二次創作小説(紙ほか)

Act4:増殖 ( No.439 )
日時: 2016/11/26 19:35
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

 ***



「革命ゼロトリガー発動!!」

 宣言するレン。
 シャノンに、それを突き付けた。
 
「やっぱり持ってた——!」
「呪文、《革命の裁門》——山札の上から1枚目を表向きにし、それが闇のクリーチャーだったならば」

 捲られたそれは、《ブラッドレイン》。闇のクリーチャーだ。
 
「相手のクリーチャーを1体選び、破壊する。無論、破壊するのは《バトラッシュ・ナックル》だ!」
「ッ……そんな」

 凌がれた。
 このターン、シャノンにもう攻撃できるクリーチャーは居ないのである。
 だが、それでも彼女のシールドはまだ残っていた。
 それも全部だ。
 まだ、レンは1度も攻撃できてはいないのだ。しかし——

「僕達のデュエルを見てきたなら、分かるはずだ。美学は、此処からが本領発揮。美しき闇の美学を追及した果てのデッキの真の力を見せてやろう」

 彼は8枚のマナを全てタップする。
 そして——《暗黒鎧 ディオデスター》の頂きに、そのカードを重ねる。 

「——悪夢の革命よ、怨嗟の果てに悲劇となれ——《ディオデスター》、進化!!」

 それは、新たなるレンの切札。
 今まで、幾度となく彼を助けてきたそれが革命の力を得て、地獄より蘇る。
 破獄の魔王が今、顕現した。



「《革命魔王 キラー・ザ・キル》!!」



革命魔王 キラー・ザ・キル SR 闇文明 (8)
進化クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン/革命軍 11000
進化−自分の闇のクリーチャー1体の上に置く。
W・ブレイカー
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、闇以外のクリーチャーをすべて破壊する。
革命2−このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、自分のシールドが2つ以下なら、自分の墓地にある進化以外の闇のクリーチャーをすべてバトルゾーンに出す。



 落ち着き払った表情のレンの宣告と共に、革命の魔王が降臨する。
 文字通り、進化した《キラー・ザ・キル》。武闘財閥によって強化されたそれは、彼に新たな戦法を与えたのだ。

「では、行こうか! 《キラー・ザ・キル》の効果で、闇以外のクリーチャーを全て破壊する」
「《バトラッシュ・ナックル》と《イモーレイター》が——!」
「そして革命2により、墓地から進化以外の闇のクリーチャーを全てバトルゾーンへ出す!!」

 まるで、トランプを並べるかのようにレンは墓地から一気にクリーチャーを出した。
 《オタカラ・アッタカラ》、《タイガニトロ》に《ヴェイダー》、《タイガマイト》、《テンザン》、更に《革命魔龍 キル・ザ・ライブ》——で済めば、まだ有情だった。
 彼が墓地から出した1枚が、このデュエルの勝敗を決定づけるものになってしまう。

「——《鎧亜の咆哮 キリュー・ジルヴェス》」
「それって……!」
「このターン、僕のクリーチャーは全てスピードアタッカーでスレイヤーだ。なんせ、こいつも闇のクリーチャーなのでな——!」

 身から出た錆。
 そんな諺をシャノンは思い出す。《ベル・ヘル・デ・リンネ》の効果で、さっき捨てさせたカードだ。
 山札から墓地にカードを送る方法は多い闇文明だが、手札のカードを直接墓地に置く手段はそう多くはない。
 つまり自分の寿命を縮めたのは、自分の運——

