二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【HGSSキャラ】ヒビキたちの物語 ホラー編!! ( No.46 )
- 日時: 2016/02/07 10:51
- 名前: ゆーい (ID: x8l1Qes7)
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28話:事実
食堂って意外に落ち着く場所なんじゃないかと前も思ってたけど、
今居て、改めてホッとする場所だと感じた。皆にも落ち着く場所ってあるよな。
俺にとっては食堂は落ち着く場所っていう存在なわけさ。
しかも、結構食堂ってもんはガヤガヤざわざわしてるから静かな場所で変なこと話すよりも、
ガヤガヤしてる場所で話した方がまわりのやつにも聞こえずらいと思うしとっておきの場所だ。
でもどういうわけかこの旅館はどこも静かで、ここの食堂と呼ばれる場所も静か。
なんとなく落ち着かない。話したいこともいっぱいあるんだけど、こんな空気じゃ話せそうにもない。
女将さんたちだって全くと言っていい程話さない。来た時からこの旅館は静かだったしな…
「あの、レッドさん。なんか物凄く静かじゃないですか…?」
もう空気に耐え切れず、俺は隣にいたレッドさんに話しかけた。
レッドさんはこちらをちらっと見るとボソッと小さな声で話した。
「…この空気だと喋りずらいしね。俺もあんまり慣れてない人の前で話すのは嫌なんだ」
「そうなんですか…なんかすみません」
「いいよ、謝んなくても。別に悪いことはしてないんだし」
レッドさんはそう言った後、くるっと元の向きに戻った。
喋るにもなにも、この空気じゃ話しずらいのも俺だってわからなくもない。
夕食を黙々と食べていたからあっという間に食べ終わってしまった。なんだか物足りない気もしたが、
だるくなってきたので片づけて部屋に戻ることにした。
「ご馳走様でした」
「あれ? ヒビキ…今日は食べんの早いなのな。いつもは遅いのに」
まだ食べ終わっていないシルバーが今になって話しかけてきた。
俺はそんなシルバーにムキになってこう言った。
「俺だって黙って食べりゃあ、早くもなるわ。お前も早く食べろよ」
「はっ、お前は早く部屋に戻れよクズ」
鼻で笑われてムカッとした。しかし、こんなところで言い争っても仕方ない。
シルバーを睨みつけた後、食堂から出た。
そういえばコトネは夕食を食べていない…部屋で寝ているはずだ。
…夕食を部屋まで持っていこうかな…
どうせ俺もコトネと一緒の部屋だし、持っていっても悪くないだろう。
あぁ、でも戻ったらシルバーになんか言われそうだ。しょうがない、取りに行くか。
「女将さん、コトネっていう子がまだ夕食、食べてないんです。なので、夕食貰えますか?」
近くにいた女将さんに言った。しかし、女将さんは何も言わない。無言のままパンだけくれた。
黒糖パンだろうか…?
「あの、これって黒糖パンですか?」
「……どうして、自分から夕食を食べに来ない子に豪華な食事をあげなきゃならないんですか?
普通は食べに来るはずです。そのパンだけでありがたいと思ってください。言っておきますけど、
ここは山の中なんですから食べ物は貴重なんです。無駄にはできないんですよ?」
「で、ですけど! ここは旅館ですよ? どうして…」
俺が言葉を続けようとしたら、女将さんは大きな声で叫ぶように言った。
「食べ物を貰う方が何言ってるんですか!? 文句言うなら食べなきゃ良いじゃないですか!
私なんて昔食べさせてももらえませんでしたよ!! 奴隷のような存在として毎日毎日嫌なのに言えず、
死ぬほど働かされて! 食べ物も…ろくに食べさせてもらえなくて…狂うような日々でしたよ!!」
俺は女将さんの発した言葉にぽかーんとしていた。
同じく、それを見ていたシルバーとレッドさんも唖然としていた。
すると、さっきまで静かに食事を作っていた女将さんがこちらへと来た。
背が高く、ガリガリの痩せ体型ではないが細い。顔立ちがイツキさんとキイさんに似ていた。
もしや、姉妹か?
「何をやっているのアオ。今の発言はお客様に失礼よ。これは姉の権利がある私だから、
言えることだけれど。あなた、今日は自棄に機嫌がよろしくないのね。
何か機嫌を損ねるようなことでもあったの?」
アオと呼ばれた女将さんは、こちらにやって来た女将さんを睨み付けた。
「うるさい、シオリ姉。何をしようと私の勝手でしょう?それにキイとイツキはどうしたのかしら?
見ていてって言ったじゃない。私の我儘すら聞いてくれないの、シオリ姉。
あぁ、そうよね! 私の気持ちがわからないから聞いてくれないのね!
