二次創作小説(紙ほか)

Re: 【ポケモン】ヒビキたちの物語 *ビターメモリーズ ( No.346 )
日時: 2016/06/10 19:10
名前: ゆーい ◆p17PNBs1wA (ID: hfVure16)
プロフ: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?mode=view&no=10940

※死ネタあり、譚=物語 って読んでくれるとわかりやすいと思います。


>>339


ヒビキの譚 3



俺はバカだった


コトネの気持ちなんか何も考えてなかったんだ


コトネは誰よりも辛かった筈だ


言わなくちゃ


謝らなくちゃ



俺は急いだ。早くしないと間に合わないかもしれない。
昨日はコトネに逢うことはできなかった。


コトネは成仏できていないらしい。そうしたら夢には出てこれない。
でも、コトネが成仏できないのは俺たちのせいなんだ。俺たちのせいでコトネは自由になれない。


コトネの言葉を思い出す。


俺はそのとき、みんなからチャンピオンチャンピオンと期待の言葉を浴びさせられ、辛かった。
チャンピオンと言われるのが何よりも苦痛で…

そんなときコトネは俺に声をかけてくれた。



『それはね、ヒビキくんが凄いから言われるんだよ! もっと自分に自信を持たなきゃ!!』


『自分に自信なんて持てない』


『言われるのはね、みんなから好かれてる証拠だよ』


『…! …コ、トネ……』



すごく嬉しかった。それからはコトネの言葉で元気が出て、何を言われてもどうってことなかった。

でも…コトネが死んでからは違った。更に注目の目はこちらへと向かい、酷くなった。
コトネの言葉を思い出すが、なかなか元気にはなれなかった。
だから、その期待の目を耳を塞いでただ笑った。


コトネ、俺はお前に会いたいんだ

お願いだから





「ここは…海底……ってことはコトネに逢える…?」



きょろきょろ辺りを見回してみると、コトネがいた。だが、元気はなくずっと俯いている。



「コトネ、逢いに来たぞ」



コトネは振り向かない。振り向かずにこう言った



「…なんで来たの」


「言わなくちゃいけないことがあるから」


「一体何を言いに来たの? 謝るのはもう十分だよ…謝って欲しくないし」



コトネはわかってるようだ、俺が謝りに来たこと。
でも、今回の俺の目的は謝るだけじゃないんだ。



「……いい加減言うけど…帰ってよ! 何度も言ってるじゃん!! ここに来ないでって!!」


「……コトネ」


「もう嫌なの! いいでしょ、もう!! 謝ってほしくないんだって!! だから、帰って…!!」


「コトネ!!!!!!!」



俺はコトネにしがみついた。心から言わなくちゃならないんだ。



「一回しか言わない、ちゃんと聴けよ!! 俺はお前のことが大切だ! なんで聴かないで笑うんだ!!」


「それは……」


「わかってくれよ! 間違えたくないんだ!! でも止まってられない、考えてられないんだよ!!」

「なあ、帰ってきてくれよ」


「…帰、りたいけど…今は、無理だよ……」

「私も、君も…苦しいのは同じ……今の私は空には登れない…帰れない」



コトネの言う帰れないは、成仏できない…もしくは生まれ変われないということだろう。

すると、突然波が強くなってきた。体のバランスが保てない。



「…水の勢いが強くなってきた…! ヒビキくん、今なら現実世界に帰れる…!! 帰って…!!」


「帰るにはどうしたら…!」



コトネが手を叩く。そうすると、いつものように灰が出てきて俺を包み込んだ。



「コトネ…! 大丈夫、心配しないで。…溺れるのは私だけだから」



目を開けると、家にいた。ベッドに寝転がっている。



『溺れるのは私だけだから』



どういうことだろうか…その言葉だけが妙に心に残っていた。


それからは夢を見ることはなくなった。…見れなくなってしまった。

俺は、気持ちを伝えることができたか、コトネ…

何故か自分の物語に涙が溢れた。



解説に続く→ >>349