二次創作小説(紙ほか)
- 短編1:そして伝説へ……行けるの、これ ( No.65 )
- 日時: 2014/11/24 17:07
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)
「良いか、俺たちはパーティだ。協力してこのダンジョンを進もう、ブルブル」
「実際は2人しか居ませんけど。つーかびびりすぎですよ」
北の洞窟を進むヒナタとノゾム。しかしヒナタの方はさっきからこの肌寒さに少々不気味さを感じていた。
すると、こつん、とヒナタは何かが足に当たったことに気づく。
見てみれば---------「ぎゃあああ」と驚き、腰を抜かした。骸骨だ。それも白骨化しており、倒れている。
すると、他にも声が聞こえた。
見てみれば、立ち入り禁止のロープを張る警官、周辺の岩に白い粉を塗して指紋を調べている青帽子の鑑識の姿。
そして中年太りした山高帽子の男とスーツの痩せ型の男が話をしていた。
「マグレ警部、我々はとんでもない思い違いをしていたようです」
「成る程、青酸カリで毒殺か、カタギ君!」
---------って、このゲームのジャンル何ィ!?
明らかに前作の短編から持ってきたとしか思えない2人の男。
---------名探偵何ナンだよこれは! つーか今までの流れで明らかにモンスターの仕業だろ!? つーか白骨化してたら青酸カリ毒殺って分かるもんなの!?
すると、コマンドが出てきた。
『ばしょいどう
ひとにきけ
ひと しらべろ
なにかみせろ
ひとさがせ
よべ
たいほしろ
ノゾム「先輩、どうしますか?」』
「っていきなりコマンドのタイプ変わったよ、何トピア連続殺人だよ!!」
「うるさいですね せんぱい」
「てめーまで台詞をファミコンスペックに落とさなくて良いんだよ!!」
いつもはボケているヒナタだが、このゲームのやりたい放題っぷりに付いていけないようだった。
すると、カタギが声を上げた。
ヒナタ達も気になって振り向き、カタギの言葉に耳を寄せた。
「警部! 被害者の衣服からこんなものが!」
「何!? 『犯人はヤス』だと」
「おそらく、彼を取り調べれば万事解決でしょう!」
---------ネタバレしちゃったよ!! つーか、ヤスって誰だよ!!
アホみたいな展開に付いていけない。どこまでパロディ元に忠実にするつもりなのだろうか。
すると、再びカタギが声を上げた。
「警部! 被害者のスマホからこんなメッセージが!」
スマホ、と聞いてヒナタ達は今度こそ、と思って聞き耳を立てる。
もしかしたら有力な情報が得られるかもしれない、と。
「何!? 『犯人はヤス』だと」
「おそらく、彼を取り調べれば万事解決でしょう!」
---------何回繰り返すんだよ、このやりとり!!
好い加減、飽きてきた。とっとと通ってコンビニへ行こうとヒナタとノゾムはそこを通り過ぎようとした。
と、再三カタギが声を上げる。
またヤスか、と諦めてスルーしたそのときだった。
「警部! 被害者のネックレスからこんな手紙が!」
「何!? 『犯人はヤス』だと」
ずっこけた。3度目は変化球で来るかと思っていたが、まさか違ったとは。
本当に真直線でくるな、と思った。
と、そこで4度目のカタギ刑事の台詞が。
「警部! 被害者のズボンからこんな手紙が!」
「何!? 『フライゴンのメガシンカまだ?』だと」
「……」
---------いらねえよ、そのメッセージも!!
此処で今更くるか、変化球。
そして、刑事は未だに黙ったままだった。
「……」
---------つーかお前も何か返事を返してやれよ!! 哀れすぎて泣けてくるよ!
