロアックス
真聖教会 エンドレス・ヘブン
爆熱剣 バトライ刃
恐龍樹界 ジュダイオウ
始原棍 ジュダイナ
龍魂教会 ホワイティ
護衛武装 ロシアンブルー・ディープス

・グエン
シルバー・ヴォルグ
時空の剣士 アクア・カトラス
勝利のプリンプリン
サンダー・ティーガー
時空の英雄アンタッチャブル×2
時空の喧嘩屋キル×2



 後攻2ターン目。現在、グエンの場には、《トロン》と《マリン・フラワー》が出ている。
 対するコトハも、序盤から一気にエンジンをかけていた。

「呪文、《メンデルスゾーン》を使うわ! その効果で、山札の上から2枚を表向きにして、それがドラゴンならマナゾーンへ!」

 捲られたのは《龍覇 ザ=デッドマン》と《凶英雄 ツミトバツ》だ。
 両方ともドラゴンの為、マナゾーンへ落ちる。
 
「ドラゴン……か。もう、そんなにマナが溜まっているのか……鬱だ」
「ふん、うじうじして……何なのあんた。さっさと終わらせてやるわ。ターンエンド」

コトハ:山札26 手札4 マナ0/4 墓地1

 憂鬱げに彼はカードを引く。
 彼の言動からは生気というものを感じられない。
 ブルー、まさにブルーそのもの。
 しかし。

「……それでは、そろそろ行こうか。はぁ、憂鬱だ。テイシュウとの賭けで、マジック・コマンドは全部あいつに取られ……いや、あいつは悪くないんだ……悪いのは変に賭けに乗った俺なんだ……ああ、何て僕はついてないんだ。あの後2回もマンホールに落ちたぞ」
「いや、もういいからそういうの。何か……どっかで聞いたことあるわ、あんたの愚痴」

 そういえば、ホタルが言っていた。
 この男、元はかなりの強豪プレイヤーだったのだが、テイシュウの賭けにまんまと乗って、切札だったカードをかなり取られたらしい。
 それで元々ブルーだった性格が更にブルーになったらしく。
 
「ともかくだ……3マナをタップ。《ジャバン》召喚」



ジャバン P 水文明 (3)
クリーチャー:サイバーロード/エイリアン 2000
ブロッカー
このクリーチャーは攻撃できない。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札を見る。その中から《ジャバン》を1枚選び、相手に見せてから自分の手札に加えてもよい。その後、自分の山札をシャッフルする。



「この効果により、山札から《ジャバン》をサーチ——ターンエンドだ」

グエン:山札28 手札3 マナ0/3 墓地0

「あたしのターン、ドロー!」

 ——と言っても、少しまだ手札が悪いわね……! 此処でできることが無い……!
 重いカードを多々入れているため、コトハの行動はマナチャージのみで終わる。

コトハ:山札25 手札4 マナ5/5 墓地1

「僕のターン。4マナで《パクリオ》召喚。その効果でお前の手札を見る」
「げっ……」

 彼女の手札が公開される。
 そこには、《ジャックポット・エントリー》に《界王類邪帝目 ザ=デッドブラッキオ》、《龍世界 ドラゴ大王》、《支配のオラクルジュエル》が——そこから選択されたのは、《ジャックポットエントリー》。
 即座にシールドへ埋められる。

「ターンエンドだ」
「うぐぐ……!」

 コトハは歯ぎしりした。
 着実に次のターンの行動が潰されていっている。

グエン:山札27 手札2 マナ0/4 墓地0

「あたしのターン——取り敢えず、マナにカードを置いてターンエンドよ」

 完全に事故った、というべきか。
 意気揚々と出ていった矢先にこんな目に遭うとは。
 しかし、マナを溜めていけばまだ勝ち目はある、と信じる。相手はサイバー。恐らく侵略は使ってこない。侵略を想定した構築ではあったが、まだマシな部類と思いたい。

コトハ:山札24 手札4 マナ6/6 墓地1

 しかし。真の恐怖はここからだったのである。

「僕のターン、ドロー。さあ、此処まで足踏みご苦労。君達島国のサルが、侵略を負けた言い訳に出来ないように——この僕直々に解体してやろう」

 カードを引くグエン。
 そして——彼は、5枚のマナをタップした。

「——水の主戦力は、リキッド・ピープルやマジック・コマンドだけではない。何が出るのか、分からない。これもまた——ギャンブル。さあ、憂鬱に、ブルーに、最悪な実験を行おうじゃないか——!」

 彼女は身構えた。
 来る。敵の切札が。
 水で統一されたマナが、水文明最高峰の秀才を作り上げた——



「さあ、発明開始——《スーパーハッカー サイバー・クーン》!!」