二次創作小説(紙ほか)

ピース14:漫画から抜け出せない? 俺もだ。 ( No.26 )
日時: 2015/02/14 10:21
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

「えーっと、全治一週間が二週間に増加ね、うん」

 ウソダドンドコドーン。
 いや、マジ勘弁だわ。主人公的にもビジュアル的にも頭に包帯巻いたまんまなのは、色々とまずい気がするんですわ。
 病院にやってきたのは、このようにぱっくり割れてしまった頭の傷をもう一度治療しに来た-----------だけではない。実は。
 3人目の仲間がこのヒウン中央医療センターに入院していて、(ヒウンだけに悲運な病院という駄洒落は禁句)もう退院手続きを終えたはずだから迎えに行けと、ミオ様からのご命令だった。
 が、病室には誰もいなかった。ちっ、俺が治療を受けている間に、もう病院を出ちまったか?
 何にせよ俺より年上らしいし、初っ端から機嫌を悪くするのも悪いな。
 って思いながら、俺は病院の売店で週刊の雑誌を探していた。
 週間少年マンデー。一週間に一度、絶対に買って読まなければ、俺は禁断症状が出るという体質なのだ。
 それぐらい、この雑誌の漫画は面白い。
 しかも今日は袋とじでE・ナビにも搭載されてるアプリの『パズル&ポケモンズ』というゲームのアイテムが手に入るシリアルコードが手に入るから、尚更である。
 買わねば。
 俺は買うことを強いられている。
 それも発売日である、今日に。

  
 ***


 ……あった。
 売店の本を掻き分け(目の前に置いてあった)その先には(先なんて無い)大いなる一つなぎの大秘法(ではなく雑誌が)。
 それを手にし、レジに向かう。ただそれだけだ。それだけなんだ。
 しかし、問題があった。
 
「……おいアンタ、その手は何だ?」
「何だもクソもあるか。僕も週間少年マンデーを買いに来ただけだ。それぐらい推理しろ」

 くっそムカつく野郎だ。俺より背が少し高く、茶髪に紺色のブレザーコートを羽織っていて、丸眼鏡の奥にある鋭い目でこっちを睨んでいる。
 が、そんなものに臆する俺ではない。
 
「俺だってそうだ。マンデー毎週発売日に読まないと、禁断症状が出るほど好きだ」
「僕だってそうだ。マンデー毎週発売日に読まないと、嘔吐で食事も喉に通らなくなるほどだ」

 成るほど。目の前にいるのは所謂同士という奴らしい。マンデーを愛する同士らしい。
 だがしかし。今は敵だ。生憎、目の前にマンデーは一冊しかない。
 ああ、マンデーよ。何故お前は一冊しかないのだね? 分け合うものは奪い合うしかないというのだね?
 マンデーよ、ああ愛しの週間少年マンデーよ。

「とにかくだ。これはな、実はある人物の退院祝いに贈るものなのだ」

 え? マジかよ。そうだったのか。つまらない回想して悪かったな。
 
「そ、そうか。じゃあ持ってけよ。マンデーくらい、どこでも買えるよな」
「ああ、分かってくれて何よりだ」

 すた、すた、とレジの方に歩んでいく彼は最後に振り返って、無表情で言った。
 

「ま、そのある人物って僕なんだけどね」


 待てやコラ、ボケエエエエエエェェェェ−ッ!!
 すかさずエルボーを奴の横っ面に繰り出す。
 「ぱぶらっ」と変な奇声を上げた奴から、マンデーを取り上げて見下ろし、俺は言ってやりました。

「てめぇコラ、嘘付きやがって、死ぬか? そんなに死にてぇか、アアン!?」
「やりやがったな、こちとら病み上がりなんだが」
「るっせー、俺だって重症患者なんだよ、頭にぽっかり穴が開いちゃってるんだよ、気ィ使えやボケ」
「何を貴様」
「やんのかテメェ。言っておくけど、俺のルカリオはそこらの奴とは一味も二味も違うぜ? まずニックネーム付けてるところ」
「いや、それどういう違い? そんなことより、僕のジュペッタの方が強いに決まっているんだ」
「良いぜ、んじゃあバトルで決着をつけてやろうじゃねえか」

 ガタリ、と音がした。
 見ると、売店のレジ打ちの腰が曲がったお婆さんが何か言いたげにやってくる。
 やべ、流石に騒ぎがでかすぎたか?

「そこの若い二人。今、バトルでケリ付けるとか言ったね?」
「え? ええ、まあ」
「そうですが」

 イエス、アイアム。俺はこのマンデーのためだけに戦うつもりだ。
 ん、ちょっと待てよ? 何この流れ------------

 
 ***

「勝負は3対3のシングルバトルッ、審判は売店の看板娘であるワシが勤めさせていただくよ!! 勝ったほうが、この週間少年マンデーを手に入れる!! 良いね?」

 何この婆さん、腰曲がってんのにめっちゃ元気なんですが、それは。
 さて、何であれ奴と決着を付けることができるからな!
 つーか、結構ギャラリーが集まってるんですが、それは。
 病院の裏の広場に、こんなバトルフィールドがあるなんて、俺は知らなかったよ。

「フン、僕の頭脳戦法で押し切ってやる」
「こっちの台詞だ! 先にぶっ潰してやる!!」

 アイツとの視線がカチ合った瞬間、俺はボールを投げた。向こうもだ。
 さて、俺が繰り出したポケモンは----------エモだ。
 ぐるり、と青い空を一周したこいつはすぐに俺の肩に止まる。
 可愛い奴だぜ。
 一方のあいつは---------

「行け、ダブランっ!!」

 何だアレ。ぷよぷよしたゼリー状のものに、何か入ってる。
 確か、あのポケモンは------------


『ポケモンDETA
ダブラン:分割ポケモン
概要:2つに分裂した脳みそを持つため、いきなり違う行動を取ることがある。分裂した2つの脳みそで同じことを考えているとき、サイコパワーは最大となり、相手に襲い掛かる。
体力:C 攻撃:D 防御:D 特攻:S 特防:D 素早さ:E
要注意技:サイコショック、自己再生、シャドーボール
危険度:4』


 ーっ!? 特攻Sランクだとぉ!? やべえ、パッと見そこまで高いとは思わなかったぜ。
 タイプ解析結果はエスパーか。

「……む、それはE・ナビか?」
「へっへーん、羨ましいだろ」
「悪いな」

 見ると、奴の手には------------え!? E・ナビだと!?

「生憎、同じ組織の人間らしいな、貴様とは……最も、虫唾が最高に走るのだがなっ!!」

 マジか、やつもP・ユニオンの一員だったって言うのかよ!!