二次創作小説(紙ほか)

Re: 【ポケモン】ヒビキたちの物語 *ビターメモリーズ ( No.376 )
日時: 2016/06/19 11:39
名前: ゆーい ◆p17PNBs1wA (ID: hfVure16)
プロフ: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?mode=view&no=10940

※死ネタあり、雑音=ノイズ って読んでくれるとわかりやすいと思います。


>>375


コトネの雑音 3


遠くから『私』の声がする。もう帰ってきたんだ。早いなあ。


『もー、まだうじうじしてたの? 少しは気分転換に歌でも歌ったらどう?』


私は無言で首を横に振った。体中が痛い。心が痛い。こんな状態で歌えるわけがない。
そりゃあ、私だって気持ち伝えたいよ。でも、無理だよ…


「……〜〜〜♪ 〜♪ 〜〜♪」


何とか痛みを堪えて歌ってみた。
すると、なんだかよくわからない涙が零れてきた。


「…痛い……もう嫌だよ、こんなの…嫌い、嫌い…!」


『ねえ、さっきからずっと思ってたけど、痛いってまさか…』


「ちょっと、体痛くて…あはは…ごめん、私霊体だから体保つのいっぱいいっぱいみたい」


『嘘でしょ、そんなの。全部嘘だってわかってる、私』


まずい、ばれる。
私は笑ってごまかした。でも、やっぱり『私』をだますことはできなかったみたいだ。


『私…もしかして、ヒビキくんの痛みもらったでしょ』


ギクッとなる。
後ろを振り向くと、ものすごい怒ってた。つかつかと近づいてくる。


「え、えっと…」


『ふざけないでよ!! なんでそんなことしてんの!? わかってたんでしょ!?』


胸ぐらをつかまれる。『私』は少々乱暴な性格みたいだ。


『それは痛みも酷いに決まってる! 馬鹿じゃないの!? なんでヒビキくんを逃がした!!』


「だって…苦しいのは嫌でしょ…ヒビキくん、昔っから苦しい思いしてるもん…」


私は涙をぼろぼろ零しながら言う。


「だからっ…ヒビキくんの痛みをなくしてあげた。そうすれば、苦しい思いをしないで済むもん…」


『私』は、はあ…と溜息を吐くと、胸ぐらをつかんでいた手を放す。


『それじゃあさ、少しは縋ってみたら…? ヒビキくんならきっと助けてくれるよ』

『あ、その前にさ…ちゃんともう一人の自分に言っておけばどうかな』

『あの日に戻りたいなら言っておかなきゃ』

『あの日の自分を助けたいでしょ? もう一度やり直したいでしょ?』


「うん……」


『だったら行こう。私も遠くから見ててあげるから。私は私を支えなきゃいけないからね』


『私』が背中を押す。行かなきゃ。あの日の私に会いに行って伝えなきゃ。
瞬きをすると、あの日の私が笑ってる。
ちょっと、ちょっとだけだけど怖くなって、足が竦んだ。


でも行かなきゃ


そうじゃないと


私は


「ねえ、ちょといいかな」


勇気を出して声をかける。『君』が振り向いた。
驚いて、私の顔を呆然と見つめている。それは自分自身だから驚くだろう。
『君』は私の手を放そうとしてくる。

怖い

だけどここで言わなきゃだめだから

あの日からすべてが壊れてしまって

傾いてしまった

私の音は雑音となって聞こえなくなっちゃった

みんなの幸せを奪ってしまった

辛くて辛くて、死んじゃってからも毎日泣いた


「待って、君…!」


答えなんてものはもともとないから

自分でつくるものだから


「ずっと好きだよ! 自分を嫌っちゃだめだよ! 嫌ったら全部嫌になっちゃうよ!」

「〜〜♪ 〜♪ 〜〜〜♪ 〜〜♪ 〜♪ 〜〜〜♪」


あの日の夕焼けに

あの日の『君』に

今の私に

バイバイしなきゃ


「ずっと見てるから…! …うっ…」


やばい、こんな時に限って体の痛みが酷くなるなんて…
でも、戦わなきゃ。


「じゃあね…私」


意識が遠のいていく

私のびっくりしてる顔が見えた

今の私と合成されてあの日に戻るんだろうな

今度は間違えないで

これで答え合わせは三回目だから

声が聞こえる


『頑張って、私。今度こそうまくいって』


そうだね、バイバイしたんだもん

次こそ

頑張らなきゃ



解説に続く→ >>377