二次創作小説(紙ほか)

Re: サトミちゃんちの8男子『おとぎ話の試練を与えリュッ!』 ( No.96 )
日時: 2017/04/17 19:19
名前: 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM (ID: VNx.OVCe)


「はぁっ……はあっ…………」

 ガラスの靴で走るのは痛いけど、あたしはホールのなかを走り回って王子様を探す。時計を見たら針がもう少しで12を指しそうになっていたから、早く見つけなきゃ。

 ——ボーン……ボーン……
 ソウスケっぽい赤髪の男性を見つけたところで、時計が12になったことを告げてきた。
 あと少しだったのに……でも、もうここは帰るしかない。今までシンデレラっぽくないストーリーだった分ここはちゃんとやらなきゃ!

 あたし、一心不乱に階段を駆け降りる。一心不乱、ってよく意味は知らないけど……階段を駆け降りるのは慣れてるからね!

「………サトミちゃん?」
「………ケノ!?」

 ——ちょうど、ガラスの靴が脱げたところでケノに呼び止められた。
 あたしは片方裸足のままで、ケノに近寄る。一瞬ビックリしてたけど、落ち着いて意味を理解したみたい。

「サトミちゃん、早くおうちに帰らないと」

 ケノに手を引かれて、あたしはさっきまでなかった馬車に乗り込んだ。馬車はカボチャの形はしていないけど、ハートの飾りなんかも付いていてとっても可愛い!

 ——何て、思ってる場合じゃなかった。あたしがさっき落としたガラスの靴はソウスケが拾ってくれるから良いとして……試練、って何だろう。

「サトミ様! 到着しましたよ!」

 馬車の扉が開いて、いつもの聞きなれた声がした。——って、シノ!? 手綱を引いて馬を走らせていたのは、シノだったの!?

 驚きながらシノの顔を見ていると、シノは案の定暑苦しい笑顔を向けてきた。——今はにっこり笑ってる場合じゃないんだってば!

「た、ただいま帰りました〜」

 恐る恐る玄関を開けて、あたしはリビングに届くように声を出す。——リビングからはあたしを怒鳴る声がしなかった。まだ帰ってきてないのかと思ったら——。

「キャアッ、王子様カッコいい!!

 王子様——ソウスケを見て、うっとりするカオルン。両手を合わせて腰をくねくねさせて……試練の中でも変わらないなんて、さすが。

「——あぁ、あなたがシンデレラでしたか」

 ——まるで、占いの営業の時に使うような声でソウスケはあたしの前に立ち右手をとった。

「そ、そうだけど……」

 ——あっ、しまった。
 ソウスケだから普通に話しちゃったけど、ここのなかでは王子様なんだ。フネおばさんの目がさらに鋭くなって、あたしを睨んでる。

「靴、履いていただけますね?
「は、はい……」

 家では見せないソウスケの顔にドキドキしながらもあたしは答える。すぐそばにあった椅子に腰かけてガラスの靴を持って——当然だけど、すっぽりはまった。

「おぉ、やはりあなたが!」

 ソウスケの後ろにいた傭兵さんがそう言って、ソウスケの目が光輝いた。



「——では誓いのキスを」

 あたし、何故かウエディングドレスを着て協会にいる。シンデレラってこんな話だっけ? って思いながら隣——ソウスケに目を向けると、ソウスケは軽く微笑んであたしのベールを外そうとした。

 ——その瞬間。
 指にはめられたサファイアの宝石が青色の光を放ち、

「!?」

 ——気づいたらあたしは元の自分の部屋にいた。

『ふぅん……今回はなかなか簡単な試練だったから……これくらい出来て当然なのであリュッ!』

 どこら辺が試練なのか分からなかったけど、とりあえず合格したみたいでよかった!

『続いての試練は美女と野獣。やリュか?やらないか? 10、8、6、……』
「やります!やるやる!」
『そうか……ではこのビーズを握り、目をつぶリュがよい』

 そう言ってリューに渡されたのはピンクのビーズ。——ブンゴのビーズだ。

 ギュッと目をつぶると、あたしは深い深い眠りに落ちた。