二次創作小説(紙ほか)
- 短編6:Re・探偵パラレル ( No.420 )
- 日時: 2016/10/16 15:27
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
「ア、アヴィオール!! 何故だ!! ヴぉえっ、なんべ(何で)、僕ヴァ(が)ヴぉんヴぁことに(こんなことに)」
「いやぁ、すいませんねぇ。これボクのバリアじゃなきゃ防げないんですけど、流石につかれたんで範囲限定ボクだけにしちゃいました、悪しからず」
「ヴぉい、ふヴぁけるな!! 主人!! しゅびん(主人)を、ヴぁんヴぁと(何だと)ふぁっ、ふぁっ、ふぁっ、ヴぇくしょーい!!」
ともかく、これが恐ろしいガスであることは分かった。
怪盗ブラックバード。通称、美学の人。またの名を摩天楼の烏。化学技術を使ったトリックとアヴィオールの魔法を組み合わせたトリックで、今までに幾つもの宝を盗んできた手練れのはずだが——このように度々相方のアヴィオールに特に何の意味もなく見捨てられることが多々あり、胃を痛める要因になっている。
「特に何の意味もなくってどういうことだぁ!? 貴様、僕に恨みでもあるのか毎度毎度!!(※面倒なので常体ですが、この間ずっと鼻声です)」
「いやあ、別に。マスター弄りはボクの趣味ですので、はっはっは」
「ふざけるな、この愉悦部め!!(※面倒なので常体ですが、以下略)」
それを見て、「ザマァ見晒せ! 使い魔に見捨てられてやんの!」とでも言いたかったが、こちらも笑える状況ではない。
涙、くしゃみ、咳、鼻水が止め止めなく出ている状態だ。
「こ、こいつ、美学野郎め! この混乱に乗じて黄金聖杯を!(※面倒な以下略)」
が、中でも悲惨なのがラビットキッドであった。くしゃみと鼻水に塗れたまま、聖杯の展示ケースまで走るが、最早前がよく見えず、よろめいてガレキに蹴っ躓いた。
さて、このガレキが何が原因でできたものなのか——もう御察しであろうが——
「うわああああああああ」
——先ほど、クレセントが開けた床の大穴である。そのまま下のフロアまでフェードアウト。何とか怪盗2人を相手にする羽目に陥らずには済んだ。
しかし。このガスがある限り、迂闊には動けない。
と、次の瞬間だった。
護符が周りを飛び回る。ヒナタとキイチ、そしてシドはそれに囲われ——そして生成された結界の中に入ることになった。
そして、更に3枚の護符が3人に張り付く。
すると、みるみるうちに鼻水と、涙が引いていく——
「こ、これは!」
「私の呪術だ! これでガスは防げたうえに、結界内では浄化できたはずだが——!」
「すげえ! ジパングの呪術すげぇ!! 白陽が普段のクソリア獣狐から一転して有能に見える!!」
「普段とか言うな!!」
が、しかし。
次はガリガリガリ、と鋼を抉るような音が響き渡る。
それは銃声だ。
放っているのは言うまでもなく、アヴィオールである。得物はガンブレード。所謂振動剣(ヴィブロ・ブレード)の一種であるが、あれは銃としても使えるうえに連射できるよう魔改造しているようである。機関砲もびっくりの連射であった。
「ククク、何時まで持ちますかねぇ? このボク、アヴィオールは銃剣の扱いも魔術の扱いもお手の物。さあ、大人しくもう1度、くしゃみと涙の地獄を見なさい!」
「傷害行為は厳禁だぞ、アヴィオール。怪盗の美学は、えぶしっ、クソ、まだガスの影響が」
「感謝してくださいよ、クロトリ——じゃなかったブラックバード。魔力消費が激しいのに、貴方をバリア内に入れてやってるのに」
「なあ、貴様何でそんなに偉そうなの!?」
「やれやれ、そんなことはどうでもいいでしょう。まずは、これさえ抜ければ何とか——」
「一向に抜ける気配がないのだが」
「単発火力は低めですしねえ。それに、相手の魔力耐久がかなりある以上は仕方ないでしょう。が、いずれ壊せますよ。さあ、いつまで消耗戦を続けますかねえ!?」
と、言ったその時であった。
カラン、と音が鳴る。カチ、カチカチ、と引き金を引いたアヴィオールであったが、首をかしげる。
何も出ない。
しばらく考えた後、1つの結論に至った。
「あ、弾切れした」
次の瞬間——護符が彼らのバリアに張り付く。
そして、爆散した。
トドメと言わんばかりに、捨て身の白陽がバリアに槍を突き立てる。
ガラスが砕けたような音を立てて、バリアは粉々に砕け散ったのだった。
「あ、やべ」
「ちょ、アヴィオール、これは——」
もう、こうなればどうなるかはお分かりだろうか。
窓が無く、通風孔しかない空調最悪の部屋に充満しきった、催涙ガスが体のあらゆる穴という穴から入り——
「ヴぉえっ、げほっ、ヴぉええ!? ヴぇーくっしょい!?」
「うぇっ、ヴぇほっ、ヴぇへ、ヴぇへ、ヴぁっくしょい!」
「先に消耗しきったのおめーらじゃねえか!!」
「やれやれ、とんだ間抜け共だったな」
涙。鼻水。くしゃみが一気に催してくる。
これではもう、2人共まともに戦えはしなかった。
階段から転げ落ちるようにして逃げていく——
「おい、捕まえろ!! ひっ捕らえるのだ!!」
と叫んだシド。
しかし、考えてみればこの階の警備は、催涙ガスで機能停止に陥っている。下も同じで応援も見込めない。何と厄介なことをしてくれたのだろう。
彼らを捕まえることは出来ない。
だが、彼らももう何もできないだろう。
「白陽、この部屋に護符を張り巡らせて、崔涙ガスを浄化できるか!?」
「試みる」
すぐさま、部屋中に護符が飛んでいった。
それらが部屋の中に溜まった催涙ガスを浄化していく——
「——ふぅ、何とかなったか」
しばらくして、ようやく結界を解除しても何ともなくなった。これで後は、下の階で自分の撒いた催涙ガスを大量に吸って、再起不能のブラックバード組と、更に更に下の階で落下して再起不能になっているラビットキッド組をとっ捕まえるだけだ。
と、思ったその時だった。
「邪魔者が居なくなって、やっと動きやすくなったわ。何故か4階に誰も警備いないし、ガバガバすぎね」