二次創作小説(紙ほか)
- 短編2:てめーが不幸なのは義務なのであって ( No.99 )
- 日時: 2015/06/19 18:19
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
「----------今回お前らに来て貰ったのは、他でもない。向こうの世界からやってきた”犯罪クリーチャー”の討伐だ」
武闘ビルの中にあるオフィス。そこに佇み、既に社長のような風格を醸し出すは、どう見ても次期社長には見えない次期社長の天災、武闘フジであった。
前回のような私事から、今回のような重要な件まで。彼が後輩のヒナタ達を呼び出す理由は多々あった。
「ヨミなどの件も見れば分かると思うが、豊富な資源、大量の目覚める前のカードのクリーチャー達。それを狙い、向こうから地球にやってくる敵性クリーチャーは珍しくない。現にドラポン達が急に居なくなったのも、未だ混乱の続く向こうの世界を静めるためだ。現在、アウトレイジとオラクルの連合軍、そして”とある軍勢”との協力をしているものの、上手くいっていないようだ」
「あの野郎……俺に一言言えば……!」
「そうよ! こっちだって大変だけど、あたし達にもできることがあるはず!」
「……お前たちを巻き込みたくなかったんだろう。奴らの気持ちも汲み取ってやれ。しばらくは帰って来れないらしい。俺は、《マキシマム・ザ・マックス》を向こうに度々送り込み、情報を搾取……ゲホゲホ間違えた、集めて貰っている」
「おい、この人今おっそろしいこと言ったぞ」
それはともかく、とフジは続けた。
「そのクリーチャーの主な悪行として、幸運のペンダントと称した”散幸ペンダント”を配り、持ち主が不幸な目に遭い、逆に持ち主の周りの人物がどんどん幸運な目に遭う場面を見せつけて二重苦を味わっているところを見て内心ほくそ笑んでいる、というものだ。しかも、持ち主の半径3m圏内に居る奴も不幸になる、というとんでもねえ代物でな」
3人は黙りこくった。散幸ペンダント。まさしくヒナタの思ったとおりの効果であった。それに加えて、まさかそんな効果まであるとは思わなかったが。
-----------なんつー趣味の悪ィクリーチャーだ……。
-----------となると……レンが不幸な目に遭っていたのは……。
-----------……。
「んあ? その様子だと、その中の誰かも被害に遭ったみてーだな」
***
「成る程、ねぇ。まあ被害者に選択肢が無かった、なんてのは良くある話だ」
一通り話を聞いたフジは、うーむ、と唸った。そして、至って真剣な面つきで問うた。
「ところでヒナタ、レンがコトハと事故ったときの写真は撮ってるかって痛い痛い痛い」
コトハが、ぐぎぎぎと明らかにやばい音と共にフジの頭を掴んでいるが、気にしないでおこう。あの後、ばっちり写真は撮ったヒナタであったが、当然ながら然るべき制裁とデータ削除の応酬を食らったのだった。何この主人公。最早、犯罪のレベルである。
それはともかく、今ヒナタ達がやるべきこと。それは、散幸ペンダントを押し付けているクリーチャーを見つけ出し、何が何でも討伐することであった。
「……しっかし、参った。折角、現役女子中学生のパン-----------おぶぇっ、げほっ、じゃなかった、敵の居場所が全く掴めん」
「そうですね。折角、同級生のパン-----------おぶぇっ、げほっ、じゃなかった、敵の居場所が全く分からないんじゃ、倒しようが無い」
「貴様らギャグでやってるのか知らんが、いつか死ぬぞ。頭蓋陥没で」
その原因がコトハの怒りの鉄槌であることは言うまでも無く。貴様の中に先輩の威厳もへったくれも無いフジも含まれていることは言うまでも無く。
そこでだ、とフジは切り出した。
「----------てめーの相棒の狐の出番だ」
***
「……」
「……」
「……」
「……」
4人は黙りこくっていた。ヒナタは確かに、白陽を連れてきた。しかし。
当の白陽はカードの中でずっと蹲っており。
『あー、うー、そんな馬鹿な……私のプランが……』
「おいどうしたテメェ」
『おのれえええ、どれもこれも貴様の所為だ黒鳥レエエエエン!!』
「ちょ、いい加減にしろ、僕は何にも悪くないぞ」
大体察した残る3人は、嗚呼、と頷いた。そういえば、レンはさっきヒナタの家に突っ込んで、白陽とクレセントの邪魔を(何がとは言わないが)してしまったのだ。何故、クレセントが居なかったのか、という質問についてだが「怒って帰ってしまった」とのこと。まあ当然、怒りの矛先はレンへ向けられるだろう。
そして直後。カードから槍を取り出して飛び出した白陽の尻尾を思いっきりヒナタが握った。それはそれは、恐ろしい握力であった。
全リア獣に向けた怨念のパワーが詰まった”握撃”であった。そして、妖気が抜けてチビになった白陽をぶら〜んとぶら下げて、鬼の形相で睨み付ける。傍から見れば動物虐待のそれであるが、クリーチャーであるから何の問題も無く。
「調子乗んなよ、テメェ。誰が人ン家でやって良いっつった。盛ってんじゃねえよ、どいつもこいつも。あーあー、浮かれちまってよー」
「痛い痛い痛い!! もげる!! 尻尾がもげる!!」
「良いから、テメェの能力でなんやかんやして、クリーチャーの反応を炙り出しやがれ!!」
「分かった、おろして! 手ェ離してくれ! 動物虐待反対!」
「駄目だね。このまま探知しろ。さもなきゃ尻尾とベロをちょん切る。てめーに選択肢はねえ」
「そ、そんなぁぁぁ〜」
というわけで、白陽の能力を使って、海戸に現れたクリーチャーの反応を探ることになったのだった。
***
「ううう〜、白陽に絶対嫌われちゃったよぅ、白陽は悪くないのに」
「あー、何があったか知らねーけど、泣くなクレセント」
「おっかしいな……白陽にあんな言い方するつもりは無かったんだよ? でもなんか、勝手に口が------------」
ノゾムに泣き付くクレセント。先ほどの事を相当後悔しているようだった。
----------口が勝手に?
しかし、彼女の発言からは少し違和感を感じた。
「うえええええん、のーぞーむー、ぎゅーしてよー、辛いよー」
「……大変だ、本当……」
はぁ、と溜息をついた彼は天井を仰いで言った。
「ぶっちゃけ、オレ今回出番全く無いよね?」
と、あからさまなメタ発言をノゾムがしたそのときだった。
「ノゾムさーん! ちょっと来て下さーい!」
玄関から、甲高い少女の声がする。
その声から考えられる名前を、思わずノゾムは呼んだ。
「ホタル……? 何しに来たんだろ?」