二次創作小説(紙ほか)
- 短編2:てめーが不幸なのは義務なのであって ( No.97 )
- 日時: 2015/10/17 12:46
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 7hpoDWCB)
「ちょっと、そこのお兄さん?」
唐突に話しかけられた黒髪の少年は、ふと足を止めた。
吊った目に、中世的な容姿の彼は迷惑気に振り返る。今から学校に行く途中なので、遅刻するのは困るのだ。もたもたしては居られない。実際は、まだバスまで10分ほど余裕があるが、彼の心に余裕はない。
「……何でしょう?」
「ちょいと、占いをしていきませんかねぇ、ふぇっふぇっふぇ」
笑うのは、小さな机の上に水晶球を乗せたローブに身を包んだ老婆であった。しかし、「占い」という言葉で少年は不快そうな顔を浮かべた。
----------占いだと? ふざけるな。最近の運勢など分かりきっている。本編での扱い、戦跡、キャラのブレ、その他諸々。不運、大凶、毎日仏滅(ブッディ・バニッシュ)とはこのことだ! 知らん。こんなことに付き合っている暇は-----------
「お兄さん。最近、自分が不幸だと思っていませんかねぃ、ふぇっふぇっふぇ」
レンは繰り出そうとした足を止めた。振り返り、老婆と目が合う。
***
一通り、それっぽい占いをして貰った後であった。
やはりというべきか。老婆曰く、自分には常に「凶気」が纏わりついているようなのだった。
曰く。ゼロ文明から、急に闇文明に使用文明を変えたからなんだとか。
-----------馬鹿らしい。何でデュエマが関係あるんだ? 僕が何文明使おうが、僕の勝手だろうに。
当然ながら、そう思うのが普通の反応であろう。まして、レンは生半可な覚悟で闇文明に転向した訳ではないのである。深い理由がこれにはあるのだ。
そう思っていた矢先、老婆は、1つのペンダントを懐から取り出す。それには羽十字のアクセサリが付いていた。
「-----------そこで、これを使ってみんさい」
レンの中には、いよいよ懐疑的な気持ちが生まれていた。嗚呼、非常にうっとおしい。
悪質マルチ商法だか何だか忘れたが、いよいよ気味が悪くなってきた。
「断る。払うのは占い代だけだ」
「ふぇっふぇっふぇ、押し売りとは失敬な。金なんて、取りはせんよ」
レンの言葉をさえぎり、老婆は続けた。終始不気味な笑いをとめない。
如何わしさがマックスになったレンは、占い代の300円を手渡し、とっとと立ち退こうとした。
幾らタダでも、貰っていいものと悪いものがある。嫌な予感しかしない。自ら災難に突っ込んでいく程、レンは馬鹿ではないのであるというか、むしろ理知的な彼からすればごもっともな判断であった。
----------僕は、あの馬鹿2とは違うんだよ、馬鹿2とは。
「さあ、行くか----------」
ペンダントを首からぶら下げ、レンは踵を返して学校へ----------
---------あれ?
行く前に足を再三止めた。おかしい。いつの間にか、首に例のペンダントがぶら下がっていたのだ。
おい、と老婆を問い質そうとするが、既にそこには蒸発したかそれの姿は無くなっていた。
……まったく、気味が悪い。それをすぐさま捨てようとする。ポイ捨ては後味が悪いので、そこらのゴミ箱の中に-----------
ぐいっ
「---------?」
おかしい。捨てられない。首からペンダントが離れないのである。無理矢理強く引っ張って引っ剥がそうとしたが、ビリビリッ!! と電撃のようなものが迸り、思わず手を離してしまった。
「ば、馬鹿な、そんなことがある訳が-------------------」
***
「……というわけでだな」
家庭訪問の日だからか。今日の鎧龍血決闘学院は午前中授業であった。あっちゅうまに放課後になり、下の階のロッカーへ向かう階段を降りる途中で、レンはヒナタに今朝の事を相談していたのである。
まったく気味が悪いとはこのことであった。ペンダント自体は、ぶら下げていても怪しくない、普通の物だ。
しかし、何やら嫌な予感がするのである。
「つーか、既に300円騙し取られてんじゃねーか、それ」
「300円はこの際、どうでも良いだろう!」
「うまい棒30個も買えるのに? あー、勿体ねーことしたな、お前」
「いやいや、どうでもいい!!」
ま、どっちにせよ、とヒナタは続けた。
「そのペンダントが怪しいことには変わりねえな」
「ったく、早く外したいところだ」
「それと、幸運のペンダントってそのばーさんは言ってたんだろ?」
「ああ」
それなら、とガサゴソとヒナタはカードケースから紙の束を取り出した。
どうやら、パックのカードらしかった。
「幸運と言えば、さっき学内カードショップで6パック買ったところ……見てくれよ」
「-------------はぁぁぁぁ!?」
それは、にわかに信じがたかった。
恐ろしい引き運としか言いようのないような、カードの並びであった。
一言で言うならば、スーパーレア”以上”が大量。いずれも、ヒナタのデッキにマッチしたものであったから、恐ろしいことこの上無く。
「……此処まで引き運が良いと、ちょっと不気味になってくるよな?」
「ば、馬鹿な……うあああああああ!!」
「レン!?」
早速レンも学内のカードショップに向かって、全速力でダッシュを始めたのであった。
-----------あれが幸運のペンダントならば!! 僕にもスーパーレアが当たるくらいは許されても良い筈だぁぁぁ!!
