二次創作小説(紙ほか)

ピース6:ガートと最初の3匹 ( No.13 )
日時: 2014/10/19 17:59
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)

 セキュリティー・イッシュのビルはヒウンシティの北大通りに位置している。頭を包帯でぐるぐるにした俺とミオは早速そのビルの前にやってきた。
 セキュリティー・イッシュはかつてのイッシュ警察がさらに他の機関を飲み込んで、あらゆるマルチ犯罪に対応した強大な組織らしい。イッシュの生態系を調査し守る役割を持つP・ユニオンと同盟を組んだのは、やはりプラズマ団などの犯罪組織にはポケモンと密接に関わっているものもあるため、それらが使うポケモンの調査をすることでより連中と戦いやすくすることが目的らしい。連中はお上から配られたポケモンを使っているからだ。中には、他の地方から密輸ルートで取引されたものも混じっているという。
 そのためか、さっきミオに「翼軍の隊員が何のポケモン使ってたか覚えてる?」と聞かれた。
 モロバレル、と答えたら「ふーん、まあ珍しくはないわね」と返された。
 だが、現在指名手配されている2人の幹部はアゲハもそうだったように、それぞれのタイプのエキスパートで、並のポケモンでは歯が立たないらしい。なるほど、俺のルカリオは並レベルってことか。悔しいね。
 尚、アゲハの指名手配情報を見て「虫ポケモン使いが他にもいて感極まるね、ファンタスティック」とかほざいてていたジムリーダーが居たらしい。
 
「で、何で俺まで結局来るんだ?」
「チョーカーよ。あのガブリアス、連中が作ったチョーカーで暴走してたんでしょ。あれがどんな感じだったか、技術部の人に教えてほしいと」
「そんな大したことは教えられないと思うんだけど。ん、待てよ。それじゃあ俺だけ行けばいいんじゃ」
「ふぇ!?」

 それを言った途端、彼女の挙動が急に変わった。

「い、いや、そ、それは……ね、とにかく何でもいいでしょ、レッツゴー!!」
「えー」

 こいつ、絶対何か隠してやがる。
 ビルに入ると、警備用なのか多くのコイルやギアルといった鋼タイプのポケモンがうろついていた。
 
「ったくシュールな光景だな」
「侵入者が来ても電気技ですぐに捕まえられるようにしてるの。待ち合わせの部屋は5階らしいから行くわよ」

 彼女がそういってエレベーターに早足で乗り込むので俺も後に続いた。


 ***


 案内された部屋にはいると、そこにはもう人がいた。白衣に身を包み、黒髪を背中まで長く伸ばした長身の男だった。
 それと、研究員らしき人が辺りに何人かいる。

「どうも、これはこれは。よくここまで来てくださりました」

 男の顔はなかなか美麗だった。横でミオのやつが目を輝かせ……あ、もう何でこいつが着いて来たがったのか分かった。

「ああ〜、相変わらずガートさんは研究員なのに身なりにも気を使っててしかもイケメンで良いわ〜」
「こいつ」
「え、いや何も言ってないわよ、私」

 ゴホン、と目の前の男が咳払いをしたので俺は前を向いた。

「初めまして、ライガ君。僕はセキュリティー・イッシュ技術・情報部のガートという物です」
「あ、ああ。こちらこそ、ライガです。よろしくお願いします」

 ふふ、とガートさんは微笑んだ。研究員になるのが勿体無いくらいのイケメンだ、羨ましい。

「黒き翼軍が使っていたチョーカー。実はそういったものを連中が使っているのを見るのは初めてなのです。奴らはチョーカーに付いて何か言っていませんでしたか」

 と聞いてきたので、とりあえずポケモンを洗脳してさらに強化するものと連中が言っていた、と伝えた。
 
「邪道な……道具でポケモンの意識を奪い、さらに無理矢理力を引き出すなんて!! そして幹部のアゲハと戦ったようですね」
「あ、はい。やつのカイロスにこっ酷くやられて、この頭ですよ」
「それは大変でしたね。お大事にしてください」

 その後も幾つかの質問をされて返す、というのを繰り返し、とりあえず帰して貰うことになった。
 が、その際に。

「そうですね、後はライガ君。実は貴方に渡したいものがあるのですよ」
「へ?」
「モンスターボールです。中にはポケモンが入っています」

 そういってガートさんは箱のようなものを取り出して中からボールを3つ取り出した。

「あれ、何でこれを俺に?」
「P・ユニオンに入った人はポケモン研究者の一員である私がイッシュ地方最初のポケモンを渡すことになっているのです。まあ、アララギ博士からポケモンを貰っている方もいるのですが、そういった方にももう1匹……というわけです。貴方は違うようですがね」

