二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【ポケモン】ヒビキたちの物語 *ビターメモリーズ ( No.336 )
- 日時: 2016/06/11 14:07
- 名前: ゆーい ◆p17PNBs1wA (ID: hfVure16)
- プロフ: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?mode=view&no=10940
※死ネタあり、譚=物語 って読んでくれるとわかりやすいと思います。
前回→ >>251
ヒビキの譚 1
「コトネ、待てよ! まだ話は終わってない…!! なあ、お願いだから…!!」
「ヒビキくん、待てないの。ここで立ち止まったらダメなんだよ」
一人の少年と一人の少女が白い空間で言い合う。少年は少女の側に寄り、少女の手を掴んだ。
「わかって、コトネ…! 俺の言葉をそんな風に笑わうな…!! 助けてほしいんじゃないのかよ…!」
「どうだろう。私自身もよくわからないや。だってここに来たら帰ることはできないもん」
「俺は、俺は…! お前にこの気持ちが伝われと…!!」
「ヒビキくん、時間だよ。元の居場所に帰らなくちゃ」
少年の体が消えていく。そんな中でも必死に手を伸ばすが、その手は少女には届かない。
この夢でコトネを連れ戻さなきゃダメなんだ。
少年のいる場所は海底。これは夢であり、現実世界ではない。なのに灰がその場を包み込む。
少年はその場から姿を消した。
「はあっ…!… うう…なんで、戻ってこないんだよ…」
見る夢はいつも海底の夢。この夢を見始めたのは最近ではない。もう一年になる。
この夢を見ると息が苦しくなる。でも、半年前くらいからコトネを連れ戻したくて頑張っている。
ヒビキは胸に手を当てた。呼吸を整える。こんな時は外に出るのが一番いい。気分転換に外に出よう。
気を落ち着かせ、着替えて外に出た。
外の光はとても眩しい。ちょっとゆらゆらしてる感じがして、クラッとなる。
空を眺めた。眩しい光を放つ空に手を伸ばしてみる。
コトネに手を伸ばしてもいつも灰に遮られる。だから途中で夢は終わってしまうのだ。
誰も来ないような叢へと足を踏み込む。その場で寝転んだ。ボーッとしてると記憶が蘇ってきた。
夢の記憶だ。
『ふっ…ううっ……う、う…ふうっ…』
『コトネ、どうした!?』
『ヒ、ヒビキくん、だ、大丈夫だから帰って。ここはヒビキくんのくる場所じゃないよ…』
『大丈夫なんかじゃない! そんな辛そうな顔されて言われても困るんだよ…!!』
『大丈夫だから…!』
声を殺して泣いていたコトネを思い出す。こんな夢吐き出してしまいたいのに吐き出せない。
助けてあげたいのに助けてあげられない自分が嫌になる。
そんなことを考えているうちに、いつの間にか景色が変わっていた。
ああ、またこの景色だ。
光が泳ぎ、空にさざめいている。だが、ここは海底。空のような海底なのだ。
波がゆらゆらと揺れている。そのとき、コトネが遠くに見えた。…遠のいている。ただそれだけ。
手が届かない。でも、声は出せる。
「コトネ!!」
大声を出すと、遠くにいたコトネが振り向いた。驚いたような顔をしている。これでも目はいい。
「なんで、来ないんだよ! もうコトネは現実世界にいないからなのか!?」
もっと縋ってほしい。頼ってほしい。幼馴染だろ?
そんな風に言ってみるが、コトネには伝わらない。俺は知ってるのに。
「ヒビキくんか…ふふっ、全くもー、来ないでって言ってるのにー」
コトネの声が脳に響く。
笑わないでくれ、そんな苦しそうな顔で。苦しいのは知りたくない、でも知っちゃうだろ?
遠くからガタンゴトンと音がした。まずい、列車だ。列車がコトネのすぐ後ろを通る。
列車が通ったすぐ後に、温かいものがあたった。俺はコトネの方へと歩いた。
コトネは泣いていた。涙がポロポロと零れ落ちている。
ここは海底だから涙は消えるはずなのに…なんでだ…?
「ヒビキくん、なんでいつも来るの…? なんで、来ちゃうの…?」
「…そんなの夢を見るから、これが夢の中だから来ちゃうんだよ」
「私、もう行く」
「…話をさせてくれ、お願いだから…!」
「もう来ないで。お願い。戻ってこないでよ、ヒビキくん。何度も言ってるでしょ…」
コトネが手を叩く。いつものように灰が舞った。
灰に取り囲まれて、コトネが見えずらくなる。
いやだ、まだ行きたくない。コトネと話をしなきゃならないんだよ…! 俺は…!!
起きた場所は、さっきの叢。いつの間にか辺りは暗くなっていた。
帰らなければ。
家に帰って寝れば、また会えるんじゃないか…?
俺は暗い夜道を走った
2に続く→ >>339