二次創作小説(紙ほか)

Re:  銀色の侍。 -ぎんたま- ( No.2 )
日時: 2014/07/15 22:09
名前: 桜。 ◆2LLfCgVf7Y (ID: RxNXUMDJ)



 ラグビーボールのような形をした大きなカプセル。
 人が一人入れるくらいのそれには、管が沢山つけられてる。



 そのカプセルの中で眠ってるのは、





「妙お姉ちゃん。お見舞いにきたよ!」






 志村妙お姉ちゃん。新八お兄ちゃんの、お姉さん。



 白詛によって色素は抜け落ちて、髪は真っ白。
 目もよく見えていないみたい。






 さっきも言ったとおり、白詛に感染すると一ヶ月を足らずとして亡くなる。
 でも妙お姉ちゃんは一ヶ月以上生きている。それもこれもこのカプセルのおかげ。








「ゆ、ゆき…ちゃ…? 新ちゃ…神楽…ちゃ…?」

「姉御、今日は元気そうね。どうかした? 何か…いい事でもあった?」

「三人が…お見舞いにきてくれたから…嬉しいの、よ…」









 ふふふって笑う妙お姉ちゃんは、本当に綺麗。


 このカプセルは、対白詛用の医療器具。
 これに入っていると、白詛への対抗力をあげることができるみたい。
 


 …治ることはないかもしれない。
 それでも、妙お姉ちゃんは、幸せそう。








「優幸ちゃん…本当に…似てるわね…」

「え?」

「雰囲気、がね…貴女のお父さんに…、銀さんに…よく似てる…」

「そう、なの?」







 
 目線で新八お兄ちゃんと神楽お姉ちゃんにも尋ねてみる。
 二人はにこって笑って、何度も頷いてくれた。



 本当に…どんな人なんだろう。私のお父さん。








「銀さ、ん…会いたい…わね…ぇ…」

「姉上……」







 カプセル越しの、呼吸器越しの、くぐもった声。
 でも、妙お姉ちゃんの目から流れるそれは。


 もう、自分が永くないってことを、悟ってるのかもしれない。




 …絶対、絶対絶対、諦めないけど。
 妙お姉ちゃんを死なせたくなんてないよ。







「おや、ぬし達もきておったのか」

「こんにちは、優幸」

「月詠お姉ちゃん! 九ちゃん!」






 金髪の短い髪、頬の傷、凛々しい目。
 煙管をくわえてる女の人が、月詠お姉ちゃん。

 一人称が“僕”で一見ボーイッシュだけど美少女な、九ちゃん。 



 二人とも、お父さんとお母さんの知り合い。






「調子はどうじゃ」

「ええ…今日はとても調子がいいの…」

「それは良かった」

「妙ちゃん、僕、可愛いクマの人形を持ってきたんだ。飾っておくよ」

「ありがとう、九ちゃん」





 妙お姉ちゃん、とても嬉しそう。…私も、嬉しくなった。
 茶色いもふもふしたクマのお人形が戸棚に置かれる。
 見えないはずだけど、妙お姉ちゃんはそちらを見て、嬉しそうに微笑んでる。



 …何とかして、白詛を治せないのかな…。







「優幸。目。目が死んでるぞ」

「え」

「まったく…銀時はとんでもない遺伝を残していったな」

「そうね」







 私の目はよくよく“死んだ魚のようだ”って言われる。
 ボーッとするとよけいにそれが悪化しちゃうらしい。…自覚はないんだけど…。

 この目はお父さんとソックリみたいで、それが少し嬉しかったりもするの。







「顔つきは双葉さんとそっくりだね」

「お母さんと? …そうかな?」








 坂田双葉【さかたふたば】。それが私の母の名前。
 白詛に感染して亡くなってしまったけど…本当に優しかったお母さん。
 その頃はまだ、対白詛用のカプセルもできてなくて…。


 寂しくて寂しくて、どうにかなってしまいそうだった。


 でも今は皆がいるから、まだ耐えれるの。







「性格も双葉似じゃな。しっかりしておる」

「時々面倒くさがりなところとかは銀さん似だな」

「あ、新八お兄ちゃんひどいー」










 他愛ない会話で笑いに包まれる病室。

 そこからはいろいろな話題で盛り上がって、皆楽しそうで。
 妙お姉ちゃんはその間中、ずっと笑ってた。
 








「あ…優幸。そろそろ稽古の時間じゃない?」

「え!? ほ、ほんとだ! ひぃぃぃぃっ急がなきゃァァァァ!」

「…何をそんなに怯えておるんじゃ」

「教師がスパルタなんだと。剣の腕はピカイチだがなんせ性格は悪い」

「たっ、妙お姉ちゃん! またねっ!」






 妙お姉ちゃんは笑って、またねって言ってくれた。
 


 バイバイ、じゃなくて、またね、が私なりのルール。
 また明日会おうね、って、妙お姉ちゃんと約束をつけるの。






 だから…妙お姉ちゃん……、…。







「じゃあ、行ってきます!」

「行ってらっしゃい」




 

 …お父さんなら、こんな時、どうするんだろう?