二次創作小説(紙ほか)
- Re: 「アイシテル」の言葉じゃ、足りない位に君が好き。 ( No.12 )
- 日時: 2015/01/26 19:55
- 名前: らいち。 (ID: eK41k92p)
3.always〈ワームズ・咲良〉
貴方はいつも、そうやって…
Answer(コタエ)にならない答えを、私に告げる。
届きそうで、届かない。
今でもずっと、不思議なんだ。
貴方と出会ったことが
幻のような気がしてしまって。
でも、
温かい 小さな手のひらが
「ホントだよ」
って 教えてくれたの。
貴方と同じ瞳の色で…。
最近、義母さんに そっくりになったな。
シルバーのリングにターコイズが埋め込まれた、結婚指輪。
あの人からの、贈り物。
左手薬指を見ると、
あの日の事を思い出す。
立ち入り禁止区域に迷い込んでしまった、あの日。
冷たい雨が、
ミストのように降り注いでいた。
———咲良…お父さんが…亡くなったわ…
母のかすれた声が蘇って。
ワシントンのど真ん中で、ボロボロ泣きだしちゃった。
水色の傘に コロンと弾ける雨粒。
「ごめんなさい…」
分厚い雲が敷き詰められた空に向かって、話しかけた。
彼の青い瞳と 目が合った気がした。
でも、私の心の声は 届くはずも無い。
父は、隔世遺伝で瞳が青色。
私から見た曽祖父が、イギリス人だからだ。
一度だけ、祖母から写真を見せてもらったことがある。
優しい顔だった。
そして、放心状態でふらついていたら…
この様だ。
「え゛…嘘でしょ…?」
廃墟が立ち並ぶ、言わば『立ち入り禁止区域』に迷い込んでしまった。
しょうがないので 東に向かって歩いていく。
でも。
歩いても
歩いても、
歩いても!!
同じ所に戻って来ちゃう!
まさか私って…
方向オンチ、だった?!
もうやだ。
さっきとは違う意味で 泣きそうになってくる。
——もー。
咲良ちゃん、ドジすぎだよ〜
渉君の声が、耳の奥でする。
そうだよ。
アタシは、ドジでバカで、のろま。
だから今も こんな目に遭っている。
両想いになったら、親友と絶縁するハメになった。
成績が上がったら、いじめられた。
テニスの大会で優勝したら、ペアが退部した。
夢が叶ったら
お父さんはいなくなった
幸せになると、
いつだって、
酷い仕打ちが襲い掛かる。
生きている価値なんて 無いんだ。
そう思ったら、
蒼い瞳から、どっと涙が溢れだした。
どんどん強く降り始めた、この雨のように…
- Re: 「アイシテル」の言葉じゃ、足りない位に君が好き。 ( No.13 )
- 日時: 2015/01/31 13:17
- 名前: らいち。 (ID: .OVIgGEm)
————ぱしゃ…
————パシャ…
しばらく大泣きして、人が近づいてくる音で正気に戻った。
————パシャリ…
え。
こんな所に、人っているの?
誰かが、助けに来てくれたの?
そんな事を思う時点で もうおかしいってこと位、
分からなくなってしまっていた。
顔を上げたら
激痛が走って、傘がどこかに消えていて…
声にならない悲鳴をあげながら、ヒールを蹴散らして、
必死になって走った。
音の主も 同じように追いかけてくる。
———お父さんの分まで、ちゃんと生きなさい!
ごめん、お母さん。
アタシ…、約束、守れないかもしれないよ。
そうは思いながらも、
手探りでバッグから携帯電話を取り出して 911にかけようとした。
その瞬間、
耳をつんざくようなすごい音がして、
音の主の気配が しなくなった。
思わず私も倒れ込んでしまう。
誰…?
力を振り絞って身体を起こすと、
そこには———
「I just called for first aid !! Are you sure about this?!
(救急を要請したぞ!!おい、大丈夫か?!)」
彼がいた。
退院の1日前。
「そういえば…君、日本人だったんだな。」
ネームプレートをちらりと見やりながら、
ワームズは言った。
「えぇ。
半年ほど前に、渡米してきたんです。
小さい頃からの夢を、叶える為に。」
「そうか…。きっと叶うさ。
あんないい名前をくれた両親が、育てたんだからな。」
少し嬉しかった。
でも、彼の切なそうな笑顔に、少し胸が痛んだ。
それから1か月後。
偶然カフェテラスで見かけたたのを境に、
私達はよく会うようになっていた。
彼は いろんな話をしてくれた。
好きなアーティスト。
アメリカのこと。
あの事件で知り合った(正確に言うと、前から知ってたんだけど)ジェイムズさんのこと。
でも、
1つだけ、
話してくれなかった事が…
そう…
家族のこと…
——ご両親は、どちらに住んでいるんですか?
——あ…いや……
悪いが、話したくないんだ…
すまない…
その後、彼の具合が悪そうに見えたので、
すぐに帰ったけど…
何か、辛い出来事を思い出してしまったのだろうか。
でも、
そんなことは夢幻だったかのように時が過ぎ、
出逢ってから1年半後に入籍した。
- Re: 「アイシテル」の言葉じゃ、足りない位に君が好き。 ( No.14 )
- 日時: 2015/01/31 14:07
- 名前: らいち。 (ID: .OVIgGEm)
「悪いな。いつも仕事ばっかりで。」
「いいのよ。寂しくなんかないもの。」
彼はいつも、出かける前に謝っていた。
だから決まって、こう答えている。
しょうがない。
「そういうわけじゃなくて。」
「え?」
気がつくと、温かい腕の中にいた。
「こんな最低な『パパ』、いるかよ?普通。」
「みんな、そういうものよ。」
「何言ってんだ。
もう少しで9か月だろ。きっと怒ってるぞ、この子が。」
「まあ。」
微笑ましい。
そういうところが、素直すぎるんだもん。
「待ってられないから、早く出てきちゃおっかな〜」
「う」
半分冗談をまじえて、からかってみる。
ホントのことだったのか、奈都がお腹を蹴ったのがわかった。
「勘弁してくれよ。じゃ、行ってくるからな。」
「行ってらっしゃい。」
その日から丁度4年後。
奈都はすっかり、パパっ子になった。
ワームズと同じ瞳の色で、
(彼曰く)くるんとしたまつ毛が私と一緒。
(これもまた彼曰く(笑))お義母さんに似てパッチリした二重で、
癖のある前髪はパパ似。
色が白いのは、私似かな?
「パパ、行ってらっしゃい!」
「寂しくないのか?奈都。」
「だって、5歳の誕生日には 帰ってくるんでしょ?」
「そうだけどな…」
「ん?」
まだまだ純粋な、4歳。
1年がどれほど長いものなのか、わかっていないに違いない。
そしてまた、辛い運命が待ち構えていることにも、
気づいていないのだろう。
「もしどこかでパパを見かけても、絶対、無視するんだぞ。
分かったな?」
「え?なんで?」
「そういうお仕事だからだ。」
「うん、わかった!」
この物わかりの良さが、後で取り返しのつかないことになる。
「じゃあ、行ってくるよ。
絶対に…生きて帰るからな。」
「ええ。気をつけて。」
これが、最後に交わした言葉だった。
生きていることがわかってるのに、会えない…。
だから毎日、
私は 祈りを捧げるの。
せめて、彼の命だけでも、守ってあげてください。
って————
≪I return on that day and want to tell if a wish comes true,"I love you"≫
Sakura Seri(Maiden name:Matsuda)