二次創作小説(紙ほか)

Act4:奇天烈の侵略者 ( No.411 )
日時: 2016/10/13 22:27
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

 ***



 試合前。ステージへ進んでいくコトハに、ヒナタは呼びかけた。

「おい、策って一体——!?」
「馬鹿ね。あるわけないでしょ。未知の敵が相手なのに」
「オイ!?」

 あっけらかんと言い放つ彼女に、ヒナタは呆れが隠せなかった。
 しかし。

「ま、あなたに影響されたっていうか。今回のデッキは、かなりの自信作なのよ。昨日、散々特訓したあなたならわかるでしょ?」
「……ま、もううだうだやってても仕方ねーな」

 がしっ、と彼女の肩を掴むと思いっきり口角を釣り上げ、ヒナタは言った。
 彼女の表情に迷いはない。今更止める理由も無い。ならば自分に出来ることは——

「全力で行って来い!」
「誰に言ってんの。勝ってくるわ!」



 ***



 ——そうよ。あたしは絶対に勝つ。ヒナタに背中を押されたんじゃ、もう後戻りなんか出来るわけないじゃない!
 次の瞬間、フィールドを叩き割り、巨大な五本の首を持つ邪龍が現れる。
 《ザ=デッドブラッキオ》は、マナゾーンにカードが5枚以上あって、5文明が揃っていればスーパー・S・バックを得て場に現れる脅威のクリーチャー。 
 その登場時効果で、相手のクリーチャー1体をマナゾーンに封じ込め、相手の龍解を完全に禁止するという、サイキックに対する《偽りの名 シャーロック》のような能力を持つのだ。
 
「っ馬鹿な——!! 手札にもう1枚——折角シールドに埋めて、最後にブレイクするはずだったのに!!」
「《フェアリー・シャワー》で手札に加えられたのよ。さあ、《トワイライトΣ》をマナゾーンに送るわ!」
「ぐうう——鬱だ、鬱だ鬱だ鬱だ鬱だぁぁぁー!!」

 大地から蔓が伸び、《トワイライトΣ》を完全に引きずり込んだ。
 更にもう1枚、カードが手札から現れる。

「おのれぇぇぇ!! 《ラブリー・ハート》でダイレクトアタック!!」
「ニンジャ・ストライク6発動——《威牙の幻 ハンゾウ》で《ラブリー・ハート》のパワーをマイナス6000して破壊!!」

 完全に、攻めの芽は潰された。
 これにより、グエンはもう、このターンに出来ることが無くなってしまう。



界王類邪龍目 ザ=デッドブラッキオ SR 自然文明 (8)
クリーチャー:ジュラシック・コマンド・ドラゴン 9000
多色マナ武装 5:このカードが自分の手札にあり、自分のマナゾーンにカードが5枚以上あって5文明がそろっていれば、このクリーチャーは「スーパーS・バック」を得る。(カードを自分のシールドゾーンから手札に加える時、そのカードを捨ててもよい。そうした場合、このクリーチャーをコストを支払わずに召喚する)
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選び、持ち主のマナゾーンに置く。
相手のドラグハートは龍解できない。
W・ブレイカー



 さて、相手のマナには火文明を含む《猛菌剣兵 チックチック》がある。
 つまり、素出しでも再び《蒼炎》を次のターンに出せる状態ということだ。
 このターンで決めなければ、勝利は無い。もしも半端に攻め込めば——増えた手札のどれかに《蒼炎》が入っていることが、負け筋となる。

「さあ、やってやろうかしら!」

 カードを引く。
 そして——9枚のマナをタップした。
 最早、《ディープス》のコスト軽減を使う必要はない。一気に此処でグエンを倒す。
 更に、今度は《ニャンクス》の宝杖が光った。

「《ニャンクス・プリエーゼ》の大地ガイアマナ武装5発動! マナゾーンに、ドラゴンか自然のクリーチャーが5枚以上あれば、あたしはマナゾーンからクリーチャーを召喚できる! あたしは更に9コストをタップするわ!」

 次の瞬間——フィールドが震えた。
 既存のクリーチャーとは一線を画す、強大な気配が場を支配する。
 次の瞬間、強大な咆哮が響き渡った。
 ドラグハートに、その身を取り込まれた若きドラグナーの成れの果て——無限にマナを食らい尽くし、破壊する龍の化身。
 その名は——



「数多の大地を食らい、暴走しなさい——《暴龍事変 ガイグレン》!!」


 
 ——破滅の事変であった。

「さあ、行くわよ。《プリエーゼ》の効果で、自然以外のクリーチャーが場に居れば、あたしのマナゾーンのカードは全ての文明を得るわ!」
「そ、そんな、ということは——!!」
「マナ武装9、発動——」

