二次創作小説(紙ほか)

ピース7:ヤーコンロードに潜む者 ( No.15 )
日時: 2014/10/19 23:10
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)

 ***

 次の日。だいぶ怪我もよくなった。縫合した場所も治りがよく、明日には抜糸できるとのことだ。
 ヤーコンロードの警備をしていた警備員が瀕死で見つかった、という事件は言うまでもがな、早くイッシュ中を騒がせていた。かなりの重傷で助かるかどうか分からないらしい。怖いね。
 それだけならばまだしも、セキュリティー・イッシュの捜査員が入ったところ岩蛇ポケモン・イワークに追い出されてしまったらしい。全く情けない。あんなの弱点の水タイプ・草タイプ突けば簡単に倒せるのに。
 問題はあの中に徹夜で作業していた作業員の安否もあるよね。
 
「やったのは恐らく黒き翼軍の連中よ。あそこを占拠して一体何を考えているのかしら」
「知らねーよ。というかいつまでお前着いて来るんだよ」
「あれよあれ。一応怪我させちゃった責任もあるしね。ただ、組んでた相方------ほら前言ったじゃない。ガブリアスと戦って怪我して入院していたのが」
「ああ」

 ほんとお空のスターミーになってなくて良かったぜ。俺もそいつも。

「で、そいつがどうかしたのか」
「それが、もうすぐ退院するからね。上からは今度からはこの3人で組みなさいとのことよ。安心したわ」
「何か上手く合わせられた気がするな」
「話戻すわよ。で、イワークで嫌な予感がするのは、これよ」

 そう言って彼女は俺に紙を1枚見せてきた。写真が貼られている。どうやら指名手配書らしかった。
 名前は……カシワか。

「カシワってどんなやつなんだ?」
「見ての通りの凶悪犯で、幹部の中では岩タイプのポケモン使いよ。それらのパワフルな怪力を使った列車強盗や破壊工作を担当しているの」
「けっ、脳筋かよ。安心したぜ」
「ただの脳筋と見縊る無かれ。やつは同時に狡猾でもあるわ」

 まあそこは流石悪党と言ったところか。

「とりあえず、今度の仕事からエリートの私の足を引っ張らないように。いいわね?」
「お前、むしろ逆に引っ張ってなかったっけ?」

 バキッ

 とりあえず殴られたけど、ライガは泣かないもん!


 ***


「ぐあああッ」

 作業員は悲鳴を上げた。体をイワークに締め付けられて動けないのだ。

「お前ら、黒き翼軍だなァァァ!! ぐええ、何でこんなところにィィィ!! ポケモンや、俺達に、こんなことをして許されると思っているのかぁぁぁ!!」

 作業員が指差した先にはボロボロに傷ついたポケモン達の姿があった。なかにはイワークの巨体に押しつぶされて凄惨な姿になっているものもいた。

「探し物だよ、探し物。上から探し物をすることを強いられているのだよ」
「法がッ、ぐはぁ!! 法が必ず貴様らを裁く……だろう、ぐはっ」

 そう言い残して作業員は倒れて動かなくなった。

「我らが法律だよ」

 カシワは嫌な笑みを浮かべた。
 作業員を適当に放るとイワークは岸壁に向かって突進した。ガラガラ、と岩が崩れ落ちる。
 カシワは白い柔道着に黒い袴を穿いたスキンヘッドの男だった。
 何も意味も無くここら一帯を破壊しているわけではない。さっきも言ったとおり、上から指示された探し物に来たのだった。

