二次創作小説(紙ほか)
- Act4:怨炎・アヴィオール ( No.68 )
- 日時: 2014/11/24 20:37
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)
叫んだアヴィオールの全身からは骨の刃が飛び出した。正に全身凶器。抱きつかれただけで死にそうだ。流石にこれではクレセントも近づけない。
それだけでなく、奴には鎌もある。ぶんぶん、とそれを振り回してくるので、回避に回るしかない。
トラック会社の屋根の上に飛び乗って一度距離を取るが、敵もどんどん迫ってきた。
「ほらほらほらぁっ!! どうしたんですかぁーっ!? さっきまでの勢いはぁぁぁ!!」
「っこんなのアリィ!?」
とっとと殺っておくべきだと思ったが、後悔先立たず。
つぅーっ、と鼻の先を鎌の刃が掠めた。
冷たい感覚が体全体を襲う。
ぷつん、と音を立てて血が垂れたのが、はっきりと嫌なほど解った。
「良いですねェーッ!! 滾ってきましたよォ!! 体全身が生きていた頃と同じように暖かく燃えている、ははははは!!」
三日月を背にしてアヴィオールは勝ち誇ったように笑った。
私の勝利だ。ついでに、あの邪魔な狐も殺してしまおう、と。
「死になさァァァーッい!!」
鎌をクレセントの方に振り下ろす----------しかし。
鎌は振り下ろして数10cmのところで動かない。
クレセントは刃を片手で受け止めていた。
ビキビキ、と音を立てる鎌。みちみち、と音を立てて血を流す右手。
慄くアヴィオール。
気張るクレセント。
「あたしはこんなところじゃ、まだ死ねない……!! あたしはまだ死ぬわけには行かない!!」
バキィッ、と音を立てて鎌の刃が完全に砕け散った。
「な、何て馬鹿力だ……、ここまでとは----------!!」
「クレセント、ここにいるのかーっ!!」
声がした。
クレセントが見た方向にはノゾムの姿が。少し、意地悪げに彼女は言ってやった。
「今更何しに来たのよ」
「オレはもう、二度とお前を手放すなんて言わない、オレの相棒はお前しかいねえんだ、クレセント!!」
「ノゾム……」
何かこそばゆいような、そんな感覚が彼女に走った。
かああ、と頬を赤くすると吐き捨てるように言う。
「馬鹿、最初っからそう言えばいいのに!」
ぴょい、とノゾムの元に飛び降りて、アヴィオールと向き合う。
「どうして此処が分かったの?」
「何となく、だ。お前がオレを呼ぶ声が聞こえたんだ」
「や、やだっ、恥ずかしい」
「うっせぇやい。だけど、これで奴を決闘空間に引き込めるぜ」
アヴィオールは再び魔力で新しい鎌を生み出すと、ノゾムの方へ飛び降りた。
くくく、と不気味な笑みを浮かべながら。
「どうもどうも、これはこれは。先ほどはよくもやってくれましたね」
「強いオーラ……てめぇが本体か」
怒りに満ちた瞳でノゾムは返した。
「その通り。ようやく本来の姿を取り戻したといったところです。ゾンビのままであることには変わりないですが」
「なら、今度こそ思う存分テメェをぶちのめせる訳だな」
ギリッ、と歯を食いしばって彼はアヴィオールを睨み付ける。
「御託は要らねえ、とっとと始めるぞ! 決闘空間開放!」
ノゾムのデッキケースから黒い霧が溢れ出て辺りを包み込んだ----------
***
「僕のターン、《ブラッディ・メアリー》召喚」
ブロッカーを出して場を整えるアヴィオール。現在、3ターン目先攻・アヴィオール。
シールドはまだ共に5枚だった。
「オレのターン! 《アクア少年 ジャバ・キッド》召喚! 効果で山札の一番上を見て、それがリキッド・ピープルならば手札に加える!」
山札の一番上のカードは《龍覇 M・A・S》。即、手札に加えた。
「ターン終了だぜ!」
ほほーう、とアヴィオールは顎に手を当てて呟いた。
しかし、直後。
「さあ、そろそろ行きましょうか。まず、《ボーン踊り・チャージャー》でマナを加速しつつ、山札から2枚を墓地へ」
ターン終了です、と言って彼はターンを終えた。未だ動きを見せないところが余計に不気味だ。
「オレのターン。ここは《アクア・ハルカス》を出してカードを1枚引き、ターン終了だ!」
「では、僕のターン。5マナで《超次元 リバイブ・ホール》を使います。そして墓地から《怨炎の骸骨星 アルゴ・アヴィオール》を手札に加えますよ」
