二次創作小説(紙ほか)

Re: 名探偵コナン夢物語2『闘い…』 ( No.18 )
日時: 2014/12/06 22:10
名前: らいち。 (ID: 57S6xAsa)

8.翡翠の帰還

「5丁目…5丁目…」

ワームズが、スーツケースを転がして、朝もやの米花町を歩いていく。
昨日は 朝には東京に着いたのだが、
どうも眠くて、日本の根城に足を向ける気がしなかったのだ。

もちろん、
今日早起きしたのは その埋め合わせ。

しばらく歩いていると、ある異変に気がついた。
近くの廃ビルから 何か音が聞こえてくる。
こんな時間から、工事なんかするのか。

1mほど上げられたシャッターをくぐりぬけると、
5年は使われていないと思われる光景が広がっていた。

埃が溜まり、
奥に見える階段の近くには、落ち葉が 乾いた音を立てて踊っている。
ワームズは、階段の裏側にスーツケースを置き、
階段を上っていった。

想像通り薄暗いが、
不用意に灯りでもつければ そこに敵がいるかもしれない。
ましてや、ヤツらだったりしたら…!

グッと拳を握りしめたところで、
足が止まった。

これは…
誰かが、どこかを叩いている…?
鈍い音が 何回も響いている。

音は遠くから聞こえるので、
物陰に隠れ 近くの壁を軽く叩いてみた。

聞こえてくる音と、ほぼ一致する。


日本じゃ拳銃はまずいし…

とは思いながらも、懐で鳴る金属音。

「…」

まだ音が止まず、
さらにひどくなってきたので 息を殺して、音のするほうへ向かった。

ここか?

一番奥のドアだ。
中から、絶え間なく 壁を叩く音が聞こえる。

「んーんーんー…」
「!」

これは子どもの声だろうか。
どう考えても、『助けて』にしか聞こえない。
一応拳銃を構え、ドアノブをひねった。

ギィ、と心地悪い音が響き
中を覗くと 7歳くらいの男の子が横たわっていた。
手足を縛られているうえに、口にガムテープが貼ってある。

重いドアを押し、
暴れる男の子に近寄る。

「今、ほどいてやるからな。」

そう言ってガムテープを剥がした途端、

「おじさん 大変だ!爆弾が…!!」

と 男の子が叫んだ。

ハッとして辺りを見回すと、
部屋の隅に 小さな箱があった。
その箱には液晶画面があり、いかにも時限爆弾だ。
だが、
残り時間は あと5秒。

この大きさなら、一室分を吹っ飛ばす程度だろう。

そう考えたワームズは男の子を抱えて部屋を出て、
急いでドアを閉めた。


刹那——


その場の気温が一気に上がり、
爆発音とともに、ドアが大きく変形した。


「大丈夫か?」
「うん…。おじさんは?」
「俺か?平気、平気。」

とは言ったものの、
髪はくしゃくしゃに乱れ、服も埃まみれだ。

「それより、早くここから出るぞ。」

壁が ミシミシと音を立て始めたので、
ワームズは男の子を抱えたまま、廃ビルから脱出した。
もちろん スーツケースも忘れない。


間もなく 近所から野次馬が押し寄せ、
日本警察のお出ましとなった。