 そう宣言した途端に、《ガイグレン》の大剣が振り上げられる。
 そして——一気に、グエンのタップされていたクリーチャー全てが切り裂かれた。もう、1度暴れ出せば、《ガイグレン》は止まらない。全てを焼き尽くしても尚、その暴走は止まらない。

「——攻撃時にアンタップ!! これでクリーチャーは全滅よ!!」
「ぐっ——馬鹿な!! この僕が——お前ら如きに——!!」
「さあ、次はシールド!!」

 2枚、4枚、そして最後の1枚——この無限の熱を持つ龍の前では、抗うことさえも無意味だ。
 そのまま、剥き身になったグエンに大太刀が振り下ろされた。



「マナ武装9、アンタップ——《暴龍事変 ガイグレン》でダイレクトアタック!!」



 ***



『決着!! 中堅戦を制したのは、鎧龍・如月コトハ選手だ!!』



 歓声が上がる。
 この戦い、まだ終わりはしない。
 コトハが必死で食い繋いだ形になった。
 がくり、と落胆した表情を見せるグエン。
 対するコトハは、嬉々とした表情で仲間たちの元に戻っていく。

「コトハ! すげぇよ、やったじゃねえか!」
「へへん、勿論よ!」

 ばっ、とヒナタに抱き着く。
 彼女も嬉しいのか、気持ちの昂ぶりが抑えられないようだ。
 その光景を見て、思わず赤面するホタルとノゾム。流石に場所を弁えて欲しいと思ったが、抱き着くくらいなら……問題は無いだろう。
 しかし、浮かれている暇もない。
 呆れたようにレンが言った。

「馬鹿め。まだ喜ぶのは早い。次は大将戦だ。誰が出るのか……」
「それはもう、決めてあるぜ」

 自信たっぷりにフジが断言する。
 
「——最後はヒナタ。テメェが行け」
「ん、やっぱり俺っすか」
「何だかんだ言って、此処一番ではテメェと決めているんだ。相手は誰を出してくるかわからんが……追い詰められてる上に、エース格をやられたんだ。出てくるのは一択だ」
「相手は除去を回避してくる難敵……それは、一昨日のテイシュウのデッキや、リンユーのデッキを見ても分かる。僕では、少し相性が悪いかもしれんな」
「……そうだな。一昨日の借りは倍にして返さねえと!」

 既に、気合いが入っているのか、彼は笑みを浮かべた。
 今から武者震いがする。この間負けた相手へのリベンジ——なんとしてでも果たしたいところだ。
 
「……あなたも、勝ってきてよね! 絶対、よ!」
「分かってる。大将の俺が負けたら、話にならねーからな!」
「先輩! オレの分までぶっ飛ばしてきてください!」
「おう!」

 彼はわき目も振らずに、フィールドへの階段を駆け上がる。
 歓声が、聞こえてきた。



『それではこれより、大将戦を開始します!! 鎧龍決闘学院からは——リーダー・暁ヒナタ選手が選出されました!!』

「さあ白陽! やるか!」
『全く。結局私をデッキに入れるとは……物好きだな、お前も』
「たりめーよ! 頼りになる相棒が居なくて、此処一番の大勝負が出来るかよ!」

 向こう側を見据える。
 つか、つか、と硬い靴の音を立てて現れたのは——

『ジンリュウデュエリスト養成学校からは、此処で絶対に勝つつもりか、最強の勝負師、3年のリーダーであるリュウ・テイシュウ選手の登場です!!』

「さあ、最高のゲームを始めようかネ——暁ヒナタ!!」

 いつものきな臭い笑みを浮かべ、彼は大きく手を広げた。
 これから、最高に熱に狂ったゲームが始まることを喜ぶように。

『テイシュウ選手は、学園内でも『運命天導(ウィザード)』という異名を持つほどの実力者! 果たして、どのような勝負を見せてくれるのでしょうか!』

 ウィザード。それは魔導士を意味する単語だ。やはり、この男は只物ではない。
 デッキのカードを置き、シールドを展開する。
 自分の読みが当たったことを喜ぶように、ヒナタは言った。待ちに待っていたマッチングだ。彼との決着をつけることができる。

「やっぱり来たな、テイシュウ」
「君は必ずリベンジに来る——そう思っていたんだよネェ……そして、あのデッキはお前のエースデッキじゃない。最強のドラゴンの力、今一度俺にも見せてくれよォ!!」
「良いぜ。見せてやるよ! こっからが大一番、決着をつけるぜ!!」



『——それでは、大将戦——開始!!』