二次創作小説(紙ほか)
- Re: 「アイシテル」の言葉じゃ、足りない位に君が好き。 ( No.2 )
- 日時: 2014/12/21 21:13
- 名前: らいち。 (ID: f9c/TndF)
1.Your best friend(Peace!さんリクエスト〈蘭・園子〉)
「良かったわ、蘭。ちゃんと記憶が戻って!!」
閉園まで1時間のトロピカルランド。
そう、私が一時的に記憶を失ってしまった、あの事件の日。
「うん。園子ー、ちゃんと『あの日』のことも憶えてるよ。」
「『あの日』?」
話は 私たちが幼稚園生だった頃に遡る—————
「じゃあ有希子、今日もよろしくね。」
「ハイハーイ。いってらっしゃい♪」
ハイヒールをカツカツ鳴らして、お母さんは走っていった。
新一のお母さんの腕時計を見上げると、
短い針は8と9の間、長い針は丁度6を指している。
「ごめんね〜蘭ちゃん。新一 まだトイレなのよ〜」
「ううん。大丈夫。」
幼稚園になってから、いつもこう。
お父さんには会えない。
お母さんも 少し怒ってる。
お父さんもお母さんも…どんな顔で、笑ってたっけ?
静かで眩しい景色に、お母さんが吸い込まれていく。
園服の裾を握りしめようとした時、
何かが私の手を包み込んだ。
「蘭、行こう!」
びっくりして横を向くと、笑っている新一。
「もう、新ちゃん!遅い!」
「ごめんなさーい」
新一のお母さんも私の手をとり、
3人並んで 誰ともなく歩き始めた。
幼稚園に着き、2人だけで教室に向かった。
相変わらず 気分は重い。
それでも、私の手を握る新一の手は、温かかった。
「そーいえば、新しい友だちが来るらしーぜ?」
「新しい…友だち?」
「あぁ。何でも、すっげー金持ちって。」
その時、裏手のほうで 黒塗りのベンツが停まったなんて、知るよしもない。
「早く行こうよ」
早くも上履きに履き替えた新一が、私を呼んだ。
「う、うん。」
私も急いで行こうとしたが、
かばんが妙に軽いことに気がついた。
慌ててチャックを開ける。
「あぁ〜!お弁当が無い!!」
空っぽのかばんの中で、連絡帳が ぱたんと音を立てて倒れた。
「マジ?」
新一も、かばんの中を覗きこんで、目をパチクリさせた。
- Re: 「アイシテル」の言葉じゃ、足りない位に君が好き。 ( No.3 )
- 日時: 2015/01/10 12:01
- 名前: らいち。 (ID: Rzqqc.Qm)
「鈴木園子でーす!!みんなヨロシク!」
例の『新しい友だち』は彼女だった。
でも 素直に喜べない。
どうしても、頭から離れないのだ…
朝の町にお母さんが溶けていく あの後ろ姿が——
いつもなら、
「何ボーっとしてんだよ。らしくない。」
って慰めて(?)くれるはずの新一も、
年長からクラスが替わってしまったために ここにはいない。
ちょうど太陽の光が差し込む教室の窓。
すぐ近くに見える木の枝で戯れる小鳥たちを見つめていると、
ふと 目の前が暗くなった。
「ねぇ、ここ いい?」
園子、だった。
「ウン、いいよ」
なんとなく顔が引きつった気がした。
それに気づかれたらおしまいだ。
「へへ。ありがとー
…どうしたの?そんな顔して。」
「なんでもないよ。ごめんね、園子ちゃん。」
気づかれたかと思って、また よそよそしい態度をとっちゃった。
「そーぉ?じゃ、わたしのことは『園子』でいいから。あ———」
いたずらっぽく笑った園子は、
どうやら 生まれつきらしい茶色の髪をゆらして、何か言いかけた。
だが…
「園子ちゃん、あそぼー!」
「ねえねえ、どこから来たの??」
と
他の女の子たちの引っ張りだこになってしまった。
仕方ないだろう。
自己紹介から あんなに元気いっぱいで…
みんな 取っつきやすいんだろうから…。
どうすることもできず立ち尽くしていると、
廊下のほうから いつもの男子達の声がしてきた。
「やーい!毛利蘭の弱虫ぃ〜!!」
「べーだ」
新一のクラスのヤツらだ。
最近、何かにつけて つっかかっってくる。
弱虫なんかじゃないもん
そう言おうとした瞬間、
ものすごいスピードで飛んできたボールが
そいつらに直撃した。
「いってー!!誰だよ!!」
その中のリーダーが、
大声を出して 辺りを見回した。
泣きだす下級生もいた。
「オレだよ。なんか文句あるか。」
生意気な口調とともに
そこに現れた、ボールを吹っ飛ばした犯人は…
「し、新一!」
私が叫ぶと、
男子たちは 不機嫌そうに、園庭へ走り去った。
「ダメだよ!人にボール当てちゃ!!」
「じゃあ、お前はずっと言われてたいの?」
巻き込みたくないがゆえに 私は新一を怒ったのに、
一瞬で立場が逆転した。
「蘭。少しは言い返せ。」
「でも———!」
言おうとしたんだから!