「最後に、《ザビ・バレル》を場に出す」
「……《リュウセイ》の被害をなくすために——!」
「そうだ。さあ、出すのか?」
「……出すよ。お願い」

 マッドネス効果で現れる《リュウセイ・カイザー》。
 しかし、もう出てくる攻勢はいない。
 スピードアタッカーとなった悪夢の軍勢がシャノンへ一斉に襲い掛かる。

「《キル・ザ・ライブ》で攻撃! その効果で、互いに手札を捨てる——が、この時革命2で、僕は捨てたカードが闇のクリーチャーならば場に出す事が出来る」

 互いにカードを捨てる。
 もう、《リュウセイ》は手札には無い。
 それはあくまでも、シャノンの手札に、であるが——

「《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》、召喚」



リュウセイ・イン・ザ・ダーク P 闇文明 (8)
クリーチャー:ブラック・コマンド・ドラゴン 8000
闇以外のクリーチャーは、バトルゾーンに出すときタップして出す。
自分の闇のクリーチャーはすべて「スレイヤー」を得る。(「スレイヤー」を得たクリーチャーがバトルする時、バトルの後、相手クリーチャーを破壊する)
W・ブレイカー
自分のドラゴンが破壊された時、このクリーチャーが自分の墓地にあれば、このクリーチャーを自分の墓地から手札に戻してもよい。




 闇以外のカードをタップインさせる漆黒の流星。
 それは、シャノンに返しのターンが無い事を意味していた。
 もう、スピードアタッカーで押し返す事も出来ない。更に、場には多くのブロッカー軍団。
 そうそう破壊しきれるものではない。

「そして、《キル・ザ・ライブ》でシールドをW・ブレイク」
「トリガーは無いよ」

 次にレンは、《テンザン》に手を掛けた。
 そして、そのままタップさせる。

「《テンザン》でT・ブレイク——その効果で、山札から13枚を墓地へ」

 しかし、そのデメリットも今では意味がない。
 このターンで終わってしまえば、関係のない事だ。
 そして、同時にシャノンのシールドも全て割られた。

「トリガー、無いよ。レン」
「そうか。名残惜しいが——これで決めようか」

 レンは手を掛ける。
 自らの信頼する切り札に。
 そして——長いようで、短かったデュエルに、終焉を告げた。




「——《革命魔王 キラー・ザ・キル》でダイレクトアタック」




 ***




「うあー、負けたぁー」
「やれやれ、そっちも相当強かったがな」

 2人は椅子の背凭れに寄り掛かった。
 かなりの接戦であり、もう1歩でシャノンが勝っていたかもしれない試合だった。
 それをレンも認めているのか、溜息をつく。

「流石ライトレイのデュエリストだ」
「えへへ……デュエル、昔から大好きだったからさ。これしか取り柄無いしね」

 こういう時、レンはどうフォローすればいいのか分からなかった。
 そんなことはない、君は魅力的だ、と言うのは口説いているようで嫌だったので却下。
 そのまま、しばらくの沈黙が続く。

「……そう、卑下するな。そんな自虐は日本人しかしないのではないのか?」
「そう、だね……でも、レンも凄いよ。強いし、かっこいいし……優しいし、何より自分の道を信じてる。とても、目が綺麗だよ」
「……こんなに褒められたのは、初めてだ」
「そうなの?」
「ああ。生まれてこの方、な」
「レンだって、もっと自分に自信をもって良いよ。だってレンは——」



「おーう、ジャパニーズのボーイ、なかなか凄いプレイングでしたねぇー」



 会話を遮るように、そんな声が聞こえた。
 見れば、エプロンを付けた店員らしき男性だった。髭を生やしている中年の男性だ。

「あ、店長!」
「この店の、か?」
「イエース、ジャパニーズのボーイ……シャノンは昨日のこの店の大会でも優勝している実力者……まさか勝てるとは只者ではないね?」
「まあ、一応……」
「そりゃそーだよ店長! レンは、D・ステラの日本代表なんだよ!」
「オーウ、ワンダホーウ! それはびっくりデース!」
「何なんだ、この英語……」
「ア、アメリカ訛りが入ってるんだよ、店長……。こういうノリだから、気にしないであげて」
「でも、それだけじゃないですネ?」
「む?」

 店長は笑みを浮かべていった。
 





「例えば——”生きたクリーチャーを持っているとか”——」




 次の瞬間だった。
 店長の手が、シャノンに伸びる——そして、紫電が店内に迸った——