二次創作小説(紙ほか)
- 短編2:てめーが不幸なのは義務なのであって ( No.98 )
- 日時: 2015/06/17 19:09
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
***
「……レン、大丈夫か?」
「……ごめんっ! 本当にごめん!」
気が付けば、レンはベンチに寝かされていた。水で濡らされたタオルが額に置かれていた。
未だに頭が痛い。がんがんする。目を開ければ、そこにはヒナタとコトハの姿があった。
コトハの眼は潤んでいた。
「----------う、ぐ、僕は……」
「あ? バナナの皮踏んで滑って回転して、そのままコトハのスカートを脱が----------」
ゴスッ、と色々危ない音と共にヒナタの脳天に鞄が叩き込まれたが、気にしないでおこう。
「本当、ごめん!! ヒナタならともかく、レンはわざとそんなことしたりしないって、分かってるのに、あたし、つい……」
「オイどういう意味だ、人を変態呼ばわりすんじゃねえ」
「何、コトハが謝ることは何も無い」
「ううう……レン優しい……」
「しっかしよー」
ヒナタが腕を組んで言った。
「ようやく”幸運のペンダント”としての効果を発揮したって感じだよな-----------」
バキッ
ドギャッ
「あんたは黙ってなさい」
「無自覚とは言わさんぞ、このド変態が」
「あい……すいませんでし……ぐふっ
いや、みな言う前に2人の鉄拳が炸裂したが。
***
「……で、どうするんだコレ」
レンは不幸、不運な目に遭うのに対し、他の面々はどんどん幸運とも言える場面に遭遇している。
つまり、このペンダント。
「お前の幸運を吸い取っているっていうか、放出してるんじゃねえか?」
「い、いやいやいや!! まさか、そんなハイスペックな代物ではあるまい! 大体、それを何故僕に-----------」
「だけどね。あんた以外にも居るらしいのよ。そのペンダントを貰ったって人が。ほら、見てこのツイート」
「うーむ……」
レンは頭を抱えた。そこには、自分と同じ目にあったと思われる人のツイートがあった。これは他にもあった。
まさか、そんなことがある訳がない。本当に自分の運が放出されているというのか。
まず、試してみたところ、鋏で紐は切れなかったというか、謎の力で弾かれてしまった。
結論。やはり、これにはとんでもない力が宿っているのであろう。
「とにかく、これは早急にどうにかしなければ-------------」
「おい、レン」
「む?」
「そこ、階段------------」
時既に遅し。余所見をしていた所為で、正門の階段を踏み外したレンは、そのまま「うおおおああああ」という絶叫と共に転がっていく。
それを追いかけるヒナタとコトハ。レンはボールのように、その先の下り坂を転がっていた。
「おい、あれ見ろ!」
ヒナタがコトハに声を掛ける。見れば、下り坂の先には何やら大筒を引っさげた少年たちの姿が。
大筒の口径は、丁度人が入るくらいだった。
「あれ、”人間大砲同好会”の連中じゃねえか!」
「初耳なんだけど!? 何その危なそうな連中!」
「武闘財閥が開発した”高圧発射装置”で空を飛ぼうとしてる危険な連中だ、と言いたいところだが、装置自体が人を飛ばすことを前提にしてるからな」
「また武闘財閥ぅぅぅ!?」
と、次の瞬間であった。転がっていたレンが、そのまま弾み、大筒の中にはいってしまう。
よろよろ、と大筒、いや高圧発射装置から顔を出したレンだったが、かぽっ、と頭に何かを被せられたのが分かった。そして、体に何かが取り付けられるのも分かった。
どうやら、装置の機能の1つで、入ったら自動的にヘルメットと安全スーツが取り付けられる仕組みになっているらしい。
「良いかぁぁぁぁ!! 我等人間大砲同好会は、今日も”安全に””楽しく”ぶっ飛ぶぞおおおお!!」