 確かに。俺は幼馴染のリオを連れて旅に出たからアララギ博士から最初のポケモン貰ったりとかは無かったんだよな。

「一種のサポートのようなものですよ。イッシュだけに」
「それじゃあ、選ばせてください。どーれーにーしーよーうーかーなー」
「私の渾身のギャグはスルーですか」

 寒いんだよ、北極にでも行ってくれ。とりあえず、どれにしようか迷う。
 そこにミオが割って入ってきた。

「あ、そうそう。あたしが渡した端末だけど、あれはエキスパンションナビ、略して『E・ナビ』。ポケモン図鑑の機能も付いていて使うたびに拡張されていく最新型のもので、これもP・ユニオンの上層部からの支援みたいなものだから大事にしてよ」

 ふーむ。便利な世の中になったもんだぜ。とりあえず、ボールの中の3匹をこれで調べてみるか。



『ポケモンDETA
ツタージャ:蔦蛇ポケモン
概要:知能が高くて冷静。多くの動物型草ポケモンの例に違わず、細胞に葉緑体があるため、光をたっぷり浴びると動きがすばやくなる。
体力:D 攻撃力:D 防御:D 特攻:D 素早さ:C
要注意技:はっぱカッター、蔓の鞭
危険度:1』



 能力は見たところ、素早さが高いのが目立つな。なんにせよ、火力は少々厳しそうだ。



『ポケモンDETA
ポカブ:火豚ポケモン
概要:焼いた木の実を食べるのが大好き。だが興奮すると炎が高ぶって焦がしてしまうこともしばしば。感情によって炎の強さが変わる。
体力:C 攻撃力:C 防御:D 特攻:D 素早さ:D
要注意技:火の粉、体当たり
危険度:2』



 うん、なかなか進化前にしては前線向けっぽい。だけど役割がリオと被りそうだな。
 尚、危険度が2なのは一応”炎”ポケモンだかららしい。大人しいのだが、やっぱ火って危ないよね。別に俺はそこまで気にしないけど、良い子の皆も火には気をつけよう。



『ポケモンDETA
ミジュマル:ラッコポケモン
概要:お腹のホタチで戦う。攻撃を受け止めてからすかさず切り込む戦法を得意とし、真っ向から相手に勇敢に立ち向かう。
体力:D 攻撃力:D 防御:D 特攻:C 特防:D 素早さ:D
要注意技:水鉄砲、シェルブレード
危険度:1』



 あ、こいつ良くないか。丁度水タイプ欲しいな、と思ってたところだし。リオとエモの弱点の火・地面・氷・岩をカバーしてくれる。
 それに何かこいつ愛嬌っていうのかな、そういうのが伝わってくるし。

「俺、ミジュマルにします」
「ふーん。ちなみにあたしはツタージャにしてたの。今はジャノビーに進化してるわ」
「へぇ。それじゃあガートさん、色々ありがとうございました」
「ああ、旅の無事を祈ってるよ」

 とにかく、新しい手持ちもゲットして、俺のメンバーは3体か。もうちょいスタメンに入りそうなポケモンを探していきたいところだな。

 ***

 ---------深夜、ホドエモシティ。

「おいおい、何だありゃ」

 ヤーコンロードを見回る警備員はふと走ってきたワゴン車らしきものに目を留めた。
 中から何人かの人が降りてくる。
 そのうちの1人は頭を丸めた坊主のようで、スキンヘッドのヤンキーかと思っていた。
 全く迷惑な……と声をかけに行こうとしたそのときだった。
 突如、警備員は何かに締め付けられる感覚を覚えた。
 それも自分の体を覆うほどの大きな何かだ。

「うごあああ、何だ、何だこれはァァァ! ポケモンか、ポケモンなのかッ!?」

 ぐぎぎぎ、と体の骨が砕かれていくような感覚だ。

「うぼぁっ!!」

 血反吐を吐き散らし、ガンガン、と自分の体を締め付けるものを拳でたたいた。すると、感触は岩のようだった。サラサラ、と少し砕けて砂になる。
 しかし、痛みに堪えかねてついには意識を手放し、そのまま倒れた。

「ガッハッハ、イワークの速度は60キロ。図体の割に速いのだよ。ククク。いや、もう聞こえていないか」

 動かない警備員を見て男は笑うと、他の面子を連れてそのままヤーコンロードの闇へ消えた-----------