二次創作小説(紙ほか)

Re: 名探偵コナン夢物語2『闘い…』 ( No.20 )
日時: 2014/12/12 17:35
名前: らいち。 (ID: EZkj1dLS)

「…で?ikemenって何だよ?」
「アメリカじゃ使わないんですか?
 イケてるメンズってことですよー。ハンサム、とも言いますか。」
「…」
「何ですかその目。一応、僕だって刑事になったんですから!」

そう言って ワタルが警察手帳を開いて見せた。

若者はよく分からん…。
すると、またも若い刑事がやって来た。
珍しく女刑事か。

「高木君!事情聴取終わったの?」

ったく…
この人のほうが 頼りがいがありそうだ。

「あ、いえ…目撃者が知り合いだったもんで。ハハハ…」

もう。
と 女刑事がため息をつく。

「すみません、ご迷惑をかけてしまって…。私は、警視庁捜査一課の佐藤です。
 あなたが目撃者ですね?」
「えぇ。まあ、不法侵入で捕まえたいのなら構いませんが。」

佐藤、と名乗った女刑事も 警察手帳を開いた。
その動作が あまりにもワタルに似ている。

「では、身分証明書の確認をさせてください。」
「はい。」

と、俺は 車の免許証を出そうとしたのだが、
うっかり FBIの証明書を落としてしまった。

「え!FBI捜査官なんですか?!」
「はい。ジョディに誘われて、私も観光に。」

こういう嘘は、得意なほうだ。

佐藤刑事…か。
コイツは注意すべきだろう。

直感的にそう思った。

「じゃあ、キャメル捜査官とも 顔見知りなんですね?」
「ええ。つい最近知り合ってね。」

ワタルは相変わらず、好奇心というやつがある。
今も 佐藤刑事の冷たい視線を受けているのに…。

「ちょっと高木君。今は事情聴取よ。」

ついにヤジが飛んだ。

「はい!すみません!!」
「…。」

何度も言って申し訳ないが、やはり頼りない。
だが、その顔には 刑事らしさが戻ってきていた。



「目撃情報・証言をまとめます。
 今朝6時半ごろ 芹井さんはこの通りを歩いていて、
 近くの廃ビルから聞こえてくる音に不審感を抱き、入ってみたところ、
 それは、手足を縛られた土井啓太君が 壁をける音だったと。
 間違いありませんか?」
「はい。」
「では、私は他を廻るので 失礼します。
 高木君。あとは頼んだわよ。」

今日は人手が足りないらしく、
佐藤刑事は 覆面パトカーに乗って、本庁に帰って行った。


「ねぇ おじさん、
 もしかしてさ、すごく大事なこと 隠してない?」

啓太が そんなことを訊いてきた。

「君こそ。本当は、足痛いんだろ?」

子どもというのは単純だ。
この一言で、すぐに黙りこんでしまった。

「どうして刑事さんに言わなかったんだ?」

でも、そこに意図があることは ちゃんと分かる。
俯き続ける彼に目線を合わせるため、俺は腰を下ろした。
スーツが汚れようが、関係ない。

「怒ったりしないから。おじさんに、話してくれるかい?」

すると、
啓太が いっぱい涙を溜めた目を ゆっくりと向けてくれた。

思わず あの日の奈都と重ねてしまう。
こぼれ落ちる涙に、降りしきる雪が映り込んでしまう。

「僕が…僕が悪いんだ。
 我慢ができないから。いい子じゃないから…。
 もう…お兄ちゃんに、会えない…。」
「お兄ちゃん…?」

「…啓一、っていうんだ。」
「ケイイチ?」
「うん。」

時折 シャツの袖で涙をぬぐい、
よく回らない舌で、一生懸命 悲しみを訴えていた。
ワタルも さり気なく警察手帳にメモをとっていく。

「僕らのお母さんとお父さん、いつもお仕事で忙しくて…
 ほとんど毎日 家の事はお兄ちゃんがやってるんだ。」

一瞬、秀一の横顔が脳裏をかすめた。

「今月に入ってから、1回しか お母さんとは話してない。」
「そうだったのか…。」

その後、啓太は たくさんの事を話してくれた。

お父さんとは全然会っていないこと。
お兄さんとお母さんの仲が あまり良くないこと。

そして…

「でね、この左足は サッカーしてて転んだからなんだ。
 お兄ちゃんが包帯巻いてくれたの。
 でも 右足は…さっき壁を蹴りすぎたせいだよ。」
「そ、そうか。」

足の怪我についても、原因が判明した。

後ろを振り向くと、
疲れ切った顔をしたワタルが 息を切らしていた。

「で? そもそも、何であの部屋にいたんだ?」

「あ…実は…」

話を要約すると、こうだ。

久しぶりに家族全員で外出をだと思ったら 『会社の仲間だ』という人に会い、
その数名の人と山中の別荘のような所で食事をした。
だが、帰ろうとしたところ 奴らに気絶させられ、気がつくとあの部屋にいた。
その時点で 兄の姿は見えず、
母と父も、その場にはいなかった。
手足を縛られ、口も塞がれたまま 奴らによって部屋に放置され、
爆弾の存在に気づいた啓太は 力いっぱい壁を蹴り、助けを求めたそうだ。