二次創作小説(紙ほか)

Re: 名探偵コナン夢物語2『闘い…』 ( No.4 )
日時: 2014/10/25 01:16
名前: らいち。 (ID: sxkeSnaJ)



1.哀の本音

もう10月になった。
柔らかな光が心地よく私たちを照らす。

「次はどこに行く?哀ちゃん。」
「…。」

トロピカルランドにいる、蘭と哀。
先ほどまで まあまあ話していた2人も、今は何となく気まずい。

「お腹すいたよね…?
 もうすぐ12時だし、混む前にレストランとか行こうよ。」
「…そうね。じゃあ、パスタでも。」

このトロピカルランドには、
ハンバーガー店、中華料理屋、園が運営するレストランなど、
さまざまな飲食店がある。
特に、
ウェルカムバーガーはいつも大行列だ。


店に入り15分足らずで、
目の前に 注文したパスタが置かれた。
店内に流れるBGMに耳を澄ませ外を眺めてみると、蘭ははっとした。

——あれ…、
  この店、ほかのところに比べて、かなり空いてない?
  …まさかこの子…、最初から 人ごみが嫌いだったんじゃ…?

蘭の心配をよそに、
哀は器用にフォークを回して、蟹のクリームパスタを食べている。

「食べないの?」

哀に不思議そうな顔をされ、蘭は慌てて視線を前へと戻した。

「あ、いや、食べるよ!!でも…」
「?」

さっきまで、踊るように動いていたフォークは、
音を立てずにその動きを止めた。

「でも、哀ちゃんに迷惑かけてないかなって、心配になって。」
「ふふっ…」
「え…?」

哀が、笑った——

蘭が、初めて見た笑顔だった。
いつも目にする、妙に大人びた顔じゃない。

「まさか、私が人ごみを嫌いなんじゃないかって…、
 思ってたんじゃ、ないでしょうね…?」
「?!」
「心配しないで。
 後で 博士に羨ましそうな顔をされたくないだけだから。」
「…なら、よかった。」
「ま、博士も 毎日これぐらい歩いてくれればいいんだけど。」

そうだよね。
うん、そうだ。

蘭が一人で呟いていると、

「麺、伸びるわよ。」

と哀が言った。

その言葉に、蘭も慌てて ペペロンチーノを食べだした。

その後は互いに無言だったが、
もう、気まずいとは、蘭は思わなくなった。


「言っておくけど、
 私、蘭さんのことは嫌いじゃないのよ。」
「ほ、ほんと…?」

観覧車の中、
蘭は思い切って哀の真意を、確かめてみた。

「ただ…、亡くなったお姉ちゃんに、すごく似てるから…。」
「そうなんだ…。」

きっと、
私を見ていると
良いことも 悪いことも思い出してしまうのだろう。
蘭はそう思い、
それ以上は何も聞かなかった。

「ねえ、蘭さん…。」
「ん?」
「連れて行ってほしい所があるの。」


「3…2…1…!」

バシャアアッ!!!

2人の周りに、ガラス色のカーテンが引かれていく。

「きれい…。」
「でしょ?これ、新一が教えてくれたのよ。」
「そうね…前に、話してくれてたわね。」

哀が蘭に希望したのは、広場の噴水だった。

蘭が記憶を失ってしまった、あの事件のあと、
こっそり哀が話を聞いたのだ。

やっぱり、憎めない——

そう思って、
哀は自分に苦笑した。
そして、蘭をまっすぐに見つめ、

「これからも、よろしくね…?蘭さん。」

優しく微笑んだのだった。