二次創作小説(紙ほか)

短編1:そして伝説へ……行けるの、これ ( No.64 )
日時: 2014/11/15 14:41
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)

 そのままおっさん無双で多くのクリーチャーを片付けたヒナタは、洗面所に行く頃にはレベルは7になっていた。

『ヒナタ レベル7
HP:43
MP:20
攻撃:1(プークスクス)
防御:1(テラワロスwwww)
カーソルの動かしやすさ:12(おっそ、マジとろいわ〜wwww)
装備
パジャマ
丸めた漫画本』

「とりあえず俺の能力がクソなのは分かったわ」

 生身で戦うな、と言っているのだろう。腹立つ。
 しかも何でステータス欄にコメントがわざわざ付いているのだろうか、腹が立つ。
 ちなみにカーソルの動かしやすさ=このゲームでの行動速度、らしい。もう突っ込むことすら疲れてきたヒナタであった。
 さて、洗面所にきたが、歯磨き粉がない。仕方が無いので北の洞窟越えてコンビニへ行くことが今の目的である。
 まずは外に出ねば、とヒナタは家の玄関の扉に手を掛けた---------
 
 ***

 外は普通のファンタジー風の街だった。中世風のそんな感じだ。それでこの世界観でコンビニとかどうかしているのではあるまいか。
 さて、人に話を聞いたところ、こんな話が出てきた。

「お前、まさかコンビニに行くのか!? やめておけ、命知らずにも程があるぜ」
「おいお前。コンビニに行くのならばやめておけ。死ぬぞ」
「コンビニ? あそこに行ったやつは誰一人生きて帰ってきていないって話だぜ」

 -----------って、どんだけぇー!? コンビニに行くまでの北の洞窟に何があるんだよ!?
 そんなシャウトは瞬く間に消えていったのだった。
 北の洞窟。北の洞窟に一体何があるのだろうか、と軽く戦慄を覚えるヒナタだった。
 -----------いや、これ最初のダンジョンだよな!?
 不安になってきたヒナタは、いよいよ呼び出せるようになった白陽を、今此処で呼び出すことにした。
 
「出て来い、白陽」

『コマンド?
▼攻撃
 防御
 召喚
 逃走』

「いや、もう良いんだよ、それは!!」

 いちいち出てくるコマンドに怒りを覚えながらも、”召喚”にカーソルを合わせる。
 ああ、もうクソゲーじゃないか、という諦めを覚えながら。
 そして白陽は案の定出てきた。ああ、よかった。あのおっさんが出てくるのはもう懲り懲りだ。

「おっ、出てきたな、白陽!」
「うむ……私は?」

 今、意識が目覚めたらしい白陽は瞼を擦って言った。だが、服装はいつもの陰陽師の服から一転、まるでドラクエの勇者のような格好だった。
 冒険服に銅の剣、そして盾。お前の方が主人公やってるんじゃないか、という勢いだった。

「何だ、この服は!!」
「この世界観に合わせたっぽいな。だけど、このゲームに世界観もクソもあんのか?」
「そうか……では、この格好ということは私が勇者でここに転生したという設定---------」
「いや、お前はただの召喚獣。転生して現世に復活したところまでは本編と同じだけど。つーか何で勇者の着てんだこいつ。召喚獣の癖に」

 白い目でヒナタは見ていた。 
 すると白陽は口を開く。

「そうか。だが、今の私は”覚悟”で満ち溢れている」
「何言ってんだこいつ」
「絶対にお前と元の世界に戻るからな!」
「とか言ってお前……」

 呆れた目でヒナタは白陽を睨み付ける。
 
「何だ、私はやましいことは1つも考えていないぞ?」
「クレセント可愛いクレセント可愛いクレセントマジ天使、ハァハァ、クレセントと脱出できるなら、こんなアホ置いていって良いや、つーか私ただの召喚獣とか無いわー、こんなアホの召使とか無いわー」

 突然、ヒナタは読み上げるように言葉を発した。
 白陽の顔が一気に青ざめていくのが分かった。

「ギクリ、なぜ私が考えていたことが分かるんだ」
「それに書いてあるからてめぇの思ってることなんざ全部筒抜けだってことだ」

 あ、と今更気づいたかのように足元を見下ろす白陽。そこには、よくある台詞が書いてある長方形のアレがあった。
 そこに白陽が考えていたことは全部書かれていたのだった。

