二次創作小説(紙ほか)

Act1:接触・アヴィオール ( No.52 )
日時: 2014/11/12 19:16
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)

「僕自身の効果発動。さあ消えなさい!」

 アヴィオールの持っていた本から紫色の光が飛び出て《ニュートン専用パンツァー》は一瞬でスクラップに。
 何が起こったものかとバトルゾーンに目を向ける。カードは墓地に行った。どうやら破壊されたらしい。

「マナ武装7により、僕は相手のクリーチャー1体のパワーを0にすることができるんですよ、クク」
「ちっ、厄介だ……!」

 パワーが0になったクリーチャーは破壊されるしかない。そしてこの効果の厄介なところは、破壊耐性を持つクリーチャーだろうが何だろうが問答無用で破壊できるところだろう。結局のところ、クリーチャーはパワーが0になったら最期、死ぬ。
 
「さらに残ったマナで《特攻人形 ジェニー》を召喚。自爆して貴方の手札を1枚、破壊させていただきますよ!」
「げぇ!?」

 ノゾムの手札が1枚弾かれて墓地へ落ちた。
 しかし、妙だったのはその後のアヴィオールの行動だった。

「しかし、ここで《アヴィオール》のセイバーが発動。《アヴィオール》を破壊すれば《ジェニー》は生き残ります」
「セイバー……?」

 なぜ、今ここで? という疑問がノゾムの中には浮かんだ。セイバーとは、特定のクリーチャーが破壊されるとき、自身を破壊すればそのクリーチャーを守る事ができる効果だ。
 しかし、アヴィオール程の大型クリーチャーがこんな効果を持っていることがまず疑問である。
 だが、そのときだった。

「ですが、ターンの終わりに私の効果発動!」
「は、またぁ!?」

 次の瞬間、魔方陣が現れ、アヴィオールの分身が再び現れたのだ。
 そう。カードの流れだけを見れば、《アヴィオール》が墓地からバトルゾーンに出たということだが---------

「さらにマナ武装で《ニュートン》も破壊!」

 --------つまりはこういうことだった。セイバーで自身を破壊し、ターンの終わりに現れてもう1度能力を使う。
 これがアヴィオールの戦術だったのだ。
 しかし、その代償か、《ジェニー》は山札の一番下に送られたが。



死英雄 竜骨のアヴィオール 闇文明 (7)
クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン/リビング・デッド 7000
W・ブレイカー
セイバー:闇文明
このクリーチャーが自分のターンに破壊されたとき、そのターンの終わりに墓地からバトルゾーンに出る。そのとき、自分の闇のクリーチャーを1体選び、山札の一番下に置く。
マナ武装7--このクリーチャーがバトルゾーンに出たとき、マナゾーンに闇文明のカードが7枚以上あれば、相手クリーチャー1体のパワーを0にする。



 ノゾムは驚愕した。今起こった現象が”毎ターン”繰り返されることに。
 そして得体も知れないものに対する恐怖に囚われる。
 これが闇文明本来の戦い方だ、と言わんばかりの凶悪戦法を前に立ちすくむしかないのだ。

「これは……色んな意味でハメられたか」
「やばいよ、ノゾム! ってことはこっちがクリーチャー出しても毎ターン死んじゃう! しかもターンの終わりに復活するから、次のターンの始めにはもう召喚酔いは解除されてるし!」

 だが、ここは時間稼ぎだ。今どうにかなる手段を持っているわけでもないのだ。
 つまり、切札を引くまでどうにかして敵が攻撃するチャンスを減らさなければならない。

「呪文、《スパイラル・ゲート》ッ! 効果で《アヴィオール》をバウンス! んでもって《ジャバ・キッド》を進化、《超閃機 ジャバジャック》に!」

 どうせ破壊されるのならば殴ってしまおうという考えの元、進化クリーチャーの《ジャバジャック》を召喚し、一気にシールドをW・ブレイク。
 が、しかし。結果的に手札を増やしてしまう。
 アヴィオールのシールド、残り2枚。
 しかし、彼の表情からは余裕すら見て取れる。

