二次創作小説(紙ほか)

Re: 【ポケモン】ヒビキたちの物語 *ビターメモリーズ ( No.384 )
日時: 2016/06/30 07:09
名前: ゆーい ◆p17PNBs1wA (ID: hfVure16)
プロフ: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?mode=view&no=10940

※死ネタあり、愛歌=フィーリング って読んでくれるとわかりやすいと思います。feeling(気持ち)


前回→ >>383


俺らの愛歌 3



……頭の中で、過去の記憶が蘇ってくる。
思い出…たくさん思い出してみたって今の俺らはダメだ。
だって俺らはそれをすぐに排除してしまうから、いらないものとして…使わないものとして…

下からヒビキの苦しそうな声が聞こえる。

…思えばさ、始まりはお前だったと思うよ、俺。
あんな眩しすぎたあの頃の思い出も、あの頃の太陽も…全部、全部……


「お前のせいだよ、ヒビキ」






そう言った瞬間に目の前の景色がガラッと変わった。
周りを見渡しても、一面劇場みたいな場所だ…椅子がたくさんあって、舞台があって…照明もある。
俺は舞台の下に立っていて、舞台の上にはコトネが立っている。

笑ってない、だけど怒ってもない…どこか悲しそうで、辛そうだった。


「コトネ……なんで、いんだよ……」


「悪いのは私だよ、シルバー…私が全部悪かったの」

「私は嘘をついた…悪いのは、本当はヒビキくんやシルバーなんじゃないかって…でも、違った」

「私は…この罪悪感から逃げたかったんだよ、逃げたかったから嘘をついたんだよ…」


苦しそうに胸を押さえながら話している。
心臓がドキドキして、目の前にコトネがいるのが辛くて、嬉しくて、どうしようもなくて…笑った。

俺はヒビキやコトネを信じたい。
だけど、信じたい自分を否定するかのように他の自分が止めてくるんだ。
そんな俺の心を読み取ったかのようにコトネは話を続ける。


「ここは劇場だよ、みんなが主役なんだよ…信じようよ、私たちを」

「安心したいんでしょ? 誰かを信じて…それが私たちの関係でしょ? 愛の形でしょ?」


俺の目から自然と涙が零れ落ちてきた。
それを見られたくなくて、コトネから視線を逸らすために下を向く。
よくよく思えば……惨めだ。


「俺…惨め、だよなあ……ずっと…今も、昔も……逃げてばっかだ……」

「コトネ……俺は、コトネに帰ってきてほしい。また、みんなで遊ぼう……」

「消えないんだ、心が…気持ちが……見たくないのに、……ごめん」


「……じゃあ、その心を信じてみてよ」

「ヒビキくん、わかってくれるよ…うん、ヒビキくん優しいもん……」

「私は、シルバーのことずっと信じてるから…」


ああ、コトネは……ずっと俺のことを思っててくれていたんだ。


それを無視していたのは、俺だ


また景色が変わる。
下にはヒビキが寝転がったままで、俺はヒビキの上に座っていた。

違う…ヒビキが悪いとか、コトネが悪いとかじゃなくて……認めなければ。


「…嘘だっ…全部…全部俺が悪いんだ…! ごめん、ヒビキ…俺ずっと八つ当たりしてた…ごめん…」

「本当は、こんなこと考えたくないんだ…! そんなのは考えていたくなんかないんだ…!!」


計算して、出すだけの答えなんて……また俺は自分の傷を人のせいにするのか…? …違うだろ?

ヒビキが驚いて口をポカーンと開けている。


「馬鹿だったんだよ、俺らは……」


忘れたいと思ってた、さよならしたくないって思ってた……でも、今なら思えるんだ…


「なあ、ヒビキ…今ならいいよな…? 忘れなくても…さよならしても……」


「………? シルバー…お前、なに言って……」 


俺は近くにあったカッターナイフを手に取った。
今から俺のすることを察したのか、ヒビキの手が伸びる。
そして、俺の持っていたカッターナイフが宙を舞った。


「シルバー! さよなら? そんなのやめろよ!! まだ、まだ……まだ……生きてくれよ!」

「お前まで、逝かないで……」



ヒビキの涙が俺の手にポツポツと降ってくる。
ああ……俺は………



続く


解説に続く→ >>385