二次創作小説(紙ほか)
- Act4:増殖 ( No.442 )
- 日時: 2016/12/04 16:08
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
「……《ヴェロキボアロス》でダイレクトアタック!!」
「……《ミラダンテ》でダイレクトアタックです!!」
何とか、襲い掛かってきた人達の撃破には成功した。が、このままでは袋の鼠だ。流石に数が多すぎる。
——明らかに、自分の意思で動いているようには見えないわね……。
「とにかく、1人1殺で確実に数を減らすしかないわ!」
「そ、そうですね——」
もう1度身構えて、デッキを握る。迫ってくる人影を蹴散らす為に。
外の状況が心配だ。早く、終わらせねばならない。再びデュエルを始めようとした——その時だった。
「……!?」
ぎゅるんぎゅるんぎゅるんぎゅるん……爆音が地下を揺らす。
肌を痺れさせるような振動、急に焼け付くように熱くなる空気、そして背後から迫る衝撃——それは、地下鉄の線路を爆走し、やってくる。
余りにも一瞬の出来事に目を疑ったが、コトハもホタルも、現れたそれを見て絶句した。
蛇の胴と頭を模した両腕に、女型の機体。そして、それに掴まっている少女がいた。
コキ、コキ、と首を鳴らすと、燃えるように赤い髪を揺らし、少女はホームへ降りる。
そして、迫りくる人影の集団を一瞥した。
次の瞬間、炎の柱がホームを包む。これにより、操られたらしい人々は足止めを食らわされることになる。
「あ、あんたは——確か、コロナ——!」
コトハも、ホタルもしっかりと記憶に焼き付いていた。
鎧龍サマートーナメントを妨害し、学校の屋上でヒナタを屠った音速の侵略者。
その少女が何故、此処に来ているのかは甚だ疑問であったが。
「邪悪龍は、我々の共通の敵だ。その辺を勘違いするな。邪悪龍、もしくはその配下が現れたとなれば、排除しないといずれ脅威になる」
『やっぱり、怪電波を放っているのは、邪悪龍・ケフェウスの下僕らしいね』
「……! ケフェウスを知っているの!?」
「当然だろう。一度交戦したこともあるが、あいつとその使い手はなかなかにクレイジーだ」
落ち着き払った様子でいうが、これは貴重な情報源だ。
彼女はキングと戦ったことがあるのだという。
「キングは、元はテロ集団の一員だったらしい。イカれ度合いはリーダーと負けず劣らずで、とにかく戦闘を好み、世界中のありとあらゆる武器へのコレクター願望も持ち合わせていた。新しい火器を手に入れる度に、捕虜を使って試し撃ちしていたらしいな」
ぞっ、と背筋にムカデが何本か走る。そういえば、中東でゲリラ活動を行っているテロ組織がいるという話を聞いたことがある。
アンカといい、キングといい、邪悪龍の使い手というのは真っ当ではない人物が選ばれるらしい。あれほど凶悪なクリーチャーが、そんな人物たちに渡ったらどうなるか、分かったものではない。
「それが、いつの間にか行方不明になっていたらしい。恐らく、ケフェウスを所持してから勝手に離脱したのだろう。邪悪龍の使い手は徒党を組んでいるからな」
「……」
「そして、ケフェウスはかの英霊王さえも配下に置くほどの知略と狡猾さを持ち合わせた奸邪な龍。人型ではあるが、その本性は巨大な電脳龍。例え、自らが出ていかなくとも、その支配力は強力に働く」
「そ、それが、今のこの状況ってこと!?」
「そうだな。だが、今回の場合、恐らく配下のクリーチャーに中継役をやらせている」
「中継、役——!?」
「ああ。それさえ倒せば、何とかなるはずだが——」
「……何故、それをあたし達に教えたの?」
「今ここで敵対する理由も無い。私が欲しいのは、白陽だけだ。それも、”時が来る”までは役に立たん」
いまいち煮え切らないが、思いもよらない加勢が入ってきた。
「それだけではない。厄介な事に、その中継役の正体はこの操られた人々の中でただ1人が所持しているカード。手当たり次第に倒し、それに当たるまでやるしかない。しかも、時間が経てば経つほど、決闘空間内の被害者は増殖。本来のターゲットが絞れなくなっていく。一度これにやられて、かなり痛い目を見たからな。結局、その時は運よく中継役を倒せたからよかったが」
次の瞬間、炎の柱が消えた。
そして——一気に人が飛んできた。
シールドを展開し、1人ずつ潰していくことに。幸い、一度デュエルを始めれば、結界が現れて乱入が出来ないようになっているので、一対多をやらずには済むが。
「頭数を私が減らしてやるんだ。感謝しろ。そっちは適当に片づけておけ」
『コロナ。デッキを』
「アマノサグメ。頼むぞ」
くるり、と踵を返すとコロナもデッキを握る。そして、不審な挙動のスーツの男を前に、立ちはだかった。
「——さて。どれが中継役かは知らんが、まずは新しいレッドゾーンの力でも見せてやるとしようか」
シールドが5枚、一気に展開された。
画して、デュエルが始まったのである。
***
「——分からんな」
コーネリアの後ろを歩きながら、レンは言った。
シャノンを負ぶったまま、彼女は受け応える。
「何がですか」
「貴様の真意も、そしてそのシャノンの事も、だ」
「……フン、だから言ったでしょう。私は——」
「発言に、いくつか噛み合わない所があるのでな。貴様、咄嗟の嘘が付けないタイプだろう」
「何が言いたいのです? 口数が少ないのを日本人は美徳と思っているのかもしれませんが——」
「論点をすり替えるなよ。今度は、僕が貴様に質問する番だ」
誰も居ないオックスフォード・サーカス。
そこで1人、レンは歩みを止める。咳払いをし、レンは口を開いた。
「何故、結界を破壊した?」
コーネリアも足を止める。
そのまま、その場に沈黙がのしかかった。
「あの結界は、人間には使えない。何か、別のモノに掛ける必要がある厄介な代物で、無関係者を決闘空間から遠ざける為のモノだ」
「……」
「だが、貴様はシャノンの結界を破壊した。そして、本当はこれが防護結界であることも最初から知っていたのではないか?」
「何が言いたいのです? あれは得体の知れないものだったから——」
「そうだ。魔法とは分かっていたはずだ。だが、仮にも武闘先輩が認めた『遊撃調査隊』の1人で、しかも星のカードの所持者である貴様が、何となくでもどんな魔法か本当に分からなかったのか? そして、独断で破壊した理由も分からないな。少なくとも、ビジネス上では武闘先輩に対して誠実な態度をとっている貴様が、先輩に結界について連絡1つ入れなかったのも不審だ。何故連絡しなかったのか。事後でも、事前でも」
あるいは、とレンは続けた。
「——フジ先輩に、シャノンの事について連絡”出来ない”理由があるのか」