二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【ポケモン】ヒビキたちの物語 *ビターメモリーズ ( No.383 )
- 日時: 2016/06/28 20:38
- 名前: ゆーい ◆p17PNBs1wA (ID: hfVure16)
- プロフ: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?mode=view&no=10940
※死ネタあり、愛歌=フィーリング って読んでくれるとわかりやすいと思います。feeling(気持ち)
前回→ >>382
俺らの愛歌 2
「違う…俺のやりたいことはこんなんじゃない…!」
俺はコトネとシルバーをわかってあげたい。
コトネが戻ってきてくれるって信じたい、シルバーが元に戻るって信じたい。
あの頃の二人を待ってるんだよ、俺は。
あの楽しかった日々を待っていたいんだよ…
この前コトネに思いを伝えた。
今でももっともっと伝えたいことがたくさんある。
俺の思いを伝えたい。
だけど…俺は臆病者だからこれ以上コトネに思いを伝えることはできない。
みんなは勇気のある奴とか思ってるかもしれないけど、本当はどうしようもない奴なんだよ。
俺はどうしようもない臆病者なんだよ…
シルバーがコトネの死について悲しんでることはすごくわかってる、わかってるんだよ。
でもコトネがそんなシルバーをどう思ってるかは知らない。
俺は、そんな二人に何がしたいかわかっていない。
…こんな状況でもチャンピオンとしてやることはたくさん残ってるんだ。
なんか今度講座みたいなのをやるし、みんなの期待に答えなきゃいけないときが沢山あるんだ。
それに、シルバーの期待だって抱えている。
そういえば、最近体が軽くなった。
痛かった体が痛くなくなった。
なのに…心が痛い、心が重い。
こんな期待を道端に捨ててしまえば、置いてってしまえば俺も楽になれるのだろうか。
こんな辛い日々から解放されるのだろうか。
この重力から抜けられるのだろうか。
俺はシルバーに言ってやりたい、しっかりしろって。
そして今までの俺を見返してやるんだ。
なんて…本当に幼稚だよ、馬鹿だよ。
こんな風に笑ってすべて洗い流せてしまえたらこんな辛いことはないんだろうな。
こうなってしまったからには直しようがないんだ、もう戻れないんだ。
俺らは気づかないうちにどうしようもない所へ来てしまっているんだ。
どうにもできないところに。
「コトネ、シルバー……どうしようもないよな、俺らって」
こんな言葉、聞こえていないなんてこともわかってる、わかりきってる。
全部、全部…
「全部わかってんだよ! 俺は、もう…お前らのこと、わかってるんだよ……」
あの夢、コトネと再び逢った夢…あの感じをもう一度味わいたい。
あの感じで、またコトネに伝えることができたなら…
『…とか言いながらさ、あの夢だって妥協しちゃうんでしょ?』
突然の声に焦って後ろを振り返る。
…そこにいたのは、俺だった。
「…あ…ああ……なん、でっ……」
『痛み分けってやつ? 自分はあの夢に納得してないけど、しょうがないから納得しちゃうみたいな?』
「ち、違う…」
『面白くてくだらない嘘を言うね。俺全部わかってるんだよねえ、お前のこと。だって俺自身なんだもん』
だめだ、このままじゃおかしくなる。
俺をわからないでくれ、お願いだから。
ここで俺がわかっちゃったら、何もかもおしまいじゃんか。
『でも残念だなあ、お前もさ。…おっと、俺はここでさらばかな? 体が持たねえもん。じゃっ』
俺は消えていった。
「……死んじゃえばいいのに、あのときの俺も、こんな俺も」
チャンピオンやジムリーダー相手に愛想笑いで過ごした俺なんて消えてしまえばいいのに。
ふと、戸棚からカッターナイフとロープを出す。
「馬鹿なんだよ…俺も、コトネも、シルバーも」
もうこんな日々は散々だ。
死んでしまおう。
もう生きられない。
ピンポーン
インターホンの音で目が覚める。
「俺は一体何をやって…」
カッターナイフとロープを机の上に置いた。
玄関のドアを開けると、シルバーが立っていた。
「おお、シルバー…暇だったのか?」
「まあ、暇だった」
今日は一段と元気がないと思った。
「とりあえず中は入れよ。二階来てくれればいいから」
俺はシルバーを中へと入れて、二階へと連れて行った。
「ゆっくりしてけよ、疲れてるだろ?」
俺がシルバーのほうを向くと、シルバーは冷たい視線をこちらに向けた。
あれ? 俺なんか変なこと言ったかな?
わけがわからず、変な笑顔で顔が固まる。
シルバーの目に酷く恐怖を覚える。
シルバーのこの目…昔俺と出会ったときの目だ。
俺は見ていられなくて視線を逸らした。
「す、座っていいぜ。座布団敷いてあるから…って、うあっ…!」
シルバーが俺を蹴ってくる。
腹が痛い。
シルバーは倒れた俺の上に乗っかるとロープを持った。
冷たい光が部屋に射し込む。
だけど、その光はとても暗かった。
まるで光があたっているようであたっていないような感じだ。
「なあ、こんなバカみたいなことは終わりにしようぜ?」
シルバーが狂気の目をして俺に笑いかけた。
3に続く→ >>384