「さあ、行けイワーク! 貴様はこの道を掘り進むことを強いられているんだッ!!」

 しばらく経っただろうか。そこには妙な石像があった。土に埋もれてその全貌こそ分からなかったが、顔の部分にはデンチュラの単眼のようなものが付いていた。

「カシワ様。もうすぐ例の反応が近づいてきますが!」

 しかし、カシワは部下の報告など気にせずに顎に手を当ててぶつぶつ呟いていた。

「この石像……どこかで見たような……」

 そのとき、何かに気づいたのか叫んだ。

「進め!!」

 イワークが自慢の石頭で石像に体当たりしたそのときだった。
 石像の目らしきものが光る。

 
 ピコーン、ピッピッピッピッ、ピロロロ……

 
 奇妙な電子音が周辺に響いたこの瞬間、石像は大きな震えとともに動き出したのだった。

「うわあああ!?」
「ふむ、やはりポケモンであったか。それもただのポケモンではない」

 彼は野心と確信に満ちた目を石像-----否ポケモンに向けると言った。

「これは伝説のポケモンだ!!」

 
 ***

 ヒウンシティ・ポケモンセンター。E・ナビのワンセグ機能で俺は珍しくニュースを見ていた。

『現在、ホドエモシティ近辺で震度5の地震が発生しております。周辺地域にお住まいの方は---------』

 地震、か。黒き翼軍の連中がやってきたとすれば、それが原因でこの地震が起こっているのか?
 何にせよ、だ。体が疼いて仕方が無い。もしこれが連中の仕業なら、今度こそブチのめしてやらないと腹の虫が収まらないってもんだ。
 とか言ってる間にミオがやってくる。

「任務よ。それも私達にね」
「おっ、マジか!」
「E・ナビを確認して。データはもう送ってあるわ」

 画面にはこんなメッセージが送られてきていた。

『任務:ヤーコンロードの調査
ヤーコンロード周辺で原因不明の地震が発生している。黒き翼軍の仕業である可能性が現時点では最も高い。従って、チーム・ミオにはヤーコンロードへ出向き、直接調査を行っていただきたい。尚、もしも黒き翼軍が関与していると判明したらただちにセキュリティー・イッシュへ連絡をしてほしい。
諸君らの健闘を祈る。』

「そうとくりゃ、早く行こうぜ」
「そうそう。私がさっき言ってた”あいつ”も退院手続きが終わり次第駆けつけるらしいわ。無理してほしくはないんだけどね」
「何なら心強いぜ!」
「外に出るわよ。私のスワンナを貸すから」

 そういって彼女は一足先にセンターを出ると、ボールを投げる。中からは美しい白い羽毛を持った鳥ポケモンが現れた。



『ポケモンDETA
スワンナ:白鳥ポケモン
概要:夜明けとともに踊り始める。真ん中で踊るスワンナが群れのリーダー。また、優雅な見かけによらず、力強く羽ばたくことで数千キロを飛び続けられる。
体力:B 攻撃力:B 防御:C 特攻:B 素早さ:B
要注意技:暴風、がむしゃら
危険度:4』



 それに飛び乗って、ミオは言った。

「あ、あんたは足に掴まってね?」

 マジすか。
 と思いきや流石に冗談だったのか乗せてくれた。早く空を飛べるポケモンが欲しいぜ。

 ***

 ヤーコンロード。入り口には何人もの人が入り乱れた後があった。そしてビニールシートに血痕。事件現場である。
 例の警備員だが結局助かったらしい。しかし中にいるという作業員も心配だ。早く行かねば。
 はやる気持ちが抑え切れず、俺は中に入った。ミオも慌てて後に続く。
 洞窟の中は涼しかった。ひんやりとした空気が頬を撫でる。
 
「見たところ、何も居なさそうだけど……」

 そう言ってミオが辺りを見回したそのときだった。
 俺の正面から少し先に岩が崩れて落ちてきた。
 とっさによける。
 しかし、それがただの岩ではないことに気づく。
 
「イワークか……!」

 E・ナビでスキャンすると確かにそう出てきた。
 そしてあからさまな敵意を向けてくる辺り、どうやら野生ポケモンではないらしい。
 ここは戦う以外道はなさそうだ。


『ポケモンDETA
イワーク:岩蛇ポケモン
概要:時速80キロもの速さで大きな口を開き土を飲み込みながら地中を掘り進める。また、このときに飲み込んだ鉱物がそのまま自分の体となる。成長すると岩の体はダイヤモンドのように硬くなる。
体力:D 攻撃力:D 防御:SS 特攻:D 特防:D 素早さ:B
要注意技:締め付ける、岩落とし
危険度:5』