「おおおおおお!」
「それでは-----------まず、空砲をどーん!!」
「ぐはあああああああああ!!」
次の瞬間であった。
大筒から、激しい衝撃と共に彼が飛んでいくのが見えた。
「レエエエエエエン!!」
「あ、あれ、どこに向けられたんだ?」
嗚呼、哀れなり。そのままレンは、何処かも知らない方向に向かって飛ばされていったのだった。
「あれ? 今誰か飛んでいったような」
「おい、あんたら今何処に向けて撃ったんだ!?」
「いや、だって空砲のつもりで撃ったし……」
まずいことになった。いよいよ不運もエクスタシーに達してしまったようであった。
***
「はくよう……きす、シよ?」
とろり、と蕩けた眼を向けてくる彼女に、白陽は興奮を隠せないで居た。普段が無邪気なだけに、服を纏っていても彼女のしぐさ1つ1つが扇情的に見えてしまう。
それぞれのデッキからこっそり抜け出し、ヒナタの家で2人っきりに---------という作戦は見事に大成功であった。いや、あのヒナタとノゾムだから然程気にしてはいないか。
それはともかく、だ。据え飯食わぬは陰陽師の恥というものではないか。
目の前の彼女が誘っているのだ。そのまま、体を抱き寄せ唇を奪う。
「……んっ……はくよう、狼さんみたい……」
かああ、と自分の顔が赤くなっていくのが分かった。もう我慢できない、そのまま彼女の服に手をかけ----------
「ぐはああああああああああああああああああああああ!!」
----------る前にバリイイイン、と何かが割れる音が鳴り、何かが窓から突っ込んできた。ガラスが飛び散り、部屋は酷い惨状に。
「ぐ、ぐはあ、いたたたた……ヘルメットが無ければ即死だった……ん?」
レンは顔を上げる。そこには、陰陽師の服を纏った二足歩行の九尾と、黒いタンクトップと半ズボンを纏った人型の白兎が居た。
あ、やべ、確かこいつらヒナタとノゾムの相棒の----------
「おい、貴様……よくも私達の邪魔をしてくれたなオイ」
「折角、良いムードになっていたのに……!!」
「げほっ、いやすまなかった。僕も好きで飛ばされた訳では------------」
「「ならもっかい、飛んでけぇぇぇぇ!!」」
問答無用。2人の時間を邪魔された怒りは尋常ではなく。
白陽の神通力で体を窓に固定され、そのままクレセントの鉄槌がバキィッ!! と音を立てて自分を野球のボールみたく打ったのが分かった。そのまま再び、青い青い空へ----------
----------嗚呼、空はこんなにも青いのに------------
※ギャグでなければ死んでいました。良い子の皆さんは、くれぐれもこの2人(いや、2匹? 2体?)がいちゃいちゃしているのを邪魔しないように。
その頃、部屋では怒った顔でクレセントが出て行こうとしていた。
「白陽! あたしもう帰る! 盛り上がってたのが冷めちゃったもん!」
「そ、そんな……ま、待て、誘ったのはお前---------」
「うるさいうるさいうるさい! 白陽の馬鹿! むっつりスケベ!」
「がーん……」
***
「全く、酷い目に遭った」
「あの後、また大筒の中に戻ってくるもんな、お前」
「で、どうしてもう1回飛ばされてきたのよ」
「貴様とノゾムのペットの邪魔をしてしまってだな……酷い目に遭った」
「あー、お前俺んちに突っ込んだのか」
----------つか、後でしばくかあのリア獣。
本当に、ギャグで無ければ死んでいたところであった。皆もくれぐれも人間大砲なんて真似しないように。
「あれ?」
ふと、着信音が鳴る。見れば、メールのようだった。
「送信元は?」
「待て、確認するぞ……あ」
「またこの人?」
レンは何となく察したような声をあげた。
「------------送信元は武闘先輩だ」