二次創作小説(紙ほか)
- Re: 名探偵コナン夢物語2『闘い…』 ( No.31 )
- 日時: 2015/01/01 20:49
- 名前: らいち。 (ID: mSfFkU1O)
ミニサイドストーリー
Happy Christmas!〜私達だけの、秘密だよ。〜
あれは、私が4才の時。
クリスマス・イブになって、
みんなの家から帰らないといけなくなった日…。
まるで、タイミングを計ったように熱が出て。
「奈都ちゃん、大丈夫?」
なんて キチ兄に声をかけてもらいながら、雪の降る寒い夜を過ごした。
もちろん真純ちゃんは爆睡。
シュウ兄は…資格取得に向け、勉強しているので、
必然的に キチ兄のところに回るってわけ。
「ごめんね。母さん、仕事で戻ってこれないんだ。」
「Not too bad.(大丈夫だよ。)」
「ホントに?」
「うん。」
そして、夜に食べるはずだったご馳走を おばさんに内緒で、
お母さんも入れた5人で、
真昼のクリスマスパーティーだ!って笑いながら食べたんだよね。
今じゃ、シュウ兄に申し訳ない気もちでいっぱいだけど…。
そして、
この時もまた 声が出なくなっていた。
「奈都!ボク達からプレゼントだよ!」
おぼつかない手つきで手羽先を食べる私に、真純ちゃんが声をかける。
「プレゼント、と言っても つまらないものだが。」
「開けてみてよ!」
シュウ兄が箱を持って来た。
それにくっつくように、真純ちゃんとキチ兄もやって来る。
白い紙で包まれていて、きれいな赤いリボンがかかっていた。
よく見ると、紙は 光の加減で星柄が見えるようになっている。
「じゃ、開けよっか。」
お母さんも、ワクワクしながらリボンを解いた。
その顔は すっかり子どもの頃のようになっている。
ガサっと音がして箱の中を覗きこむと、レースのカラフルな袋が3つ 入っていた。
まず1つ目。
「あ、それは僕からの。」
空色の袋には、キチ兄からの オセロセットが入っていた。
家に無いんだ、って言ってたのを覚えてたんだって。
そして2つ目。
「そっちはボクだぞ!」
ピンク色の袋は、真純ちゃんから ふわふわのウサギのぬいぐるみ。
真純ちゃんらしい。
最後、3つ目。
「それは、俺からだな。」
ライトグリーンの袋には、シュウ兄からの ヘアブラシが入っていた。
「あら…いいの?ちょっと高かったんじゃない?」
お母さんも、ちょっと心配そうになる。
だが、そんな事も見越したように、
お小遣いが貯まりすぎていたからだと、シュウ兄は言った。
実際 あの時は5万以上持ってたとか。
だが、その一方で 真純ちゃんは頬を膨らませていた。
「おいシュウ兄、それはズルいぞ!」
「フッ…。」
「ふっ、てなんだよ ふって!」
真純ちゃんとシュウ兄が、兄妹らしい言い合いを始めた。
- Re: 名探偵コナン夢物語2『闘い…』 ( No.32 )
- 日時: 2015/01/01 21:36
- 名前: らいち。 (ID: mSfFkU1O)
私とお母さんもつられて笑っていると、
「ごめんな…僕、そんな物しかあげられなくて…。」
と キチ兄が申し訳なさそうな声で言ったので、
私はぶんぶん首を振って、お母さんのスカートの裾を引っ張った。
「あぁ、そうだったわね。」
お母さんは 思い出したように大きめのバッグから黄色の箱を取り出し、
背もたれが無い椅子に置いた。
キラキラしたラメが散りばめられていて、青いリボンをかけてある。
「え?!もしかして、僕たちに?」
「結構デカいじゃないか!」
「ホー…」
シュウ兄がラッピングを剥がすと4つの袋が姿を現し、
『Dear Msumi』の袋を開けた真純ちゃんが、早くも目を輝かせた。
「マジか!覚えててくれたんだな!」
ふるさと、が流れ出すオルゴール。
夏休みにここに来た時、オルゴール欲しいなって言ってたからね。
その間に 2人も袋を開けていた。
キチ兄には
『秀吉』と記してある将棋の駒。
裏には キチ兄の好きなターコイズがうめこまれている。
私は急いで 紙に
「Your Syogi chessman! Fight on game Kichini!!
