二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【銀魂】 鬼の鎖 【再会篇】 ( No.7 )
- 日時: 2015/03/19 17:22
- 名前: 花火 ◆Pt1jMZuGaQ (ID: bTQW6E54)
「ん…あれ、ここは…?」
どうやら一輝が目を覚ましたようだ。
ソファの上でその身をゆっくりと起こし、きょろりと周囲を見渡す。
「僕…どうしたんだっけ…。あ、ししょ」
「だいったいテメェがいきなりいなくなるから野郎共も一応心配してたんだぞあァん?!」
「しっかりと置き手紙はしておいたはずだ。えーと…さよならさんかくって書いていただろう」
「意味わかんねぇだろうがァァァァァ!! なにがさよならさんかくだふざけんな!!」
「ふざけているのは貴様の頭だろう。なんだそのモジャモジャは。ひきちぎってくれるわ!!」
「テンメッ引っ張んじゃねェ! てめぇこそなんだそのきたねぇ赤髪! 風呂入ってねぇのかコルァ!」
「もう二週間は入っていない! 禿げろ銀時!!」
「なに堂々と真顔で言ってんだァァァァァ! つーかテメェが禿げろ!!」
「何してんだテメェらァァァァァァっ!!」
03訓 演技って見てる方は感動したりするシーンでもやってる方はわりと恥ずかしかったりする
「……、で、銀ちゃんと怜は友達アルか?」
「「誰がこんなクソッタレと」」
怜と一輝は万事屋にて風呂を借りた後、机をはさんで銀時と神楽と向かい合っていた。
ご丁寧にも着物まで洗濯してもらい、今は借りた物を身につけている。
「ちょっと師匠! お風呂まで入らせていただいたのにその言い草はないでしょう!」
「やめておけ一輝、この男に関わるな。天パが伝染る」
「伝染んねーよ! 大体テメェが師匠なんていうたまかよ。やめとけ坊主、アホが伝染るぜ」
「大丈夫ですよ。僕はもとからアホですから伝染りません」
「アホはアホを呼ぶってやつアルな」
どうやら、とうに神楽の姉弟と師弟の違いの誤解もとけているらしい。
怜は気を落ち着かせるため、一旦ふぅと息を吐いた。
「…ひとまず風呂の礼を言おう。さんきゅーべりまっちょだ」
「感謝の気持ちが全然伝わってこねーんだけど」
「つーか、なんであんなところで干からびてたアルか? オメーら流浪人なら一応は金もってんダロ」
「じ…、実はちょっとした騒ぎに巻き込まれまして…。その時にお金が全部なくなったんです…」
「どーせあのアイスクリーム屋の一件だろ。見てたけどよ、アレは怜が悪ぃだろ。腕プラーンってなってたもの」
「…その後警察に通報され、最終的にこちらが悪いとなった。そして金を払ったらもうパーだ」
ウフフフフフフと遠い目でどこかを眺めている師弟。
で、と銀時は若干冷や汗をかきながら尋ねる。
「オメーら、これからどうするつもりなんだ? 金もねェんなら宿もねぇだろ」
「…案ずるな。宿のことならば心配いらない。なんとかなるさ」
「そうかよ。ま、てめぇで何とかするんだな」
「寝る場所はこのソファでなんとかなるだろうし…あとは食料だな。お前が作ってくれればなんとかなる」
「ちょっと待たんかいィィィィ!!」
銀時はどこからか取り出したハリセンで勢いよく怜の頭を叩いた。
かなり痛かったのだろう、頭をおさえながら、怜は銀時を睨む。
「何をするんだ。脳細胞さんが死んでしまうだろう!」
「てめぇの脳細胞さんは元から死んでるようなもんだ! つーかおまっ、万事屋に住む気だろ?!」
「当たり前だろう。昔からの顔馴染みだろう、かたいことをいうな」
「ぜってぇ嫌だぞ俺ァ!! 大体万事屋だっていっぱいいっぱいなんだよ!! 他いけもしくは野宿しろ!!」
全力で銀時は叫ぶ。彼らだって今月の家賃もまともに払えていないのだ。
そんな身の上で、さらに二人を泊めるなんてことは、不可能同然である。
「そう言うな。こんなにも人が下から頼んでいるんだ、許可しろボケ」
「どのへんが下から頼んでるんだどのへんがァァァァ!!」
「チッ…この分からずやめが。女王の心の広さを見習え」
「怜、一輝。お前らなら大丈夫アル。野宿でもやっていけるネ。ダンボール食いながら生きるヨロシ」
「ダメです師匠、女王あっさり見捨ててきまし…グォブゥッ」
「「「?!」」」
いきなり吐血した一輝に、全員が驚いた。
一輝は口元をおさえながら、その場にバタリと倒れこむ。
「い…一輝ィィ! 一輝、しっかりしろ! クッ…持病がでたか…!」
「じ、持病?! 一輝、病気アルか?!」
「し…ししょォ…だ、大丈夫、です…ぼ、ぼくは…ぐふぇっ」
「一輝ィィィィィィィィ!!」
昼ドラ劇場を繰り広げている師弟を、ガクガクブルブルと震えながら銀時と神楽は見ている。
その間にも、一輝の吐血は続いているようだ。
「し、師匠…。やはり…僕には、えどの、空気は…あわぬようです…」
「そんなことはない。お前があれほどにまで来たがっていた江戸だろう…っ」
「こんな、ところで…野宿なんて、したら…三日と、もたず…僕は、死んでしまう…」
「安心しろ…。私が、私が今すぐにでも宿を、あっ金ないんだった」
「そう、でしょう…病院に、も…行けず…僕は、死にゆくしか、ない、の、で…ぐぼぁっ」
「い、一輝! しっかりするんだ、一輝! いっ」
「あああああああああああっもういいわァァァァァァ!!
住めばいいだろォォ!! 一輝クン持病あるし野宿できねぇから住めばいいだろォォォォ!!」
耐え切れなくなった銀時が、ついに大声で叫んだ。
神楽も涙を滝のように流しながら、ガクガクと頷いている。
「で、です、が…僕たち、おかね、が…」
「もういいよォ! そのかわり働けよ! 怜がな!」
「す、んでも、いいんですか…?」
「いいっつってんだろ!!」
銀時がそう叫んだ瞬間、その劇場は終了した。
それと同時に、ピッという何かの機械音。
「それは有難いな。よかったな、一輝」
「はい、師匠! いや〜ホントに感謝ですね〜!」
「「……」」
怜の手に握られたボイスレコーダーと、けろりと表情を変えた一輝を見て、銀時と神楽はかたまった。
次の瞬間、ブチィッとその額に青筋が浮かぶ。
「「てめえらァァァァ!! 騙したなゴルァァァ!!」」
『あああああああああああっもういいわァァァァァァ!! 住めばいいだろォォ!!』
「ほら、いましがたこう言ったのはお前だろう、銀時」
「てんめぇぇぇ…!」
わざわざボイスレコーダーを再生し、にぃっと怜は笑った。
ご丁寧にもそれ以外の部分は録ってないらしい。この女は昔から悪知恵だけはよく働くのだ。
「というわけで、世話になる、銀時」
「いますぐ出て行けやボケ!!」
(僕の演技よかったですか、師匠!)
(完璧だ。流石、私の弟子だな)
(弟子に何教えてんだテメーはァァァァ!)