酷いわね、こんな簡単な我儘も聞いてくれないなんて。
まぁあの子たちも私たちと同じ目に合うんだからいいかしら。ねぇ? シオリ姉」
シオリさんはアオさんの話を真面目な顔をしながら聞いていた。
やはり、この二人は姉妹のようだ。イツキさんとキイさんとも関係性があるみたいだ。
唯でさえ悪い空気がもっと悪くなっている。これはまずい。早くなんとかしなければならない。
俺はとりあえず止めることにした。
「やめましょうよ、言い争いは! 嫌な空気になっちゃいますよ!?」
「じゃあ…じゃああなたは私たちの思いがわかるの!? …わからないわよね」
さっきの睨み付ける表情から一変し、悲しそうな顔をした。
「…そんな顔されちゃあ内容がわからなくても思いはわかりますよ…」
「………!!」
アオさん、シオリさんは二人して驚いた顔をした。
「じゃあ、私たちの話、聞いてくれるわね…?」
「シオリ姉…!? まさか、あれを話す気なの…!?」
「話さなきゃわからないでしょ。いいじゃない、わかってくれるんだから」
シオリさんは目を閉じると、一回深呼吸をした。
「…私たちはね、無理矢理この旅館に連れてこられてた。二年前位かしらね…
そのとき私は二十二歳、アオは二十歳、キイは十八歳、イツキは十六歳だったわ。
働けって言われて朝から晩まで休む暇なく働かされた」
「そんな歳で、全員無理矢理働かされていたんですか…!?」
「働いていたのは私とアオだけだった。キイとイツキは働いていなくて部屋に閉じ籠ってた。
色々あって辛かったわ。ここで働いているおばさんたちも私たちと同じようにここに来て、
いいように使われたらしい。今ならわかるわ。おばさんたちがどんなに苦しい思いをしてきたか…ね」
「そうなんですか…それで今こんな状況におかれてるんですね…」
シオリさんは、ゆっくりと頷いた。そのすぐあとにアオさんが話し出した。
「主はテレビで出ているあなたを気に入っていたのよね…」
「俺…がですか?」
「ええ、そうよ。でもそれであなたたちが来るとは思ってはなかったわ。
テレビで出てから一年半が経っていたのに…本当にあの人は気味が悪いわ。
だから…だからここは危険。早く出て行った方がいいと思うわ…それに…」
そのとき、食堂のドアが開いた。そこにはおじさんが立っていた。
「…ヤマシロウさん…どうしてここに…」
おじさんはヤマシロウという名前だったらしい。
ヤマシロウさんはにっこりすると、その顔のままいやーなことを言った。
「あとで、話があるんだ。ヒビキくん、シルバーくん、レッドくん、君たちは自分の部屋へと戻りなさい。
僕はこの子たちと話すことがあるからね。ねっ、シオリちゃん、アオちゃん?」
「はい……じゃあねヒビキくん。気をつけて戻ってね…」
シオリさんとアオさんはヤマシロウさんと共に奥へ行ってしまった。俺とシルバーとレッドさんは食堂を出た。
上へと行く階段を上る。隣を歩いていたシルバーが難しい顔をしながら喋る。
「辛いことあったんだな、女将さんたちって…衝撃的な事実を聞いた気がするぜ…
俺たちにはどうにもできそうにないな…」
「……そうだ…な。俺たちも考える必要がありそうな感じがする」
「…ってもう部屋についた。」
レッドさんの言う通り、もう部屋がある階へと来ていた。
「二人とも、自分の部屋で疲れを癒しなよ。俺はじっくりこの旅館にいる間のことを考えてみる。
それじゃあ、おやすみ」
「じゃ。ヒビキ、またコトネ泣かせんなよ〜」
「泣かせるか。じゃあな」
二人とも自分の部屋に入って行った。俺も自分の部屋へと戻る。
アオさんの言っていたことを思いだした。
俺はそっと、手に持っていたコトネへと渡す黒糖パンを見つめた。
続く
あとがき
衝撃的な事実だったりそうでなかったりした今回、どうだったでしょうか。
イツキさん、キイさん、アオさん、シオリさんは4姉妹です。今回初登場のアオさんと
シオリさんは22歳と24歳ですね。あれ、計算合ってるよね?うん。
アオさん、酷いこと言ったようで言ってないんです。ただ、食べ物は粗末にすんなって
ことを言いたかったんです。悪気はなかったんですよね、アオさんにも。
私的に4人ともお気に入りです。イメージ絵は知り合いに描いてもらいたいと思います。
次回は何を書こうかな〜…徐々にこれまでの話も修正していきたいんで、投稿はゆっくりに
なってしまいそうですね……でも出来るだけ頑張ります。
それでは、また次回!!
次回→>>47