(キチ兄のコマだよ!試合頑張れ、キチ兄!!)」
と走り書きした。
「奈都ちゃん…」
お母さんと同じ色の瞳に、涙が溜まっていく。
来月 大会なんだよね。
「お前は泣くな。」
シュウ兄はキチ兄の頭をひっかき回す。
そして、
「センスあるな。奈都。」
と言って いつもみたいに、私を肩車した。
近くに置いてある鏡の前に立ち、
袋の中身である服を 身体の前にサッと持ってきた。
そこには、
FBI捜査官になった今となっては 目になじんだ格好のシュウ兄。
これは 最近本人から聞いた話だけど、
Yシャツとズボン以外、
つまり ジャケットだけはずーっと同じのを着てるんだって。
そんなこと、あの時には思いもしなかったけど。
「ワームズと一緒に選んだのよ。」
「…奈都とワームズさんで…ですか?」
「えぇ。」
お母さんと私が同時にうなずき、シュウ兄は 目をパチクリさせた。
「これはママのか?」
真純ちゃんの声がしたので、
私はシュウ兄の肩から ひょいと飛び降りた。
みかん色の 一見ただの薄い毛布だが…
「お、ボタンがついてる。」
「これで 二役をこなすという訳か。」
「カーディガンとかけ毛布か!で、誰が作ったんだ?」
真純ちゃんが尋ねたので、お母さんを指さすと、
「あれ?おばさん、こういうの出来るんだっけ?」
と キチ兄がビックリした様子で言った。
「アタシも一応、勉強したのよ!」
そう言って、お母さんは ちょっと得意げに笑ってみせた。
- Re: 名探偵コナン夢物語2『闘い…』 ( No.33 )
- 日時: 2015/01/02 16:00
- 名前: らいち。 (ID: f3ScG69M)
いつの間にか時が過ぎ、
飛行機がそろそろだということで、世良家を後にすることに。
雪の降る中、
タクシーに乗り込もうとしたら 3人が走って来て、
お母さんに包みを渡した。
「それ、ママからな。」
「まぁ、芹井家全員へだがな。」
真純ちゃんとシュウ兄が言った。
ありがとう、の代わりに笑いかけると、
「みんな、ホントにありがとね。来年は家に遊びに来て!
ワームズも、秀一君に会いたいって言ってるし。」
と お母さんが涙を浮かべて言った。
「そこまでお礼を言われるようなことは、してませんよ。
女の子は 真純で慣れてますから。
…それに、風邪をひいている奈都をオレ達に任せたのだって、
信じてくれていたからでしょう?」
もっともだった。
普通の関係で 普通の母親だったら、
真っ先に引き取りに来ていたと思う。
でも お母さんはシュウ兄たちを信じて、
日本の友達と のんびり、余暇を過ごすことができた。
なんだか、
今までに触れたことの無いものに 立ち会ったような気がした。
「ふふ…そうね。」
お母さんは、照れくさそうに頬を染め、
サファイア色の瞳を 涙できらきらさせた。
「奈都ママ!今日の事、ママには内緒だぞ!!」
真純ちゃんも少し寂しそうに、雪の上をぼふりと跳んだ。
おばさんとそっくりな癖っ毛が 風になびく。
「奈都ちゃん、向こうに帰ったら ちゃんと風邪治してね。」
キチ兄の言葉に、うん、とうなずくと、
「じゃあ ワームズさんによろしくお伝え下さい。」
とシュウ兄が言い、
お母さんが手を振り始めたのを合図に タクシーもゆっくりと走り始めた。
私も 3人の姿が見えなくなるまで、ずっと手を振り続けた。