二次創作小説(紙ほか)
- 短編1:そして伝説へ……行けるの、これ ( No.63 )
- 日時: 2014/11/14 21:30
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)
***
(1)ピロロローン、勇者は目が覚めた。
1.とりあえず手ェ洗うか→(2)へ
2.とりあえず歯ァ磨くか→(3)へ
3.とりあえず二度寝だぜ→(5)へ
(2)手洗い場にやってきた。あ、石鹸が無い
1.とりあえず水だけでも良いよね(5)へ
2.とりあえず買いに行くかな(4)へ
(3)洗面所にやってきた。あ、歯磨き粉がない。
1.とりあえずそのままでも良いよね(5)へ
2.とりあえず買いに行くかな(4)へ
(4)オカンに足りないものを買いに行くと伝えた。
オカン「まあ、朝から買い物? 気をつけてね、コンビニは北の洞窟を越えた先にあるから」
(6)へ
(5)残念、君に冒険を続ける資格は無い、GAMEOVER
(6)北の洞窟へやってきた。何と、ボーンスライムが襲い掛かってきた!
攻撃(7)へ
防御(8)へ
逃走(9)へ
「ストップ、ストップ、ストォォォーップ!!」
と、目覚めたヒナタの第一声はこれだった。今時のティーンズは知らないのではないだろうか、ゲームブック。あ、でもよく小学生ころ、図書館に古いけどそんなかんじの本があったなー、懐かしいなー、と感傷に浸る作者。
実は案外知ってる人も居る感じ?
「何でゲームブック形式!? 読者の皆様にもゲームを味わって貰おうって腹!? この小説の対象年齢の中学生、これ知ってるの!?」
『ツッコムな。俺様からのありがたぁぁぁーっい、アレってやつだ』
「アレって何!?」
天の声のつもりか、聞こえてきたのは主犯・武闘フジの声だった。
はっきり言って、ここで出てきたが100万年目、文句の1つ言ってやろうかと思ったが、今彼に機嫌を損ねられてゲームの情報を教えて貰えないのも困る。ヒナタは仕方なく口をそこで噤んだ。
『あらすじだよ。これからお前がすべきことを簡潔に述べた。ゲームブック形式で』
「まさかコンビニまで石鹸と歯磨き粉買いに行くのが目的なのか、このゲーム!! しかも今のゲームブック、ものっそい完成度が低いと見た!!」
『そしてこのゲーム、”キング・デストロイ・クリムゾン”はカオスを全面的に押し出した最高のゲームだ』
「わざわざ押し出していくスタイル!?」
『シナリオを考案したのもこの俺だ。ちなみにシナリオは、この先多くの試練を乗り越えていき、最終的には主人公が世界を揺るがす魔王と戦うというものだ』
「そりゃそうだよね!? 何で北の洞窟の先にコンビニがあるんだよ、おかしいでしょ! つーか無駄に壮大なんすよ!!」
『β版だからだ』
「そういう問題じゃないでしょうが!!」
『とりあえず、家から出ろ。話はそっからだ-------』
ぷつん、とそこで声は途切れた。仕方がねえな、と言わんばかりに自室を出ることにするヒナタ。
まあ良いか、とりあえず出よう---------とノブに手をかけて回し、部屋を出た。
そこにはあたり一面に広がるダンジョン。鍾乳石に《ボーン・スライム》などのクリーチャー。さっきも出てきたけど、こんなところでデュエマっぽさ出すとかどうかしてんの? と思い、一度戸を閉めた。
「……」
もう一度あけた。そこには、あたり一面広がるダンジョン---------
「いやいやいやおかしい! 自室を出た瞬間ダンジョンってどういうことよ!! 最初っから試練ってことかよ!!」
『ああ、そうだ。部屋から出た瞬間、ダンジョンって燃えるだろう?』
「燃えませんよ! むしろ冷や汗たらたらだよ!」
『ちなみに今のお前の装備はパジャマと武器の丸めた漫画本だ。生身で戦ったら死ぬぞ』
「ちょ、ちょぉー!? 何この鬼畜使用!?」
これでどうやって戦えという話である。とりあえず、武器屋に行く前に死にそうな勢い。どこをどうしたら自宅がこうなるのか。軽く実家がモンスターだらけである。
こんな世界を行きぬけというフジは鬼か悪魔か。
とヒナタが嘆いたそのときだった。
『安心しろ、お前には召喚獣を呼び出す能力が備わっている』
フジは、くくっ、と含み笑いをした。召喚獣--------と、ヒナタが考えていると、1つ思いつくものが。
そうだ、白陽だ。白陽がもしかしたら呼び出せるかもしれないのだ。ペルソナみたいに。またはスタンドみたいに。
「何なら簡単だ、いくぜ召喚獣ーッ!!」
再び扉を蹴っ飛ばし、ダンジョンに踏み出して早2秒。
早速召喚獣を呼び出さんとばかりに手を上に突き出すヒナタ。
しかし、何も出てこない。気づいたら、目の前に変なものが。
『コマンド?
▼攻撃
防御
召喚
逃走』
「ってそっちかい!!」
まさかの手動コマンド操作になろうとは思いもしなかった。しかも、この▼。動かすのがすごく面倒くさいのである。重いし固い。動かない。
そうこうしている間に《蠢く者 ボーン・スライム》が奇声を上げて襲い掛かってくる。世間で知られるスライムとは程遠い気持ち悪い姿。これ、家庭用ゲームで出さないほうが良いよね、と思ったヒナタだった。
危機一髪のところで▼を”召喚”のコマンドに合わせた。
「くそっ、今度こそ出て来い召喚獣ゥーッ!!」
ヒナタの拳が赤く光り、そして目の前に魔方陣が現れる。
そこから現れたのは-------------
「……どもっす」
---------見たことも無いおっさんだった。
作業着着て眼鏡掛けたただのおっさんだった。
「何だこれ」
『主人公Aタイプの初期召喚獣:ただのおっさん、だ。』
「いらねえよ、こんなの!! ファンタジーの欠片もないよ!!」
『ちなみに白陽はレベル7で召喚できるようになる。今お前はレベル5だからもうチョイがんばれ』
「それまで、ただのおっさんでがんばれ、と!?」
まあ、そういうことになるよな、じゃあねー、とフジの声が消えた。そして今にも首の頚動脈を掻っ切らんとばかりに飛び掛ってきたボーン・スライム。
ああ、やばい、早速ゲームオーバーか!? と思ったそのときだった。
「おっさんパァーンチ!!」
バキィィ、とおっさんの拳がボーン・スライムを直撃した。
その様を見たヒナタは開いた口が塞がらない。
「おっさんキィーック!!」
ガスッ
「おっさんファイナルボンバーッ!!」
ドゴォーム。最後におっさんがボディプレスを決めてその戦いは終結した。ボーンスライムはそのまま、消えた。
読者の皆様も何があったか分からないであろう。しかし今、確かにただのおっさんがクリーチャーをやっつけたのだ。
「また何かあったら、呼べよ、少年」
野生のアナゴボイス(ブルァァァで有名な人)で一言残し、おっさんは油でテカる頭を向けて、そのまま去っていった。
その様子をヒナタは最後まで、口をあけてみていた。
「……ぶっちゃけ、白陽いらないかも」
油でテカる頭を後ろから見つめながら、彼はそう呟いたのだった。