「おい、ちょっと待てレン!! くそっ、余りにも非現実的な光景を見て頭のネジが吹っ飛んだか」
***
---------結果。どよ〜ん、とレンは学院のベンチで不幸オーラを漂わせながら、沈む結果になった。
まさか、全敗するとは誰が思ったであろうか。スーパーレアは愚か、ベリーレアでさえ1枚も来ないなんて。
意気込んで特攻していった自分が恥ずかしくなってくる。ばしばし、と励ましてるつもりなのか、レンの背中を叩くヒナタ。
「嗚呼、どういうことだ、これは」
「不幸のペンダントだったんじゃねえか、それ」
「それはもう大体察していた」
しかし、このペンダントが悪い物だとして、これを唯の”不幸のペンダント”と言い切るのは些か安易すぎる気がした。まだ、何かが隠されているようにしか思えない。
はぁ、とため息をついたその時であった。
「あ、ヒナター! レンー!」
む、とレンが顔を上げると、そこにはカバンを片手に持ったコトハが賭けてくるのが分かった。ヒナタも「おー、コトハ!」といつも通り元気良く返したが、生憎レンはそれどころではなく。
「ねえ、ちょっと聞いてよ……。今日、ドギラゴンを6パック買ったんだけど」
「お前もか? 実は俺---------」
「見てよ……ベリーレアとかスーパーレアとかこんなに-----------」
『お前もかあああああ!?』
レンとヒナタは2人一斉に声をあげた。そして、ず〜ん、とレンはいよいよ落ち込んでしまったのだった。
「どうしたの? 何かあったの、レン」
「あ? 何か変なペンダントを押し付けられちまったみてーでな。しかも、呪いの装備だか何だか知らんが、外せないみてーなんだ。パックを買っても絶賛大不調だったからな、コイツ」
「嗚呼、馬鹿な……」
「何か……ごめん」
いや、すまない、とレンも返し、立ち上がる。何であれ、こんなところで足踏みしている暇は無いのだ。
とっととペンダントを外さねば。そう思って、一歩踏み出したそのときであった。
ずるり
何か、嫌なものを踏んだ感触とぬるぬるが靴底から伝わってくる。
----------ば、馬鹿な!! これは------------
レンが気づいたときには既に遅し、であった。
「で、何が当たったんだ?」
「これよ。しかも、あたしのデッキに超ぴったりなのよ---------」
「うわあああああああ!!」
絶叫が聞こえた。またレンが発狂したのか、と振り返るヒナタであったが、そこには-----------
「回る回る回るおげええええええ」
回転しているレンの姿があった。まるでバナナの皮を踏んだかのように、つるつる”滑って”いる。いや、足元を見れば本当にそこにはバナナの皮があった。ベタか。
そのままこちらへ接近してくる。
「おいいいい、どうするんだ、これえええ!! バナナの皮踏んでこうなるとか、洒落になってねーぞ!!」
「そんなこと言われても!!」
次の瞬間だった。「どわい!!」と声を上げて、レンが弾かれたように飛び出してくる。
彼の手は、いつの間にか何故かコトハのスカートに置かれており。
ずるり
そのまま、明らかに”脱げた”音と共に、乙女のデッドゾーンである”それ”が露になる。
まあ、つまり、何が言いたいかって--------------露になったのは彼女の下着であった。
地べたにそのまま顔を打ち付けたレンには”まだ”見えてはいなかったが。
「げほげほっ、全く不幸な-----------」
「レ……ン……?」
「おほっ、ナイスだレン。当分は困らないな、これ」
「オイ、何に困らないって-----------え?」
そういえば、自分は何を掴んだのか思い出す。布。これは、スカート……。
そのまま彼が上を見上げると、そこには白い絶景が広が------------
「馬鹿!! 変態!! 死ね!!」
---------る前に、顔面を真っ赤にした彼女の、鞄によるスマッシュヒットで彼の思考は途切れたのであった。