二次創作小説(紙ほか)

Re: FAIRYTAIL「毒花の住処」 ( No.29 )
日時: 2015/02/13 12:24
名前: 紫苑有栖 (ID: 8y9cmuB3)
プロフ: しへとにげたみち

第8話「死へと逃げた道」

「行け、アレは私が倒す。リンはまだ手伝えるか?」

リンはウルの目を見て頷く。
でもグレイはこんな事になったのは俺のせいだと動かなかった。

「誰のせいでもない。幸せを取り戻す為の試練だ」



「ウル…本気でやってるの?」

リオンの意識が戻りウルに近付いて行く。
ウルは最強の魔道士。
あんな怪物ごときに勝てないはずがない。

「リオン…前にも言っただろ?上には上がいる。
西の国に行けば私より強い魔道士は山ほどいる」


そう言うがリオンには聞く気はなかった。
ウルが最強だ。

「アンタが本気を出さないなら俺がやる」

「その構え……!!」


ウルの前に出て来て絶対氷結アイスドシェルの構えをする。
彼女は止めようとするがその大き過ぎる魔力に吹っ飛ばされてしまう。
デリオラにも見つかってしまった。

デリオラにはどんな魔法も効かない。
だったらこの魔法で永遠に氷に閉じ込めると言った。

「その魔法を使ってはならん!」

ウルがリオンを氷漬けにする。
絶対氷結アイスドシェルは使った者の身を滅ぼす。


「しかし…あいつを倒すにはこれしかないのも事実…
まさか…私がやろうとしていた事をリオンがやろうとするとはな…

さすがは弟子だ」

前に出てリオンと同じ構えをするウル。


「私の弟子たちには近づかせないっ!
これで終わりだ!バケモノォ!!!


絶対氷結アイスドシェル!!!」

「ウルー!!」

膨大な魔力とヒビが入る体。
この魔法は自らの肉体を氷へと変える魔法。



「グレイ…頼みがある。リオンには私は死んだと伝えてくれ。
あいつの事だ。

私が氷となったことを知ればこの魔法を解く為に人生を棒にふるだろう」

彼女の体は分解されて行く。
グレイは涙を流した。
リンはただその様子を棒立ちで見守る。


「リオンにはもっと世界を見てもらいたい。
グレイ、リン…もちろんおまえたちにもだ。

悲しむ事はない。
私は生きている。氷となって永遠に生きている。


歩きだせ、未来へ」




“おまえの闇は私が封じよう”

最後にウルは、そう告げた。




デリオラは完全に体を凍らせる。
それをずっと静かに見守っていたリンはデリオラを凍らす氷に近付き、
手を氷に当て、目を閉じた。

しばらくそうしているとリンはそのまま地面へへたりこむ。
そっと悔しそうに涙を流した。



翌朝まで4人は凍り付いたデリオラの近くで過ごしていた。

「な…デリオラが!ウルは!?ウルはどうした!!?」

リオンが目を覚まし、グレイが死んだと答えると
リオンは嘘だと叫びグレイの胸ぐらを掴む。
それに気付いたリンがリオンを後ろから掴み、2人の距離を離す。


「落ち着けよ!リオンッ」

「離せよッ!くそっおまえさえ…おまえさえデリオラに挑まなければ…
おまえのせいだ!!グレイ!!!」

グレイもリオンも涙を流す。
せめて一発殴りつけてやろうの勢いでリンから離れようとするリオン。


「おまえがウルを殺したんだ!!!」

Re: FAIRYTAIL「毒花の住処」 ( No.30 )
日時: 2014/11/30 19:30
名前: 紫苑有栖 (ID: 0Q45BTb3)


“パキィ”

そんな音を立て、氷を割った。
中にいたのはリオンとナツの姿。
どうやら戦闘中だったらしい。

氷を割った所からグレイは入って行く。
リンもその後ろにいた。

「…こいつとのケジメは俺につけさせてくれ」

「!」

「てめえ!1回負けてんじゃねーか!!!」


「次はねえからよ。これで決着だ」

たいした自信だな、とリオンは言う。
10年前、ウルが死んだのはグレイのせい。
だが、仲間を傷つけ村を傷つけ、
あの氷を溶かそうとするリオンだけは許さないとグレイが言う。