さらに、それだけではない。超次元呪文が詠唱されたことによって、超次元への門が開いた。
現れたのは蒼き龍だった。
「《勝利のリュウセイ・カイザー》召喚! 効果で相手はマナゾーンにカードを置く時、タップして置かなければいけませんよ、ククク」
「くっ……!」
「ターンエンドです」
まずい、テンポアドバンテージを取られたことで1歩遅れて動くことになってしまう。
マナゾーンのカードをタップして置かなければいけない。これはかなりの痛手だ。
「くっ、オレのターン! 仕方ねえ、ターン終了だ」
「どうですかぁ、身動きが取れない気分は。それでは僕のターン。《勝利のリュウセイ・カイザー》でシールドをW・ブレイク!」
龍の炎によってシールドが2枚、吹き飛んだ。
その破片がノゾムに突き刺さる。
「くっ、今ので来たぜ……! オレのターン、《アクア隠密 アサシングリード》召喚! 効果で、《勝利のリュウセイ・カイザー》を超次元ゾーンへ逆戻しだ!」
《アサシングリード》の科学暗殺法により、《リュウセイ・カイザー》の体は一瞬で超次元ゾーンの彼方へ飛ばされていった。
さらに。
「《ジャバ・キッド》でシールドブレイク!」
「くっ、通します」
「《アクア・ハルカス》でシールドブレイク!」
「ブロック、《ブラッディ・メアリー》でブロックしますよ!」
女の人形は《アクア・ハルカス》の放った斬撃を受け止めるが、爆発。しかし、直後に首が飛んで行き、《アクア・ハルカス》の首を食いちぎったのだった。
「効果でバトルに勝っても《ブラッディ・メアリー》は破壊されます」
何とか、ブロッカーもサイキックも削れた、と一息ついたノゾム。
しかし、現実はそう甘くは無かった。既にアヴィオールは準備を整えていた。
ノゾムの息の根を止める準備を。
「僕のターン、7マナで僕の分身・《怨炎の骸骨星 アルゴ・アヴィオール》を出します」
「何だ? あれが奴の真の姿か」
「当たらずとも遠からず、でしょうか」
はぁ? とクレセントは抗議した。
「ちょっと、さっきそれが真の姿だって言ったじゃない」
「実際には、もう一段階あるのですよ----------クカカカ、まず僕の効果により、超次元ゾーンより”コスト5以下のステラアームド・クリーチャー”を呼び出します」
次の瞬間、再び超次元への門が現れた。
そして、影を纏った龍のようなクリーチャーが中から飛び出してきた。
「我が使い魔、《悪夢喰種 アルゴリズム》をバトルゾーンに!」
「な、何だそりゃ!?」
驚きを隠せないノゾム。それもそのはず、いきなり全く新しいタイプのクリーチャーがバトルゾーンに現れてしまったからだ。
さらに。
「《悪夢喰種 アルゴリズム》の効果発動。このクリーチャーがいる限り、相手のクリーチャー全員のパワーを-2000します」
「げっ!?」
毒の霧が《アルゴリズム》の口から放たれる。その毒気にやられたのか、《ジャバ・キッド》と《アサシングリード》が一瞬で倒れて破壊された。
パワーが0になったクリーチャーは破壊されるしかないのだ。
「さらに、ターンの終わりに2体以上のクリーチャーが破壊されていた場合、《アルゴリズム》の真の効果が発動します!」
アヴィオールの骸の奥の赤い瞳がぎらついた。そして、《アルゴリズム》の体から無数の触手が伸びて、アヴィオールを包み込む。
「星の力を身に纏い、今、此処に現れん!」
まるで新たなる鎧のように。
そして、アヴィオールの体が霧に包まれた。
目の前から忽然と姿を消してしまう。
逃げたのかと思った。
いや、違う。この気配は確かに近くにいる、とノゾムは確信する。
「アハハハァーッ!!」
刹那、轟音が轟き、背後から何かが飛んできた。身をかがめる。そして、通り過ぎ去ったほうを見れば、そこには禍々しい姿をした”何か”がいた。
骨のみの翼が背中から生えており、さらに醜く変形した骸骨。
そして、全体的にフォルムはさらに龍へ近くなっていた。そして、全身から黒い触手が伸びている。
ノゾムは確信した。これがアヴィオールの真の姿だと。
「---------星芒武装、完了」
おぞましい姿を見せながら、彼は続けた。
「さあ、最後の晩餐の準備は整いました。覚悟は良いですか-----------?」