二次創作小説(紙ほか)
- ピース4:真空波 ( No.10 )
- 日時: 2014/10/14 19:00
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)
ガキィィン、とガブリアスの爪とリオの拳がカチ合ったのが見えた。くそっ、砂埃が舞って目に入るぜ。いつもは前髪に掛けているゴーグルを付けるか。
ガブリアスが低く身体を構えた。そして、爪を地面に打ち下ろす。
そして何度も地面を叩き付け始め----------いや、違う。あれは穴を掘るの体勢だ。地面を下に掘り始めたのだ。
「ははは、やっちまえガブリアース! そのガキをぶちのめしちまえ!」
一瞬でガブリアスの姿は土煙に飲まれて見えなくなる。
ちっ、どこに行ったのか分かりゃしねえ。
いや。まだだ。まだ方法はある。
目に見えないなら----------
「リオ、目を閉じろ!」
----------波動で感じるんだ!!
明鏡止水の精神で心を研ぎ澄まし、一瞬のザワ付きを見つける。
それがルカリオという種族の戦い方だ!
ガタガタ、と地面が揺れた。
そしてどこにヤツがいるのかが分かる。揺れる木の枝のごとく、どこにいるのかはっきり分かる。
リオの眼がカッと開いた。
俺も確かに感じた。敵の気配が。
「リオ、足元に来るぞ! シャドークロー!」
次の瞬間、俺の指示通りリオは飛び上がっていた。そして足元へ飛び出してきたガブリアスは攻撃が掠りもしなかったことに驚いたのだろうか。動きが鈍る。そこに影の爪を叩き込んだ。
さらにそこへ蹴りを加えて、止めの体勢に入った。
と、そのときだった。
ガブリアスの様子がおかしい。まるで狂ったかのように腕を叩き付け始めたのだ。
「ひゃはは、チョーカーの力がようやく”完全”に効いてきたか!」
「あ?」
「やっちまえ、ガブリアス!」
バチバチ、と黒い電流を身に纏ったガブリアスがじりじりと近づいてくる。
ふと、ミオの声が聞こえた。
「ふにゃあ……あたしは何やって……ってライガ君!? んでもって”黒き翼軍”の隊員!?」
どうやら目が覚めたらしい。さらにガブリアスを目に留めて叫ぶ。
「しかもガブリアスがライガ君のルカリオと戦っている!?」
「おーい、目ェ覚めたか。このガブリアスはなあ、ヤツの作ったチョーカーで操られていたんだ! というか、”黒き翼軍”って何だよ」
「知らないの!? 今、イッシュ地方を騒がせているテロリストグループよ! ポケモンの強奪から改造、その他諸々! 考えられる悪事なら全てやる、まさに悪党よ!」
「悪い、自分から聞いてなんだが、おわぁっ!? 今説明聞いてる暇無いんだわ。しかも俺ニュースとか見ないし、おばばば」
ガブリアスの爪が目の前の地面をえぐった。思わず飛びのいた。
石が転がり、砂が舞う。
「止められるもんなら止めてみろぉ、てめぇみたいなガキに止められるもんならよぉ!」
「おいおっさん、俺がこんなヤツ止められると思ったか?」
脚を地面に叩き付け、何とか体勢を整えて叫ぶ。
止めるのは俺じゃない。
「何のためにポケモンがいるんだって、話しだろうがよ! リオ、はっけい!」
「うっぜえええーな、本当によォ! このチョーカーで洗脳したポケモンはより強くなるんだ! ただでさえ強いガブリアスがもっと強くなるんだ、勝てるわけねえだろ、分かるだろうがァァァン!?」
「勝てるよ、って言われた試合じゃねえとやらねえヤツには逆に分からないだろうな。例え勝てないって言われたとしても、絶対にどっかに突破口はあるんだ、ポケモンバトルだって例外じゃねえ!」
リオの転んだ身体がもう一度起き上がった。
まだまだ、行けるよな!
「はっけい!!」
リオの手がはっきりとガブリアスを捉えた。
そして、バチッと気合をエネルギーを貫通させる。
それでも尚、ガブリアスは再び起き上がって吼えた。そして地面を爪で----------叩き割る。
おいおい、こんなに強かったっけ!?
