二次創作小説(紙ほか)

Re: 【ポケモン】ヒビキたちの物語 ポケモン×東方編 ( No.245 )
日時: 2016/04/06 11:40
名前: ゆーい ◆p17PNBs1wA (ID: hfVure16)
プロフ: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?mode=view&no=10940

※死ネタあり、哀歌=エレジー って読んでくれるとわかりやすいと思います


>>245


シルバーの哀歌 2


屋上ってこんなに風吹いてるもんだっけ…
ただ単に俺がそう感じてるだけか?
この屋上に来るのはあの日以来か
この、コガネシティの屋上に来るのは…


そんな事を考えていた、そのときだった
少女の影が幻覚として見えた
あの轢かれるときの少女の─────


「っ…ダメだ…! 思い出しちゃいけない…!」


「シルバー…なのか?」


後ろから声がした
俺に話しかけてきたのは、ジョウト・カントーと制覇した少年、ヒビキだった


「奇遇だな、こんなところで会うなんて」

「…あいつ…あっちの世界でも上手くやってんのかな」


「…………………」


「黙るなよ! 冗談だって…冗談…」

「なんで…なんであいつなんだよ…」


俺らの声は、お前に聞こえているのか?
お前には、耳に悪いノイズの様にしか聞こえないよな
…聞こえて、ないよな

だって
俺らが殺した様なもんだから


「いつまでもここにいても仕方ないし、帰る! じゃあ、またな」


ヒビキはそう言うと、帰って行った
愛想笑いをしながら
少しの涙を流しながら


─────・・・


『ごめ…シルバー……』


『別にいい。俺、お前に興味ないし』

『それに、お前に泣かれても何すればいいかわかんねえし』


『で、でも…! ──シ────事─』


アイツはあの時なんて言ったんだろうか…今の俺にはわからない
俺の心は霧のかかった様になっていて…
前が見えない
前に進めない
心の奥から何かを伝えようとしても、駄目だ



─────・・・


ここは、どこだ…?
俺が目覚めた場所は、コガネシティだった
今は朝の早い時間…どうやらこれは、夢の中のようだ

目の前には、心から好きな少女が笑って立っている
その少女は俺に笑いかけると、スタスタと朝焼けの中に去っていく
それはまるで、朝焼けに溶け込みながら消えていく様な感じだった
俺はその背中を追いかけなかった
…いや、追いかけられなかった
少女は俺を残して、溶けていくように一人で消えていった


─────・・・


「はあ…!! はあっ…!! ……また…この夢かよ」


先程のは、本当に夢の中だった
あの夢を見るのはこれで……
数えきれないくらい見ている
アイツが死んでから毎日のように見ているから

心臓の音が高鳴る
俺しかいない静かな部屋で、焦るような呼吸だけが聞こえる

昼間、ヒビキが言っていた言葉を思い出した


『…なんで…なんであいつなんだよ…』


その時のヒビキの表情は、苦しそうにもがく人の様だった


「……なんでっ……なんでお前だけ逝っちまうんだよ…!!」

「勝手に一人で逝かないでくれよ…!!」


俺の叫びは、静かな部屋の中で乱れる呼吸と共に大きく響き渡った


「………ぁ…! …く…っそお…!!」


過呼吸になりかけ、声が出ずらくなる
そんな俺に、過去の幻覚が容赦なく襲ってくる


『シルバーったら…私はここにいるよ』

『………なんで、そんな事言うの…?』

『言葉、出てこないよ…ごめんね、シルバー』


「な、んで…! 俺、あんな事言ったんだ…!」


『俺は…お前の顔なんか見たくないんだよ! …俺の前から消えろよ…!』


あの時の自分の言葉が耳から離れない
体に染み込んでいて離れない


そのすぐ後に、アイツは俺の前から消えた
アイツが死んだ日…その日の夜、夢の中でアイツは俺に言った


「シルバー…ごめんね。これで、君とはお別れだよ」


なんで

お別れなんて言うんだよ

まだ本当は一緒にいたいのに

君の声が

聞きたい


「もう一度、お前の声を聞かせてくれよ…なあ!」



3に続く→>>247