二次創作小説(紙ほか)

Re: 名探偵コナン夢物語2『闘い…』 ( No.11 )
日時: 2014/11/13 21:23
名前: らいち。 (ID: mkDNkcIb)

6.翡翠の序章

どうやら、シュウ兄は『お仕事』で帰りが遅くなっていたらしい。
夕食を済ませ お風呂からあがると、ようやく彼の気配がした。
リビングでテレビを見ている。

シュウ兄も 私の気配に気付き、
テーブルの上に置いてある、大きなダンボールを指さした。

「咲良さんから、荷物だ。」
「あぁ…。それで郵便局に行ってたの?」
「まあな。」

ついでに 咲良さんってのは私のお母さんだ。
早速開けてみると、
たくさんのものが入っている。

スマートフォンに、
充電器に、
着替えに、
えーっと…

するとシュウ兄は、

「我々で手は回しておいた。
 咲良さんが機転を利かせて、芸能活動は休止させてもらっている。
 とりあえず、それくらいあれば足りるだろう…。」

そう言って、
私が一番最初に取り出した写真立てを持ち上げた。
バブルラップの気泡が、2〜3個割れる音がした。

「ありがとね。あ、その写真、覚えてる?」
「ああ。忘れはしないさ。」

冷めた言い方の割に
写真を見つめるその瞳は、どこか哀しげだった。

有希子さんにそっくりなおばさん。
シュウ兄に肩車してもらってる真純ちゃんと私。
照れた顔でピースしているキチ兄とお母さん。
そして…
ニット帽をかぶった———
お父さん…。

何となくため息をつこうとしたその時、
ひょい と擬音でも聞こえてきそうな勢いで、シュウ兄に持ち上げられた。
いつの間にか、肩の上に乗せられている。
まさか…心を読まれてた?

「さあ、良い子はもう寝る時間ですよー。」

なんて言いながら、
空いたほうの手で ダンボールも持ち上げてる。

「はーい」

って、怖いよ シュウ兄。
キャラの切り替え。

「でも まあ、元気になったら、夜更かししてもいいかな。」
「え、いいの?!」
「もともとは14歳ですし、その辺の判断は自己責任で。」
「うーん…じゃあ、オセロしようね!将棋は難しいからさ。」
「はいはい。」

2階に上がり、降ろされた。
今度は両手でダンボールを持ち、

「一人で寝れるか?」

なんて 子供を見るように訊いてくる。
実際子どもだけど。

「平気。まだ、仕事残ってるんでしょ?」
「やっぱり俺がつく。」
「え〜っ??」
「何だ。そんなに嫌か?」
「べつに…」



毛布にくるまれて横を向くと、
椅子に座ったシュウ兄が、また写真を見つめていた。
無意識なのか、目も開いている。

月明かりに照らされる、癖っ毛な茶髪。
いつになったら 黒髪に戻せるんだろうね…?

「ねぇシュウ兄。」
「何だ?」
「真純ちゃんが風邪ひいたときは、どうしてたの?」
「そうだな…」


ガチャリ。
玄関のドアを開けると、誰かの声がする。

おいおい。
まだ起きてるのか。

そっとリビングを覗くと、
熊のぬいぐるみをぼふぼふと蹴りまわす真純がいた。

「あ!しゅうにーぃ!!」

無邪気な妹は、
風邪なんかひいてもどうってことはない、とでも言うように
俺に飛びついてくる。

「寝てろって言っただろ。」
「だってつまんないんだもん!」

ったく…
と、制止させるように真純の額にシートを張り付けた。

「しゅうにぃといっしょにねるっ!」
「ハイハイ。」

ちなみにこの時、
真純は3歳 俺は15歳で中3。
受験も終わり、無事に進路が決まっている。
いままで秀吉に任せていた分、思い切り甘えさせよう。
舌足らずな真純の口調に愛おしさを感じながら、そう思った。

にしても、
母さんはどうしてこんな時に 真純の近くにいてやらないんだ。

「…あれ、しゅうにぃ…おこってる?」

顔に出ていたか。

「あぁ…母さんにな。」
「なんで?ママはわるいことしてないぞ?」
「真純…」

熱で火照った顔が、さらに赤くなる。

何となく気まずいので
部屋に戻って
制服から パーカーとジーンズに着替えたら、

「しゅうにぃ…」

と、
ドアに隠れて、
真純がこちらをじっと覗いていた。

「ん?」

洗濯物を抱えて部屋を出ようとすると、

「ボク、ママがいなくても、平気だもん!しゅうにぃときちにぃがいるもん!」

そう言って
目をうるうるさせていた。

「…」

そんなことを言われてしまうと、
こっちが申し訳ない。

「真純…ごめんな…。」