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『ここまで…大丈夫？』

その文を読んで、
奈都は我にかえった。

気がつくと、１時間近く経っていた。
大丈夫じゃないよ…
と思いつつ、今の状態に至る。

頭がぼんやりして、はっきりと状況をまとめられない。
とりあえず、手近にあった筆記用具で、家系図を記していくことにした。

えーっと…。
おばさんと、エレーナは姉妹。
おばさんは シュウ兄とキチ兄と真純ちゃん。
エレーナは 有希子さんと明美さんと志保ちゃん。

ん？
有希子…さん？

あ〜っ！！！

『有希子』
その三文字で、一気に目が覚めた。

思い当たる人といったら、もう １人しかいない。
そして、冒頭の供述に至るのだ。

「おばさんが、有希子さんにとって 叔母 になるのか」と。

ドキドキしながらも、次の紙を読み進めていくことにした。



『やがて、みんなも成長したんだけど、メアリーと浩司さんは 正体がばれてしまって…
　組織は、あの毒薬を使ったの。
　そう。
　ＡＰＴＸ４８６９。
　夫のほうは、毒のせいで亡くなったと聞いたわ。
　でも、メアリーには毒が効かなかったみたい。
　その代わりに…
　幼児化。
　そして、幸運にも 被験者リストに載ることの無かった彼女は逃走し、
　仲間に助けを求め、真純のいるイギリスへと帰った。』

一瞬、身体に電流が走った気がした。

この前 新一にぃちゃんが言ってた、
真純ちゃんのホテルに匿っている謎の少女って もしかして…

メアリー・セイラ？！


全てがつながった。

『領域外の妹』
これを、英語で考えてみる。

『妹』は『ＳＩＳ』と『ＴＥＲ』に分けることができる。
『ＴＥＲ』は、一員、という意味。

つまり、
幼児化して 戦力外・領域外となった、ＳＩＳの諜報員
と言う訳だ！

世良っていう名字も、セイラからきていると思われる。


手紙には、まだ続きがあった。

『ジェイムズさんは、ＳＩＳのお偉いさんと仲が良かったから、
　とくに詳しく話さなくても、彼の機転で イギリスへと入国できたそうよ。
　で、最近 テレビに映っていた「ある少年」を見て、
　真純ちゃんと日本に飛んできたんだって。
　奈都には、話せば分かる…って言ってたけど、誰のことだか、私にはさっぱり。』

あぁ、それ 新一にぃちゃんのことだ。
「ホームズの弟子」。

その先には、この手紙が長くなってしまったことについての謝罪が書いてあった。

時計を見ると、もう７時だ。
ひんやりとした空気を たっぷりと吸い込んで、
奈都はキッチンへ向かうことにした。




「…そうですか。はい…了解。」

たん っと画面を叩いたママが、ボクに鋭い目を向けた。

「何て、言ってたんだ？」

その顔は すっかり「領域『内』の妹」に戻っていた。
今にも拳銃を向けてきそうな、ちょっと怖い感じ。

「２か月以内に、組織の闘掃が始まる。」
「え？」
「真純はイギリスに帰りなさい。」
「はぁ？」

ママは、そのまま バスルームに行ってしまった。


二か月————

秋と言う季節がこんなにも長く感じたのは、
シュウ兄が出て行った年以来だった。