二次創作小説(紙ほか)
- Act4:増殖 ( No.436 )
- 日時: 2016/11/26 16:53
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
「スペル、《メンデルスゾーン》を唱えるよ! その効果で、山札の上から《偽りの王 ヴィルヘルム》と《墓標の悪魔龍 グレイブモット》をマナに置くよ!」
先攻2ターン目。早速、シャノンは連ドラご用達のブーストカードの《メンデルスゾーン》を使い、マナのカードを4枚に増やした。
——ふむ。闇交じりのドラゴンデッキ……。
レンは、早速そう分析した。となれば、昨日自分が渡したカードも使ってくるかもしれない、と予想する。
だが、それ以外のカードをレンは知らない。
「なら、僕は2マナで《オタカラ・アッタカラ》を召喚だ。山札から2枚を墓地に置き、ターンエンド」
「それじゃあ、アタシのターン!」
カードを引くシャノン。
そのまま、カードを置き、5枚のカードをタップした。
「《龍神 ヘヴィ》を召喚! その効果で、自身を破壊して、そっちも1体破壊してね!」
「《オタカラ・アッタカラ》を破壊だ」
「そして、アタシは1枚カードをドローするよ! ターンエンド!」
あまり、これは美味しくなかった。
次のターン、レンはコスト4のクリーチャーを召喚できなくなってしまうことになる。
しかし、彼も負けてばかりではない。
「では、僕のターンだ。3マナをタップして、《ザビ・バレル》を召喚する」
「うっ……」
「手札を選んで捨ててくれ」
レンもハンデスで、こちらもテンポを奪っていくプランだ。
落ちたのはコスト6、《熱血龍 バトラッシュ・ナックル》だ。
それを見て、レンは徐に呟く。
「……日本のカードか」
「え、えへへ……よく怒られるんだけどね。やっぱり、かっこいいドラゴンに憧れちゃうんだよね、アタシ。昔、テレビで見た試合に見惚れちゃって……」
「いや、悪くないぞ。己の信じたカードを信じるんだ。貴様の選択は間違っていない」
ターン終了だ、と告げる。
かああ、とシャノンの頬が少し赤くなった。
「でもね、このデッキを使うのも後少しなんだよね」
カードを引くと、彼女はそのままターンを終える。
このターンに使えるカードが引けなかったのだろう。
「アタシは、もっと強くなりたいし、周りもそう言ってる。次の試験で合格したら、ライトレイの最新カードをもらえるんだけどね、それを使うデッキに切り替えろって言われてるんだ」
「デッキまで縛られるのか? ライトレイというのは」
「一部の人だけ、だよ。アタシみたいな一部の、ね」
レンはカードを引く。
——一部、か……。
そう、考えた。彼女のその言葉が何を意味しているのか。成績がそれほどに良好なのだろうか。
「やれやれ、本当におかしな話だ」
「そう思う、かな」
「まるでそれでは——」
それ以上は何も言わなかった。
——まるで、都合のいい操り人形だ、と。
ライトレイの、イギリスの名声を上げ、それらに都合のいい、イメージの良いデュエリストをこうして養成していくのだろう。
上から指定されたデッキを使い、淡々と、そして黙々と作業のように相手に勝つ。
そんな光景がすぐに浮かんだ。そういったうわさは、以前からイギリスのプロデュエマグループで沸いていた話だ。
競技としては、それが正しいのかもしれないが——
——……何の為のトレーディングカードゲームなのか分かったものじゃないな。
「シャノン」
「? 何?」
「君は何の為にデュエルをしている?」
「……」
「答えられるか?」
そのまま、彼は4枚のマナをタップする。
「——試合で、極めに極めた高みで相手に勝つためか? それもいいだろう。素晴らしいじゃないか。”ライトレイの言う”競技として自分が極めたいと思っているならな」
そして、1枚のカードを置いた。
「——《暗黒鎧 ヴェイダー》召喚。ターン終了時に、山札の上から1枚を墓地に。それがクリーチャーの《革命魔龍 キル・ザ・ライブ》だったので1枚ドローだ」
「……アタシのターン」
そのまま、彼女は口を噤んでしまった。
