二次創作小説(紙ほか)

Act1:記憶×触発 ( No.77 )
日時: 2014/12/13 16:45
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 ***

「しっかしなー」

 しばらくしてやって来た、フジは血だらけで伸びているニャンクスを見て言った。

「ダイレクトアタック1回で沈むオラクル教団のクリーチャーとは一味違うわな。何度も《ガイグレン》の攻撃食らったんだろ? にも関わらず生きていた。こいつぁ強ぇ」
「すいません、やっと頭が冷えました」
「ま、何があったかなんざ俺は知らんがね。あ、ノゾムは部屋で寝かせておいた」

 フジはヒナタを気遣う様子など1mmも見せず、しゃあしゃあと言うと、続けた。

「さて、うちの会社に大損害与えてくれたこいつはどーするか。保健所にぶち込む訳にもいかねぇし。しばらくどっかに閉じ込めておくか---------」

 とニャンクスの首筋に手を掛けたそのときだった。
 ざくり、と布の切れる音と共に、フジの腹から血が吹き出た。

「-------げほっ」

 前のめりに倒れるフジ。すぐに駆け寄るヒナタ。見れば、ニャンクスはまだ動けるようだった。
 あんなにダメージを与えたのに、何故!? とヒナタがその方向を見た瞬間だった。
 丸薬だ。ニャンクスの手に丸薬が握られている。その丸薬が小さくなって消えた。そして、手の爪には真新しい血が垂れていた。
 フジは爪で腹を切り裂かれたのだ。ニャンクスに。

「俺様の”能力”で作り出した薬は口から摂取しなくとも、肌から吸い込まれるようになってるにゃ。俺様が服用したのは回復薬。おかげさまで動けるまでにはなったにゃん」

 それでもぜぇ、ぜぇと息を切らしてはいる。

「薬でもこれが限界か、まあ良いにゃ。しばらくこの街に潜んでやるのにゃ!! 寝首を掻かれないように気をつけるこったにゃ! にゃーははは!」
「こいつ-----------!!」

 ばっ、と飛び出したニャンクスの姿は、霧のようなものに包まれて消えた。
 その様子を見るなり、ヒナタは「白陽、頼む!」と叫ぶが、返事がない。
 見れば、隣の白陽もぐったりと倒れていることに気付く。

「おい、しっかりしろ、白陽!」
「私の体では--------やはり、無理だったか-------」

 煙が彼の体を包み込むと、子狐の姿になっていた。

「しっかりしろ、白陽!! おい、白陽ォーッ!!」
「おい、馬鹿ヒナタ。俺様の心配は」

 げほっ、と苦しそうに息を吐き出したフジの言葉など、ヒナタには届いていなかった。
 無論、怒った先輩の拳骨が彼に飛んできたのは言うまでもないだろう。
 
 ***

「参ったね、こりゃ」

 フジは自分の部屋に戻るとどかっ、と自分の椅子に倒れこんだ。

「俺含む2人が負傷、1匹がぐったり。あいつの所為でこんなにされるとはね。安易に油断して首根っこ掴んだ俺様も悪いか」
「武闘先輩、今ハーシェルの能力で手当てをします!」
「ああ、淡島。頼む」

 ふぅーっ、と息を吐いたフジはすぐさま再び激痛に体を震わせることになった。
 無闇に腹を動かしてはいけないようだ。が、それもすぐさま消えていった。傷口から肉芽が生えてきて、繋がっていく。
 さて、白陽は倒れたまま未だに目を覚まさない。
 ノゾムも額に傷を作ったまま気絶している。

「完全に、やられた、ってわけですか」
「奴はこの街に潜んでいると言った。いつ、どこで襲われるか分からんね」

 ***

 結局、敵の居場所など本当に欲しい情報は何一つ手に入らなかった。次回襲われるまでに白陽の意識が戻っていれば良いのだが。
 頭に絆創膏を貼っつけたノゾムがその箇所を摩りながらホタルと話しているのが分かる。
 が、その内容などヒナタには興味のないことだった。
 ---------あの状況で超技呪文を使わなきゃ、俺は負けていた。ニャンクスに対抗するには、超技呪文を扱えるようになるか、あるいは--------

「ノゾム。割って入るが、確かお前の《ルーン・ツールC》は」
「こんなカードに進化しました。オマケに気付いたら超次元ゾーンにこんなものまで」
「んあ? 良く見たらこいつ、種族が変わってるじゃねえか」



上弦の玉兎星 クレセント・ニハル 水文明 (7)
クリーチャー:ムーン・ラビー/クリスタル・コマンド・ドラゴン 7000
L・コア
W・ブレイカー
このクリーチャーがバトルゾーンに出たとき、超次元ゾーンからコスト5以下のステラアームド・クリーチャーをバトルゾーンに出しても良い。
マナ武装7:ターンの終わりに相手のクリーチャーを2体選ぶ。そのクリーチャーはタップされ、次のターンアンタップできない。


「しかもご丁寧にマナ武装まで付いていやがらぁ」
「うわ、確かに」
「あ、見せてください!」

 うわぁ、とホタルも声を上げたのだった。相手のクリーチャー2体を条件付とはいえ、ターンの終わりに凍結。
 単体でもなかなか強い効果である。

『ちょっとー、みんな寄ってたかって……恥ずかしいじゃんか』
「ああ、すまねぇ」
「俺たちも、もっと強くならねぇといけないな」

 空を仰ぎ見て、ヒナタはふと呟いた。

 
「-----------早く帰って来い、ドラポン。こっちは大変なことになってるぜ」


 ***

「月神様の札が姿を変えたか」
「ああ、そうだ。じいちゃん」

 居間でノゾムは祖父・龍三にクレセントのカードを見せていた。
 
「だが、このままじゃいけない。さらに上に向かわねぇと。デュエマも、剣道も」
「分かっているなら良い」

 龍三はクレセントのカードを見て呟いた。
 

「考えれば、月子が死んでから何年経つかのう」
「けっ、知らねぇよ夫婦仲良く事故であの世に行った両親なんざ」
「わしはお前を強く、そしてたくましく育てて来たつもりだった」

 ふぅ、と息を吐くと彼は続けた。

「だが、お前はいっつも最後は自分の力で成長してきた。それに気付いておるか?」
「馬鹿言え、じいちゃんが居なきゃ今のオレは居なかったさ」

 ---------それに、今日だってオレは何にもできなかった。もっと強くならねぇといけない。
 クレセントもカードの中で、こくり、と頷く。

「そこでだ」

 突然、立ち上がった祖父をノゾムはびっくりした目で見た。


「稽古をお前に少し付けてやろう。剣道では無い。こっちだ」


 祖父の手には------------デッキケースが握られていた。