突っ込み疲れたヒナタは地面にへたり込む。すると、マグレ警部が駆け寄ってきた。
「モリ君、君は此処で何をやっているのだね!」
「いや、モリ君じゃないんですけど俺」
「そういえば、顔の形が大分違うような……」
「いや気づけよ!」
「それはともかく、一般人は立ち入り禁止だ!」
あ、やべ、とヒナタは後ずさろうとした。今此処で事情を聞かれるのは、はっきり言って時間の無駄である。
と、思って逃げようとしたそのときだった。
『ギッシャアアアア!!』
声が聞こえた。それも、化物の声だ。
警官達が逃げ惑っていく。そして声の主が姿を現した。
「《深淵の悪魔龍 バセオアビス》、か」
蠢く何かを思わせるような風貌、混沌と邪悪に満ちた根源の姿だった。
「てめぇか、こいつらを殺したのは!」
『ギャハハハハ、そのとーりぃ! だってさ、台本にそう書いてあるし。つーかこの骸骨、俺に殺されたって設定の置物だし』
「って、それ言っちゃダメだろ!?」
この多くの白骨死体と町の人の声。やはり、洞窟の奥に居たこいつの仕業としか思えない……ということにしておこう。
「警部、私たちはとんでもない思い違いをしていたようです」
カタギの言葉で、ようやくマグレ警部は自らの過ちと判断ミスに気づいたようだった。
そして、大して重くはない口をゆっくりと開いた。
「……成る程、青酸カリで毒殺かカタギ君!」
「好い加減アンタは青酸カリから離れろォー!」
叫んだのはヒナタではなく、カタギ刑事だった。
やっぱりNPCは学習しなかった。AIの学習機能が欠けてるのではないだろうか。
もういい、こうなったらノゾムと一緒に戦うまでだ。
「いくぞ! ノゾム!」
「了解ッス、先輩!」
互いに魔方陣を展開し、バセオアビスに向かってそれぞれの相棒を繰り出した。
「いくぜ、白陽!」
「出て来い、闇よ世界を覆いつくせ、魔界から現れし漆黒のドラゴンよ、その姿を今此処に! 暗黒の龍王 バハムート!」
「……は? 今、何ハムって言っ----------」
とりあえず、俊殺はおろかコンマ秒殺だった。ノゾムが召喚したと思われる暗黒の龍王 バハムートによって吐かれたブレスはバセオアビスを跡形も無く消し去ったのだった。
無論、白陽の出る幕など無く。
「……ノゾム、今お前レベルどんだけ?」
「へ? 90っすけど?」
「はぁぁぁ!?」
「クレセントがー、クレセントと戦えるという私の幻想がー」
「お前黙れ」
と、そのときだった。ドット状に欠けた場所から、穴が出来る。
『あ、やべ。バグったっぽい』
フジの声が久々に聞こえる。今の騒ぎでどうやらバグったらしかった。
『おい、ノゾム。お前があんなにレベル上げなんかすっからじゃねえか。バグってワープゲート出現しちゃったよ。まあ良い。その先は魔王の城だ。時間短縮だと思って早よ入れや』
「え、マジっすか!?」
はっきり言って、普段ならばいきなり魔王の城に行くのは危険だが、今はノゾムがいる。
これならば、すぐに現実世界に帰還できるかもしれない。
『更に言えば、そのワープゲート。魔王の部屋の入り口に続いているらしい』
「マジっすか、よし入るぞ、ノゾム!」
ヒナタがノゾムの手を引っ張ったそのときだった。
「嫌です」
「え?」
「そんな楽してゲームに勝って、先輩は楽しいんですか?」
「ちょ、おま」
それ、人のこと言えないよね! と突っ込む間もなく。
「そんなの……ジェンガを積み上げるよりも簡単じゃないですか!」
「や、だから落ち着けってば」
「バハムート! ついでにそのワープゲートも壊しちまえ!」
あくまでもゲームを楽しもうとするノゾムはバハムートに命じて在ろうことか、ワープゲートの破壊という暴挙に出た。
此処まで来れば、もう誰も彼を止められやしないだろう。
ここで死ぬくらいなら、ワープゲートなんかくれてやる、とヒナタは間一髪、バハムートが放ったブレスを避けたのだった-----------
***
私は魔王。名前はまだ無い。β版だからだ。勇気ある冒険者が、幾多もの困難に立ち向かい、我が元に来るのを楽しみにしている。
多くの冒険者が私の元にやってきた。
しかし、誰としてこの私に勝てたものはいない。誰か! 誰か私の餓えを止めてくれ!