7枚のマナをタップする。
「——《邪蹄の悪魔龍 ベル・ヘル・デ・リンネ》召喚」
現れたのは、邪悪なる蹄を持つ悪魔龍であった。
相手のクリーチャーが破壊されるたびに、ドラゴンを場に出す強力なクリーチャーだ。
——ふむ。まずいな……《リンネ》連ドラ、か……。
レンは思い返す。以前、自分がヒナタに牙を剝いた時に使っていたデッキだ。
「——わかんないよ。そんなの……アタシには、デュエマしか、無いのに……」
「何故、そんなことを言うんだ。世の中は何も——」
「無い、んだよ……アタシには、これしかね、ふふっ。おかしいでしょ?」
「……」
この少女の口振り。
笑顔を浮かべているが、余りにもそれは切ないものだった。
何かを、隠しているような、そんな表情だ。
これ以上は、レンの良心が痛んだ。申し訳ない気持ちが込み上げてくる。
「……いや、済まなかった。問い詰めるような真似をして。僕は、君が自分で望んだ道に進んでくれるならそれでいいんだ。自分と相談して、自分の納得したがままのデュエルをしてくれれば、それでいいんだ」
「ううん、良いんだよ! レンがそんなに気にしなくたって。じゃあ、進めちゃお?」
「ああ。そうしようか。では、僕のターン」
再び、4枚のマナをタップする。
「《不吉の悪魔龍 テンザン》召喚!! こいつは、パワー13000のT・ブレイカーだ」
「うええ!?」
一気にシャノンは驚いたような表情を見せた。
これはまずい、と彼女も思ったのだろう。
コスト4で現れる普通のクリーチャーの中では最大クラス。
攻撃するたびに山札を13枚墓地に置いてしまうというデメリットこそあるが。
そのまま、《ヴェイダー》の効果を発動し、レンはターンを終える。
「う、アタシのターン——それじゃあ、《偽りの名 ヤバスギル・スキル》召喚! その効果で、墓地から《ヘヴィ》を回収して《テンザン》を破壊するよ!」
偽りの名(コードネーム) ヤバスギル・スキル SR 闇文明 (8)
クリーチャー:ドラゴン・ゾンビ/アンノウン 8000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、またはこのクリーチャーが攻撃する時、ドラゴン・ゾンビまたはコスト7以上のクリーチャーを1体、自分の墓地から手札に戻してもよい。そうした場合、相手のコスト6以下のクリーチャーを1体破壊する。
W・ブレイカー
「相手のクリーチャーが破壊されたから、《リンネ》の効果発動! これで、山札をシャッフルして、それがドラゴンなら場に出すよ!」
相手のクリーチャーが破壊される、というトリガーで《リンネ》の効果が発動した。
捲られた山札のカードは——
「うっ……《メンデルスゾーン》——」
——非情にも、ドラゴンではなかった。
「じゃあ、効果で手札を捨ててね!」
「《鎧亜の咆哮 キリュー・ジルヴェス》を墓地に置く」
「むう……何だろ、このもやもや」
「……さて、僕のターンだな」
カードを引くレン。
そのまま、4枚のマナを再びタップした。
まだ、余裕はある。焦らずに準備するだけだ。
「呪文、《リバース・チャージャー》。その効果で、《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》を手札に加える。《ヴェイダー》の効果で、山札の上から1枚を墓地に置いてターンエンドだ」
「……それじゃあ、行くよ」
結局増えたのはマナと手札のみ。
ブロッカーが2体いるとは言え、これでは貧弱だ。
このターンで攻め落とす。確固たる理念を以て、シャノンは詰めに入った。
「アタシのターン、ドロー」
そして、6枚のマナをタップした。
「《爆竜 バトラッシュ・ナックル》召喚! その効果で《ヴェイダー》を破壊! そして——《ベル・ヘル・デ・リンネ》の効果発動!」
来るか、とレンは身構えた。
そして——山札がシャッフルされ、一番上のカードがシャノンの手によって捲られる。
ぐっ、と一度目を祈るように瞑ると、彼女はそれを開示してみせた。
「出てきて!! 紅蓮の皇帝龍(モナーク)、《インフェルヌス・イモーレイター》!!」