さらに一瞬でリオと間を詰めて頭突きした。怯んだリオを狙い、尻尾で弾き飛ばす。
さっきよりも2割り増しで凶暴になっている気がする。
「ひゃーはっはっは! 突破口があるんじゃなかったのかァ、クソガキィ!」
仕方ない。一か八かの賭けだが、あれを使うしかないか。
「リオ、”あの技”だ。行けるか?」
こくり、とリオは頷いた。
この技はまだ未完成。成功したことが一回もない。
それでも、こうなった以上はやるしかない!
「リオ、まずはヤツを怯ませろ!」
「無駄だって言ってんだろうがぁぁぁ!」
ガブリアスの刃がリオの胸めがけていく。しかし、振り向き様に蹴りを浴びせ、もう一度はっけいを喰らわせる。
それが一瞬の隙となった。
「リオ、今だ! ”真空波”!」
この瞬間、空気の刃がリオの拳から放たれた。それがガブリアスの身体を切り裂いていく。
チョーカーもそのときに切り刻まれ、バラバラになって壊れた。
そしてガブリアスはそこに倒れた。
「な、何で」
「あんなに何度もはっけいを喰らっていて、麻痺状態にならねえ方がおかしいだろ。途中でチョーカーで強化されてたから、微妙に動きが鈍っていたのに気付かなかった、違うか」
「こ、こいつぅぅぅ!!」
倒れたガブリアスと仲間を尻目に隊員は後ずさった。
そのとき、鶴の一声。
洞窟に声が響いた。
「そこまでだ」
声のしたほうを向けば、この部屋の入り口に人が立っていた。
ミオが驚いたように叫ぶ。
「ア、アゲハ!?」
「誰だよ、だから」
「黒き翼軍の幹部の1人……それが何で此処に!?」
アゲハと呼ばれた男の風貌は奇妙なものだった。つーかアゲハとかいう名前の癖して男なのかよ。
筋肉質な身体に黒いコートを羽織っており、額には蝶のタトゥーが入れてある。
瞳は無機質で異様なまでに冷たい。まるでゴミでも見るようにさっきまで叫んでいたおっさんと倒れているもう1人に目を向けた。
「ア、アゲハ様ァ!?」
「我々が求めていたものは此処には無い。にも関わらず、何を遊んでいるのだ?」
「は、ははは……」
「チョーカーの損失の分、貴様ら2人にはきっちり罰を与える」
なーるほどな、ヤツが幹部ってことは--------この場でぶちのめせば黒き翼軍について何か分かるってこったな!
「おい幹部さんよ、随分とまあ弱っちい組織なんだな、黒き翼軍ってのは」
「……なるほど、貴様か。この2人を倒したのは。チョーカーで強化されたガブリアスを相性さえも跳ね除けて伸したのか」
「ガキに負けちゃいけねえとは思わねえのか?」
ちょっと挑発してみる。だけどアゲハって野郎は1mmも表情を変えない。
「私に喧嘩を売っているのか?」
と無表情で威圧してきた。
「いーや別に。ただ、アンタもついでにブチのめせねえかなぁーってな!!」
「む、無茶よライガ君!!」
ミオが止める声なんかガン無視して「行け、リオ!」という俺の声と共にリオがアゲハをめがけて走り出した。
だが、アゲハもモンスターボールをもっている。
それを投げた。
「少しあいてをしてやれ、カイロス!」
中からはクワガタともアリジゴクとも見て取れるような……何だあれ。
まあ良いか、とにかく虫が出てきた。
虫のポケモンが。
「黒き翼軍、幹部。蟲使いのアゲハ。その実力を見せてやろう」
『ポケモンDETA
カイロス:くわがたポケモン
概要:羽根がないので飛ぶことはできないが、腕で木には登れるため、樹上での生活に長けている。とてつもない怪力を持つ上に2本の角はとても強く、一度挟んだが最期、相手がちぎれるまでもう離さない。ただし、寒さには弱いため、冷え込む夜や冬は地中に穴を掘って暮らす。
体力:C 攻撃力:S 防御:A 特攻:D 特防:C 素早さ:B
要注意技:フェイント、シザークロス、はさみギロチン
危険度5』