強者は、強者はいないのか!
今まで、魔物に囲まれて豊かな生活を送ってきた。しかし、私の餓えは今まで一度も満たされたことは無いのだ。
それが私の唯一の悩みだ。
ついでに中学生の頃に告白したらフラれたのがきっかけで女性が苦手になってしまったのも悩みだ。
***
「なあ、ノゾム。バハムートのブレス、おもくそワープホールに吸い込まれていったけど」
ワープホールは壊れなかった。それどころか、バハムートの炎の吐息を吸い込んでしまったのだった。
これ、魔王死んだかなー、と思った。
ノゾムの目が死んでいた。
「……」
「だ、だけどよ! これは俺たちの人生懸かっていたんだから!」
すると、フジの声が聞こえた。
『ざんねーん、魔王は死んでません』
え、と2人の間に衝撃が走った。もうこの人から青酸カリで毒殺してやろうか、と一瞬浮かんだ。
しかし、フジの言葉が続いた。
『でも、魔王は失墜しました』
「え?」
2人の間に疑問が走る。
『何であれ、これでゲームクリアーだ。良かったな元の世界に出してやるぞ。パフェもたっぷりおごろう』
「いや、でも-------何で」
『良いから、エンディング流すぞー』
ポチッ、という音と共に2人は映し出された映像に見入った。とりあえず、ようやくこれで元の世界に戻れる喜びをヒナタは噛み締めていた。
そして、しばらくして--------意識が現実に戻ったヒナタ達は無事に帰還できたのだった。
***
そして私にはもう1つ、たった今できた悩みがある。何だよ、悩み1つじゃねえのかよ、と突っ込まないでほしい。魔王にだって悩みは10個くらいはある。うそつき、とか言ったって私魔王だし。悪の根源だし。
さて、好い加減言おう。コレの所為で私は涙が止まらない。
さっき、いきなりドラゴンの炎ブレス的な何かが飛んできたのだが魔王は生憎俊敏だ。そんなものすんでのところで避けた。しかし、大きな代償を残してしまった。何か。それは------------焼けて頭が丸々ハゲたことだ。
(完)
***
「つーわけで、魔王が失墜した理由は”ハゲたから”だ」
「じゃねえでしょう!! どんだけ豆腐メンタルなんだよ魔王!!」
元の世界に戻ったヒナタは絶叫した。ここは武闘ビルの研究ルームだ。
まあ、まあ、とフジが嗜める。
『コマンド?
▼パフェをおごってもらう
フジ先輩を称える
フジ先輩を賛美する』
ここで遂に全員の怒りが爆発した。
かぽっ、とフジの頭に例のヘルメットを被せる。コードが繋がっている範囲ならば、椅子に座っていなくてもバーチャル空間に入れることができるのだ。
電源スイッチを再び押した。
「ちょ、おまあああーっ!!」
フジが絶叫した。そして、その声は聞こえなくなった。
ゲームの中でマップに放り出されたフジが画面から叫ぶ。
『てめぇら……! 俺がこのゲーム作ったんだぞ! とっととクリアして』
「先輩。人がゲームにもぐってる状態で主電源OFFにしたらどうなるんすか?」
『え? そりゃ中の人が閉じ込められ--------』
ぎゃあああ
最後に断末魔を残し、しばらくフジはゲームの中に眠ったまま封印されることになったのだった。
残念、フジの冒険はここでストップしてしまった。GAMEOVER
「さあ、帰ろうぜ」
「先輩! パフェおごりますよ!」
「すまねえな。うお、もう6時かよ!」
「はくようー! だいすきー!」
「うわ、此処で抱きつくな、恥ずかしい」
今日もまた、社会のアホを処理し、ヒナタ達は帰り道へ進むのだった。
余談:ちゃんとこの後フジは助かりました。