二次創作小説(紙ほか)
- Act5:確率の支配者 ( No.412 )
- 日時: 2016/10/13 22:25
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
大歓声の中、遂にデュエルが始まった。
情報端末から、フジは2人の超次元のカードを確認していく。
「む。相手は変わらず、超次元の使用は無しか」
「『運命天導(ウィザード)』——それは、テイシュウの異名らしいわね。只物ではないわ」
「不気味ですね……あ、ヒナタ先輩の方も確認しないと」
——ヒナタとテイシュウのデュエル。
先攻2ターン目、早くもヒナタは動き始めていた。
「2マナで呪文、《勇愛の天秤》! その効果で、手札から《めった斬り・スクラッパー》を捨てて、カードを2枚ドローするぜ。ターンエンドだ!」
ヒナタ:山札27 手札4 マナ0/2 墓地2
初手は《勇愛の天秤》による手札交換。
堅実に、手札を整えていく動きだ。一方のテイシュウも、早々に動き始めた。
「俺のターン。マナをチャージし——2マナで《一撃奪取 マイパッド》を召喚。ターンエンドだネ」
テイシュウ:山札28 手札4 マナ0/2 墓地0
一方の彼が繰り出したのは、大量の電子機器を構えた無法者。
これにより、次のターンには4コストの水のクリーチャーを出すことが出来る——しかし。
「んじゃ、行くぜ! 3マナで《爆炎シューター マッカラン》召喚!」
「む」
次の瞬間、ヒナタの炎のマナから、炎の剣を構えた戦士が現れる。
そしてそのまま、彼のマナの力を纏い——剣に灼熱の火炎が顕現する。
「マナ武装3で《マイパッド》とバトルして、破壊だ!」
「……ほーう」
次の瞬間、地面を蹴った《マッカラン》は《マイパッド》へ肉薄して——その剣で薙ぎ払った。
真っ二つになった《マイパッド》は成す術なく破壊されてしまう。
「ターンエンドだ」
早くも相手のシステムクリーチャーを潰していく動き。
これで、次のターンにコスト軽減してクリーチャーを出す事は出来なくなってしまう。
ヒナタ:山札26 手札3 マナ0/3 墓地1
画して。
ヒナタは相手がアクションを起こす度に、それを潰していくメタビートであることが既に分かっていた。
獅子怒戦でも使った戦法であるが、この時は余りうまく決まらなかった。
しかし——今回、相手はビートダウンだ。彼の戦法が決まりやすいデッキでもある。
少し思案すると、テイシュウはカードを引いた。
静かな駆け引き。
それが今、終わりを告げようとしていた。
「……俺のターン。手札から《奇天烈 ガチダイブ》を見せる。召喚する時、進化クリーチャーを見せたため——コストマイナス2!」
そのまま、3枚のマナをタップする。
レン達はその効果に見覚えがあった。手札の進化クリーチャーを見せることでコストを軽減するクリーチャー——
「3マナで、《奇天烈 チャンG》を召喚!!」
奇天烈 チャンG UC 水文明 (5)
クリーチャー:マジック・コマンド/侵略者 4000
このクリーチャーを召喚する時、自分の手札から進化クリーチャーを1体相手に見せてもよい。そうしたら、このクリーチャーのコストを2少なくする。ただし、コストは0以下にならない。
このクリーチャーはブロックされない。
現れたのは、杖を構えた執事のようなロボット型クリーチャー。
巨大なサイコロを従えるその姿は、確率の侵略者のマジック・コマンドであることを意味していた。
さて。《ベガス》が来ると思って《マイパッド》を破壊したヒナタであったが、3ターン目にどのみちコマンドは現れたということになる。
次のターン——予測できるのは、侵略という行動であった。
テイシュウ:山札27 手札3 マナ0/3 墓地1
「ターンエンドだ」
観戦しているレン達としても、気分の良いものではない。
ヒナタが手札にもう1枚の《マッカラン》を握っていればいいのであるが——
「俺のターン、ドロー」
カードを引いた彼は、4枚のマナをタップする。
もう一度、テイシュウの行動を潰すために——
「——《早撃ち人形 マグナム》召喚」
「!」
会場はざわめきに包まれた。
彼が繰り出したのは、《早撃ち人形 マグナム》。踏み倒されたクリーチャーを直接破壊する、侵略に対する回答であった。
「ターンエンドだ」
「……暁ヒナタ」
静かにテイシュウは言った。
「どうやら、この俺のデッキを予測し、ガンメタして此処に来たようだネ」
「悪いけど、これも戦略だぜ」
「素晴らしい。実に素晴らしいよ——だけど我らがジンリュウでも、同じことはきつく言われているんだよネェ」
ニヤリ、と笑みを浮かべて彼は言い放つ。
「狂った勝負に全てを賭け、熱い勝負に人生を賭け——勝負とは常に敗北と表裏一体。だが、勝たねば全てを失うことだってある。では、勝つためにはどうすれば良いか——」
勝負に於ける鉄則。それはだんだん見えてくる。
シルクハットをキュッ、と握ると突き付けるように言った。
「——勝負事の鉄則は——相手が最も嫌がる事をやり続けることにあり——ってネ!!」
その言葉。
まさに、じわじわと追い詰められているはずなのに、かなり不穏に聞こえた。
「……メタビってのはそんなもんだろ」
「だがしかし。俺のデッキは、それを更に上回る——!! 君程度では、俺の戦法を破ることは出来ないんだよネェ!! 奇天烈の侵略者を、嘗めるなよ?」
言うと、彼は3枚のマナをタップした。
そこから、水のマナが生み出され、迸る知識が彼に力を与えた。
「呪文、《ストリーミング・シェイパー》! その効果で、山札の上から4枚を見せ、その中の水のカードを全て手札へ加える!」
「? 一体何を——」
展開されたのは、《機術士 ゾローメ》、《奇天烈 ベガス》、《奇天烈 コイコイ》、そして《終末の時計 ザ・クロック》だ。
「そしてすべて水のカード。全部手札へ加える」
「何をするんだ? 一体——」
「教えてやろう! 《奇天烈 チャンG》で攻撃!!」
杖を振り上げ、地面を蹴り——《チャンG》は突貫した。
「——水のコマンドの攻撃により、侵略発動! さあ、『運命天導(ウィザード)』と呼ばれしデュエリスト、リュウ・テイシュウのギャンブルデュエルをお見せしようかネ!!」
次の瞬間、《チャンG》に大量のコインが降り注いだ。
辺りは一転して暗くなる。
現れるのは夜の街。
だが、それらは1つの存在へ集積していく。カジノの街を取り込み、欲望と熱狂に取りつかれた侵略者が姿を現した——
「——熱く、そして冷静に、狂った勝負を始めよう! 賽は投げられた——《奇天烈 チャンG》進化!」
ルーレット、ダイスボード、あらゆるギャンブルの道具を身に着け、それは徐々に1つのクリーチャーとして顕現した。
投げられた賽から、どんな勝負が展開されるのかは、まだ誰にもわからない。これより、最高に狂った勝負が始まる。
「——ショータイム、《超奇天烈 マスターG》!」