二次創作小説(紙ほか)

Re: イナGO 銀色の悪魔【オリキャラ募集中!!】 ( No.150 )
日時: 2015/09/20 13:03
名前: マイタケ (ID: lcGOSbxj)  

52話


————————暗い


誰も助けてくれない。もがいてももがいても脱け出せない。
なぜ、どうして?私が何をしたの?
私はただ、光を見たいだけなのに。


————————ならば、妾が光を見せてやろう


そう言った女の人の手を、私は掴んだ。





そこで月影柚樹は目を覚ました。ツンとした初めての香りが鼻を刺激する。
「んー………?」
柚樹は眉を寄せながら起き上がり、周囲を見渡した。
真っ白のカーテンに真っ白の天井、真っ白の布団。
「…………っ」
横腹に走る激痛に、思わずうずくまる。冷や汗を拭うこともせず、ただただ困惑していた。
ここはどこだ。剣城は無事なのか。それだけが頭の中を支配する。
「目が覚めた?」
カーテンが開く。そこには見覚えのある人物がいた。
青空のような浅葱色の髪。森よりも深い深緑の瞳。
「星宮薫……」
「あ、覚えてたんだ」
ニコッと笑う薫から邪気は感じられない。だからこそ信じられなかった。
薫は魔術師。理由はそれだけだ。
「そんなに睨まないでよ。こっちは助けたんだからさ」
まぁその様子だと余計なお世話みたいだけど。
そう言うとクスリと笑った。
「一応手当ては剣城がしたから」
その一言に柚樹の雰囲気が柔らかくなった。
「京介は……大丈夫?」
「うん。今は天馬達といるよー」
柚樹と同じ背丈の魔術師は内心苦笑いした。
剣城、あんたこんな可愛い子に愛されて幸せ者だねぇ。
まるで田舎のおばあちゃんのようである。
「さて、と。ボクは剣城を呼んでくるから〜」
ヘラヘラとしながら踵を返した。扉に手をかける前にポツリと呟く。
「剣城がキミを凄く心配してたよ」
「っ………」
柚樹は小さく肩を震わせた。薫は気配で察したが、敢えて気づかないふりをした。
自覚がないとはいえ、誇り高い悪魔だ。敵と認識されていり薫が彼女を心配するのはその矜持を傷つけることに等しい。
「ったく、なんで面倒なものが次から次へと………」
保健室から大分離れた所で薫は溜め息をついた。
『貧乏性も、そこまでくると見事だな』
英語での皮肉な発言。薫はフンと鼻を鳴らした。
『キミに言われたくないよ、レイス』
深緑の瞳が紅蓮の瞳を見つめる。
『例の2人はどうなった?』
『さぁ?私の勝手だろう』
それもそうか、そう呟くと、もう追求しなかった。
裏切り者がどうなろうと、知ったことではないから。
『じゃあボクは行くよ』
薫は背を向けて歩き出した。