「共に“罰”を受けるんだ、リオン」

グレイは手を交差させて構えを取る。
その構えにその場にいる全員は目を見開いた。

「き…貴様……血迷ったか!!?」

「今すぐ島の人の姿を元に戻す戻せ…そして仲間をつれて出ていけ」


リオンはその言葉に脅しか、くだらんと吐きすてる。
だがグレイは本気らしくドッと大きな魔力が漏れ出した。

ナツはその魔力に吹っ飛ばされ、リンが何とかその場で耐える。

「この先、何年経とうが…俺のせいでウルが死んだという事実は変わらねぇ。
どこかで責任をとらなきゃいけなかったんだ。

それをここにした。死ぬ覚悟は出来ている」



「本気…なのか…!!?」

「答えろリオン!共に死ぬか生きるかだ!!!」

リオンはやれよ、と答えた。
その時にナツは魔力に抗おうと立ち上がる。


「これで全て終わりだ!!アイスド…」

「グレイッ!!!」

「!!!」

氷が床を伝いグレイを凍らす。
それはすぐに砕けたが絶対氷結は止まった。

絶対氷結を止めるために予想以上に魔力を使ったのか、
息切れをし自分に驚くリン。

「(危ない…加減を忘れてた……)」

「リン…なんで……何で止めた」


グレイの言葉にリンは彼を睨みつけた。

「リンが止めなくても俺も止めてたぜ」


ナツもそう言い放つ。

「ナツ…てめぇ……ケジメつけさせてくれって言っただろ!」

「“はい、了解しました”って俺が言ったかよ」

グレイがナツを睨みつけた時、リンはグレイの名前を呼ぶ。


「“死ぬ覚悟”って何だよ…
死ぬ事が責任なのかよ?それが罰なのかよ?ケジメなのかよ!!

それはただの逃げなんかじゃないのか!?グレイ!!!」

リンの言葉に黙るグレイ。
その時、遺跡が“ゴゴゴ”と音を立てる。

しばらくしてそれは収まったが、傾いていた遺跡は元に戻っていた。
お取り込み中失礼、と入ってきたのはザルティと呼ばれた男。
遺跡を元に戻したのはザルティの魔法。


「俺があれだけ苦労して傾かせたのに…
どうやって元に戻した!?」

「ほっほっほっ」

「どうやって元に戻したーっ!!!」


「さて…月のムーンドリップの儀式を始めに行きますかな」

ナツの言葉を無視して去ろうとするザルティ。
それにムカついたのか、ナツはザルティを追い掛けた。

「ナツ、オレも行く」

ついていこうとするリンにグレイは声をかけた。


「…きっとナツがあいつを何万回もぶっ飛ばす。
オレもあいつをぶっ倒しに行く。

ケジメをつけるんだろ」

グレイは頷いた。
その会話が聞こえていたのかナツは走りながら大声で叫ぶ。

「オメーのじゃねえぞ」


「妖精の尻尾フェアリーテイルのだ!」と3人は声をハモらせる。
それだけ行ってリンもナツもグレイの視界から消えていった。

リオンはその様子を見て騒がしい奴等だと言う。

「おまえ…さっき俺が絶対氷結を使おうとした時、
リンが止めるのを計算にいれてやがったのか」


「いや…まさかリンがあの魔力を止めるとは想像もしてなかった。

あいつはそこまで強くなかったはずだ」

「…じゃあ本気でくらう気だったのか」

リオンはそうだ、と答えた。
たとえ、絶対氷結で氷に閉じ込められようがリオンには仲間がいる。
更に、ここは月の雫で絶対氷結を溶かせる島。

この島で絶対氷結は無力だ。



「それでもこの俺との決着を望むと?」

おまえは俺には勝てないというリオンの言葉を遮り、
もうやめよう、とグレイが言う。
デリオラは諦めるんだと。

「脅しの次は説得だと?
貴様のギルドは牙を抜く優秀な歯医者でもいるのか?」

「リオン…よく聞いてくれ。ウルは生きてるんだ」

絶対氷結は自らの体を氷に変える魔法。
あの時、デリオラを封じた氷。
つまりリオンが今溶かそうとしている氷はウル。


「ウルは…氷となって…氷と今も生きている………」

今まで黙っていたのは悪かった。
ウルとの約束だったんだとグレイは言った。
リオンは静かにグレイの近くへ寄る。

「リオン…だからもうこんな事は…やっ」

グレイの口から血が吐き出される。


「知ってるさ。そんなくだらん事。
あれはもはやウルではない。ただの氷クズだ」

リオンの手には造形された氷のつるぎ
それはグレイの脇腹あたりを思い切り突き刺していた。