「僕のターン」

 この瞬間、ノゾムは戦慄した。何に自分が怯えているのか、全く分からない。分からないが、とてつもない”何か”が自分に襲いかかろうとしている感覚。
 ”本能”。それは人間の動物としての行動水準となるもの。その中でもここで言うのは生存本能だ。
 そしてノゾムの中にあるその生存本能が告げている。
 危険だ、と。


「呪文、《煉獄超技・髑髏方陣》を使用!!」


 恐怖の正体は、見たことも聞いたこともない呪文のカードだった。そしてカードのイラストには骸骨が中央に並べられた魔方陣の上に立ち、鎌を振るうアヴィオール自身が描かれている。
 そして彼がカードの通りに一度鎌を振るうと、次の瞬間。アヴィオールの手札が全て墓地へ。さらに鎌でアヴィオールは切り掛かり、《ジャバジャック》を破壊した。
 爆発した《ジャバジャック》の装甲が飛び散り、頬を裂いた。

「痛ッ!?」

 そして再びアヴィオールの方を向いた。手札が、消えたはずの手札が増えている。

「この呪文は手札を全て捨てることで、捨てた手札の合計コスト以下のクリーチャーのパワーを0にします。そしてその後、手札を5枚補充できるのです」
「な!?」
「ターンエンドです」

 しかし、何故わざわざ手札の自分自身を捨てるような真似をしたのだろうか。
 ミスにしては余りにも幼稚すぎる。
 何らかの回収手段、あるいは自らリアニメイトする手段を持っているのか---------それでも手札が無い状態でそれを狙うのは余りにもリスキーではないか。
 そう考えなければ、ノゾムはそこに立っていることすらままならなかった。
 クレセントも同じだ。
 ここまで相手を恐怖に誘い、惑わすオーラを放つ敵は初めてなのだ。
 同時にそれはアヴィオールの実力さえも示している。
 放つつもりなど無い。が、漏れている。強すぎて、その覇気が漏れているのだ。

「オレの、ターンッ!!」

 力の限り叫んでカードを引いた。こんなんじゃ、ヒナタに笑われてしまう。こんなのだから、クレセントを初めて使ったときも取り込まれたんだ、と自分にムチを打つ。
 そして、引いたカードは-----------

「星の力を身に纏え! 蒼き装甲がすべてを物語る! 現われよ、玉兎の最終兵器!! 《月英雄 碧鎧のルーン・ツールC》!!」

 クレセントだった。
 
「ノゾム、弱気になっちゃダメだよ! あたしが、あたし達クリーチャーが付いてるから!」
「……そうだな」

 --------お前らが居るのを忘れちゃ、デュエリスト失格だよな。

 そしてマナゾーンのカードが7枚、光り輝く。
 それが次々にクレセントの体を纏っていき、脚には更に屈強な装甲が、そして鉄槌は一回り大きくなった。

「行くぜクレセント! マナ武装7発動! 《ルーン・ツールC》の効果で山札からカードを2枚ゲットする! ターン終了だぜ」

 今度はこっちが余裕の笑みを浮かべる。
 チッ、とアヴィオールの舌打ちをする声が聞こえた。
 最初、ノゾムは自分が不利になったことに奴さんが腹を立てたのかと思った。
 いや、違う。
 彼の口が重く開かれた。
 
「舐めてませんかねえ? 少々この僕を。こう見えても生前は”策士”と仲間にまで言われていたほどですから。最も、嘘つきだの卑怯だのという言葉は、僕にとっては褒め言葉ですが」

 次の瞬間だった。墓地に落ちた《骸骨方陣》が光る。


「《煉獄超技・骸骨方陣》の最後にして最期の効果! 今、お見せしましょう!」