『クレセント可愛い、クレセント可愛い、クレセントマジ天使、ハァハァ、つーかクレセントと脱出できるなら、こんなアホ置いていって良いや、つーか私ただの召喚獣とか無いわー、こんなアホの召使とか無いわー』

 とばっちり書いてある。

「ぎゃあああ!!」

 テキストボックスに書いてあった台詞が自分の考えていたことと一致していて、思わず悲鳴を上げる白陽。怒りに声を震わせるヒナタ。

「おいテメェ、こんなときにもクレセントのことばっかじゃねえか、何発情してんの、気持ち悪いんだよ、あーん?」
「ち、違う、私は無罪だ」

 とか言っておいて、よだれが垂れている白陽。

「つーか地味に俺のことも貶してるしよ?」
「違うんだー、私はいつも、そして今日もクレセントのことなんか1mmも考えて」
「いるじゃねえか、いっつものことじゃねえか、本編もう一回読み返すか、ゴルァ!!」

 今にもヒナタの聖拳気合パンチが白陽の腹に襲い掛かる一歩手前だった。

「ヒナタ先輩ーッ!」

 と、バイオレンスの1秒前、そこで声が聞こえた。それも聞き覚えのある声だ。
 振り向けば、そこには既に戦士のような姿に着替えたノゾムの姿が。

「お、ノゾム! 無事だったか」
「このゲーム、マジでやばいっすよ先輩! 朝起きてすぐにモンスターに追いかけられるハメに」
「あー、お前は起きた場所が既にダンジョンだったのね」

 はは、と苦笑いで返すノゾム。よくゲームオーバーにならなかったものである。

「クレセントがいたんで、助かりましたよ」

 すると、素早い動作でカーソルを”召喚”に合わせて、魔方陣を呼び込んだノゾム。しかし、その動作は一貫しており、ヒナタのようにのろのろしていない。
 その手馴れた様子に少々驚くヒナタ。

「いや、何でそんなに手馴れてんの、ノゾム」
「レベル上げってやつですよ、はは。カーソル動かしやすいです」
「レベル上げ!? お前もしかしてエンジョイしてないか、この状況!!」

 と言う間もなく、クレセントが現れた。

「マジカルマジカル〜、宇宙一可愛い魔法少女のクレセントちゃんの登場〜!」

 台詞、服装、共に魔法少女になっていたが。何かフリルがついたドレスに三角帽子、そして杖とか完全にあれである。

「ノゾム、どうしたんだコレ」
「えーとですね、ダンジョン(自宅)の途中に『僕と契約して魔法少女になってよ』とか言ってきたやつが居たんで」
「それアカン奴や」

 完全にその台詞に覚えがある。どこまでカオスを追求したら気が済むんだ。

「でも、オレ男ですからねー、だからクレセントを魔法少女にしてあげたんですよ。必殺技は
『もう何も怖くない(クレセント・フィナーレ)』」
「使った直後に頭を食われて死にそうな必殺技だよ。つーか何その中二病丸出しのルビの振り方」

 と、ふと横を向いてみれば、クレセントと白陽が話していた。
 
「ねえねえ、白陽? これ可愛い?」
「ああ、最高だ……可愛いよ」

『クレセントは白陽を誘惑している! 白陽はどうする?
1.押し倒す
2.抱きつく
3.そのままお持ち帰り』

「クレセント、ちょっと良いか?」

 と白陽が彼女に迫ったそのときだった。

「アウトォーッ!!」

 バキィ、と今度こそヒナタのハイキックが彼の脳天を叩き割らんとばかりに炸裂した。
 痛みに悶絶して地面で転げまわる白陽。呆れた目を向けるヒナタ。

「てめぇ、この超健全小説で何するつもりだった? 4つ目の選択肢は俺にボコられるってことでいいな」
「いや、そ、それは。私はやましいことなんか1つも」
「じゃあさっきの選択肢は何だぁー!!」 

 痛い痛い痛い、ぎゃぁぁぁ、と馬鹿狐の断末魔が響き、その場は静かになった。
 とまあ、こんな感じで4人は揃ったのだった。
 かなり不安が残るパーティではあったが。