その言葉が出てこなくて、俯くしかできなくなった。
「やさしさだけが、正義じゃない。」
そう言って 新一も園庭に出て行った。
- Re: 「アイシテル」の言葉じゃ、足りない位に君が好き。 ( No.6 )
- 日時: 2015/01/05 19:07
- 名前: らいち。 (ID: 4sTlP87u)
お弁当の時間になり、
先生に何も言えなかった私は
トイレに行くと言って、教室を出て行った。
下級生たちの『お弁当の唄』が ちょっぴり不気味に響いている。
「もう…嫌…」
私は ウサギを見ながら、
冷たいコンクリートの上に へなへな座り込んだ。
白い地面が、ぽたぽたと黒く染まっていく。
うずくまりながら、
お母さんの走り去る姿を また思い出してしまった。
もう、帰って来ないんじゃないか…
そう思った。
——毛利蘭の弱虫ぃ〜!!
さっきの 言葉も、同時によみがえる。
ふいに悔しくなって、
コンクリートを思い切り叩こうとした、その時。
「蘭!」
記憶に真新しい 明るい声が、私の名前を呼んだ。
- Re: 「アイシテル」の言葉じゃ、足りない位に君が好き。 ( No.7 )
- 日時: 2015/01/06 13:56
- 名前: らいち。 (ID: .VvRUm0J)
びっくりして 顔を上げると、
目の前に ピンク色の三角形の容器みたいなものが、差し出されていた。
恐るおそる、視線を もう少し上にずらすと、
私に笑いかける園子がいた。
「一緒に食べよ?蘭。」
「え?どうして、私の名前…」
なぜか名前を知っていた。
「さっき聞こうとしたんだけど、みんなに連れてかれちゃったから。
先生に教えてもらったんだ〜」
そう言いながら、
園子は ピンクの容器の上半分を開けて、私に持たせた。
「おにぎり?!」
どうでもいいことなのだが、
それが 私の人生で初めて見た『おにぎりケース』だった。
「ほらぁ、食べた食べた!」
「うん…いただきます!」
そのまま、おにぎりにかぶりついた。
美味しい。
いつの間にか コンクリートにシミを作っていた涙は無くなっていた。
少し前、
お母さんとも こんな風に一緒にご飯を食べた。
「蘭。世の中にはね、おかしなことが いーっぱい、あるの。」
「おかしなこと?」
「そう。
悪いことをしたのに それを認めなかったり、
逆に、何もしていないのに 悪い人にされちゃったり。
…ひどいでしょ?」
「ひどい!」
「だから お母さん、そういう事を無くしたくて 弁護士になったの。」
「へぇ。お母さん、すごいね!」
いつか話してくれた、お母さんの『正義』。
胸に光る向日葵のバッジが、すごく誇らしく思ったっけ。
優しいお母さん。
笑ってるお母さん。
料理が上手じゃないお母さん。
いつもお父さんを待つ、お母さん。
全部が、私は大好き。
「蘭…?」
気づいたら、泣きながら おにぎりを食べていた。
そんな私に 園子は少し戸惑っていたけど、
「よく分かんないけど、美味しいモン食べれば ぜーんぶ忘れられるよ!
それ、家のシェフが作ったヤツだし、間違い無いわ!
…余りもので作ったのだけどね。」
と言ってくれた。
「ありがとう…園子…」
「いーのいーの!!」
しょっぱくなっちゃった、おにぎり。
でも 何かものすごく、大切なものに触れた気がする。
そして、その瞬間から、
私達は 大親友になりました———
≪I want to infrom Sonoko,"I love you".≫
Ran Mouri