二次創作小説(紙ほか)

Re: 【ポケモン】ヒビキたちの物語 *ビターメモリーズ ( No.397 )
日時: 2016/07/16 06:37
名前: ゆーい ◆p17PNBs1wA (ID: hfVure16)
プロフ: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?mode=view&no=10940

※死ネタあり、アイラという曲をもとにして書いています。この話でラストとなります。


前回→ >>396


Aira 1


空を眺める。空の青色に、白い雲…何気ない風景なのに怖い。
自分の手のひらを見つめる。どこも怪我していない。

顔を上げて前を見ると、二つの背中があった。


「……ヒビキくん…シルバー……」


ヒビキくんとシルバーの背中だった。いつの間に大きくなっている。

置いてかれているのは私だけなのだ。明日へ向かってみんな進んでいく。
明日のない私はどこへ進めばいいのかわからない。死んでしまっているから。

目の前が揺らぐ。君の背中も揺れる。


辛くて、悲しくて、寂しくて、涙が溢れ落ちる。
私が泣いちゃダメだってわかっているのに泣いてしまう。

ヒビキくんもシルバーも、もっとたくさん泣きたい筈なのに我慢してるんだ。
私よりも苦しいのに、ずっと…


目の前の二人が黒い服を着て泣いている。この風景は、きっと葬式の時の風景なんだ。
ヒビキくんもシルバーも涙を隠しているのがわかる。

私も、そっと涙を隠して笑顔を作った。
私たちは涙を心の奥にしまっておかなきゃダメなんだよ。表に出しちゃいけない。
ただ隠しておくだけ……



死んでから最初の頃はこう思っていた。

私は全く悪くない。悪いのはヒビキくんとシルバーの方だもん。

でも、今になればそんなこと思えるわけがない。私が一番悪いのだから。
沢山意地を張って、みんなを傷つけた。その辛さを堪えていたものは全部零れてしまう。


「反省しても、戻れやしないよ……」


ヒビキくんとシルバーを眺める。


ヒビキくん…シルバー……


君を笑う、私を汚す……そんな言葉はもう聞き飽きたよ。私の心は君の背中と同じように揺れていく。
君は光で、私は影。もう二度と照らされることはない。君は私の隣にもういない。

私は死んでからも変わっていない。みんなは変わっていっているのにね。


「〜〜♪ 〜♪ 〜〜〜♪」


私は歌う。君に捧げるために。この歌は絶対に届かないけど、届けようと頑張らなきゃ。
この歌はあの日歌った歌でもある。暮れた夕焼けに私たちは立ち止った。
あの赤色が今でも離れない。


みんなは私から離れていく。

どんどん遠くに行ってしまう。


待って


待ってよ


置いていかないでよ


二人の背中が光る。光じゃない私は二人みたいにはなれない。


「お願い、笑って……」


私には二人の背中を見つめて願うことしかできなかった。



2に続く→ >>398